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ジュビロ磐田は第39節、アウエーで徳島ヴォルティスに3−0で勝利。得失点差で東京ヴェルディを上回り、3位に浮上した。前節、清水エスパルスとの静岡ダービーで敗れ、そこから2週間空いての試合という難しい状況だったが、山田大記が「僕らはここから全て勝って、プレッシャーをかけ続けるしかない」と語っていたように、チーム一丸で1試合、1試合を戦っていく姿勢が導いた勝利と言えるだろう。
結果的に3−0と快勝を飾った試合だが、徳島のシュート数が19本、ボール保持率が69%というスタッツが示す通り、磐田にとって内容的には決して楽な展開ではなかった。横内昭展監督はハーフタイムに山田大記から藤川虎太朗に交代、後半25分には鹿沼直生から藤原健介に代えて、中盤をフレッシュにすることで、相手にボールを持たれる中でも主導権を奪われないように試合を運んだ。
終盤に差し掛かり、右サイドバックの鈴木雄斗がクロスを上げた時に足をつり、そこからのプレー続行が難しくなった。横内監督は後半31分に、中盤でハードワークしていた上原力也と同時に鈴木を下げて、左サイドアタッカーの古川陽介と一緒に小川大貴を投入。左サイドハーフだったドゥドゥがボランチにポジションを移し、右サイドバックには小川が入った。
後藤に出番訪れず…
これで交代は4枚。残るは1枚となった。実はこの試合、コンディション不良から回復した”ラッソ”ことファビアン・ゴンザレスがベンチに復帰していた。18歳のFW後藤啓介も9試合続けて途中出場していたため、勝負どころで二人の大型FWが前線に並び立つことを筆者も期待しながら観ていた。アップ中は二人で競り合いの確認をするなど、出番に向けて熱が入っていた。5枚目の交代カードとして選ばれたのはラッソだった。ベンチから呼ばれたラッソが通訳を交えて、コーチから指示を受けるところで、後藤はラッソと握手をかわして、その後は仁王立ちになってピッチの戦況を見つめた。ラッソも10試合ぶりの公式戦にややぎこちなさはあったものの、試合終了間際に自慢の突進力で相手ゴールを脅かすなど、見せ場を作って勝利に貢献した。
横内監督は「啓介が出られなかった悔しさは多分あると思います。逆に無いとおかしい」と前置きしながら「ただ、自分じゃなくて違う選手が出たとしても、チームの勝利に対して彼は貪欲というか。チームが勝てばいいというところは常日頃から言っていると思いますし、そういう態度でいてくれるというのはうれしいですね」と語った。
松原后「あいつはチームが勝ってうれしい気持ちを表現できる」
試合後のミックスゾーンで、多くの選手たちが出てくるよりも早く後藤は磐田のチームバスに向かっていく姿が見られた。上原に代わり終盤キャプテンマークを巻いた松原后は「あいつはそういう気持ち、メンタルを持ってる男なので。チームが勝って嬉しいという気持ちも表現できる選手だし、悔しいと思いますけど」と語る。「試合が終わった後に話しても、出られなかったのは悔しいって俺に言ってきたので。また練習からアピールして。あいつはこのリーグで結果で示せることはやってきてるので。あいつの力は必要だと思うし、ゴールを期待したいっすね」
「俺、大一番は大好きなんで」
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この日、腰の負傷から復帰して、19試合ぶりの公式戦復帰となった藤原健介は19歳で、同じくアカデミーから昇格した後藤より2学年、先輩にあたる。静岡学園の出身である20歳の古川陽介と藤原、後藤が揃ってベンチ入りしたというのはファンサポーターにとっても嬉しい出来事だが、やはり3人が一緒にピッチに立つ姿が期待される。
藤原は「3人が出たらサッカーも変わると思うので。相手も嫌だと思うし、最初からこの3人が使われるようになったらいいなと思います」と語る。今、磐田はJ1昇格に向けてチーム一丸になっているが、その先を考えれば若い選手たちがチームを引っ張っていくぐらいの勢いが必要になってくる。
その中でも将来を嘱望される後藤にとって、この徳島戦はチームが勝った嬉しさと、自分が出られなかった悔しさが入り混じった複雑な試合になったはず。次は4位の東京ヴェルディとの大一番となる。ここまで来たら3試合、全てが決勝のようなもので、「俺、そういう大一番は大好きなんで」と語る18歳の奮起に大きな期待をかけずにはいられない。
<河治良幸>
タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。 サッカー専門新聞「エル・ゴラッソ」の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。著書は「ジャイアントキリングはキセキじゃない」(東邦出版)「勝負のスイッチ」(白夜書房)「解説者のコトバを聴けば サッカーの観かたが解る」(内外出版社)など。