ウクライナから静岡に 避難民の声と支援の輪
ロシアの侵攻を受けるウクライナから静岡県内に避難してきたウクライナ人がいます。祖国の戦禍を知ってほしいと訴え、支援を求める人々の声を紹介します。県内への避難を受け、衣食住などの支援に乗り出す行政や民間の動きもまとめました。
〈静岡新聞社編集局未来戦略チーム・寺田将人〉
「ロシアを決して許さない」 浜松避難の18歳ウクライナ女性
ロシアの侵攻に苦しむウクライナから、浜松市に避難している大学2年生シャルコ・ソフィアさん(18)が5日、市役所で取材に応じ「侵攻は日に日に激化し、残酷な状況になっている。ロシアを決して許さない」と憤りをあらわにした。浜松市民や静岡県民に向け「現状に目を背けず、ウクライナを支援してほしい」と協力を呼び掛けた。鈴木康友市長とも面会し、安定した生活や就労の支援を求めた。
侵攻後、リビウで大きな爆発音を聞き、多くの市民や兵士が死亡する惨状を目の当たりにした。ポーランドとの国境付近では「愛する人との別れの光景や、涙をこぼして親から離れる子供たちを目にした」と振り返り、リビウに両親と弟、妹を残してきた自身の姿を重ね合わせた。
現在は家族と毎日連絡を取り、可能であれば、呼び寄せることも希望する。日本語の勉強を始め、今後は市主催の日本語教室などに参加する予定という。
シャルコさんから支援の要請を受けた鈴木市長は「まずは心身を休めてほしい。全力でサポートするので安心を」と答えた。
〈2022.04.06 あなたの静岡新聞〉
空襲警報1日14回 静岡市へ避難の家族、母国の状況語る
ロシアの侵攻を受けるウクライナから少年3人を避難させるため、日本人の夫を通して静岡市に呼び寄せた県内在住のオレーナさん(38)=ウクライナ出身=が18日、母国の状況や今後の生活に関する報道機関の質問に書面で回答した。自身も一時帰国中に戦渦に巻き込まれ、家族である少年3人を連れて3月下旬に日本に戻った経緯を明らかにし「一日も早く戦争が終わり、元の生活に戻ってほしい」と願った。
オレーナさんの両親と5人の兄弟は現在もウクライナにいて、毎日連絡を取って無事を確認しているという。
静岡市の印象は「安全で人は親切」と語り、子どもたちは海外生活が初めてで「お箸を使う練習をしている」という。市による生活支援に感謝を伝え、これから避難してくるウクライナ人への支援も求めた。
オレーナさんは少年3人と日本人の夫とともに18日、市役所静岡庁舎を訪れて、田辺信宏市長と面会した。市営住宅で家族5人での生活を始め、清水港などへドライブしたことを紹介し「これから富士山や動物園にも行きたい」と話した。
〈2022.04.19 あなたの静岡新聞〉
県内避難者に食品を無償提供 赤い羽根共同募金
赤い羽根共同募金(県共同募金会)は18日、静岡市役所静岡庁舎でウクライナ避難民に向けた県緊急食支援の第1回贈呈式を開いた。同会はNPO法人フードバンクふじのくに(同市葵区)に食品購入費など300万円を助成し、県内に避難したウクライナ人に食品を無償提供していく。
〈2022.04.19 あなたの静岡新聞〉
自分たちにも何かできることがあるはず 静岡市の自治会が募金活動
ロシアの侵攻を受け静岡市内で避難しているウクライナ人家族を支援するため、同市葵区の建穂自治会は20~26日の午後6時から7時半まで、同区の建穂公民館で募金活動を行う。集めた浄財は27日、佐々木隆志自治会長(65)が直接ウクライナ人家族に手渡す。
支援の対象は、ウクライナ出身で県内在住のオレーナさん(38)が同国から呼び寄せた8~12歳の子ども3人で、3月26日に来日した。佐々木会長は3月末まで県立大短期大学部の学部長を務め、学生と共に同国支援の募金活動をしていたが、今春で退官した。
佐々木会長はウクライナ避難民支援の関係者から紹介され、オレーナさん家族との交流を開始。オレーナさんが子どもの教育や食料に困っていることを知り、支援を申し出た。
佐々木会長の活動を知った建穂自治会の有志が「自分たちにも何かできることはないか」と考え、募金活動を企画した。期間中は同公民館に2、3人常駐し、浄財を受け付ける。同公民館で絵画教室を開く木村奈央さんが募金活動をPRするポスターを制作した。地域の小中学校やコンビニでもチラシを貼って募金を呼び掛ける。
佐々木会長は「少しでも役に立ちたい。地域のウクライナ支援に地域の子どもたちが関心を持つきっかけになれば」と話した。
〈2022.04.19 あなたの静岡新聞〉