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淡島ホテル再起へ 新会社設立

 11月末から臨時休館していた沼津市の淡島ホテル。営業再開を目指し、ホテルの元従業員と債権者団体が新会社を設立しました。淡島ホテルは、2019年12月に破産手続きの開始が決定。破産手続きを巡り、親会社の社長らが詐欺の疑いで逮捕される事態になりました。新会社設立をきっかけに、リゾートホテルのかつてのにぎわいを取り戻すことはできるのでしょうか。これまでの経緯をまとめました。
 〈静岡新聞社編集局TEAM NEXT・石岡美来〉

淡島ホテル再開「1月半ば」 元従業員が新会社

 沼津市の淡島ホテルの旧運営会社「淡島ホテル(現AWH)」の破産手続きを巡り、同ホテルの元従業員と債権者団体が2日、新会社「フェニックス」を設立し、ホテルの売却先が見つかるまでの暫定的な運営を担う意向を示した。ホテルは先月24日から臨時休業中で、破産管財人から委託を受けて早ければ来年1月半ばの営業再開を目指す。

新会社設立を正式発表した杉森大樹社長(中央)=2日午後、沼津市の淡島ホテル
新会社設立を正式発表した杉森大樹社長(中央)=2日午後、沼津市の淡島ホテル
 同ホテルを巡っては、静岡地裁沼津支部が2019年12月、AWHの破産手続き開始を決定し、破産管財人が財産調査を進めている。同地裁支部は今年10月にAWHから実質的に運営していた関連会社への事業譲渡を認めない決定を出し、破産管財人がホテルの建物などの引き渡しの手続きを進めている。
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破産手続き開始決定を受けた株式会社淡島ホテルを巡る経過

 新会社は財産処分が完了するまで、ホテル管理業務を受託することを目指す。売却先の下でもホテル運営を継続して担いたい考え。営業再開に向け、自主退職した元従業員約80人から希望者を再雇用していく。運転資金の確保については、既に複数社がスポンサーに名乗りを上げているという。
 新会社の社長に就任した杉森大樹元総支配人(38)と「淡島ホテルグループの責任を追及する債権者の会」が2日、同ホテルで記者会見した。AWH側に対し、未払いになっている元従業員の賃金などの支払いを求める集団訴訟を起こすことも検討していると明らかにした。杉森社長は「ホテルを愛するお客様やスタッフの笑顔を取り戻す」と決意を語った。
〈2021.12.3 あなたの静岡新聞〉

破産手続き開始決定は2019年 負債額は400億円

 沼津市の高級リゾートホテル「淡島ホテル」を運営していた株式会社淡島ホテルが静岡地裁沼津支部から破産手続きの開始決定を受けた問題で、負債額は400億円、債権者は2千人に上る見込みと、21日(※2019年12月)記者会見した関係者が明らかにした。破産規模は県内の過去20年間(※2019年当時)で最大規模とされる。ただ、「現段階で概要は把握できていない」(県弁護士会消費者問題委員会の山本洋祐委員長)とし、破産管財人などは情報収集を進める。

  負債額と債権者は山本委員長が破産管財人の文書を読み上げる形で公表。併せて破産手続き開始決定を正式発表した。
  同委員会によると、株式会社淡島ホテルは1983年設立で資本金は1千万円。グループ企業が運営する「ホテル長泉ガーデン」(長泉町)の会員権を販売するなどしていたとみられ、その後、会員である債権者から募った出資金や社債などの弁済ができなくなったという。同ガーデンに居住するなどしていた約10人の債権者が7月、地裁沼津支部に破産を申し立て、今月20日に決定となった。
  旧運営会社は破産手続き開始決定前の2018年4月、株式を第三者の名古屋市の家賃保証会社に譲渡。現在は同社の関連企業が運営している。今後について、同社の担当者は「今回の破産手続き開始決定は株式会社淡島ホテルに対するもので、実際に業務を運営しているわが社とは関係がない。営業は変わりなく続ける」と営業継続の方針を説明した。
  山本委員長によると、債権者の多くは東京や神奈川など首都圏の居住者とみられるという。「大規模な被害になる可能性がある。今後の進め方を実りあるものにするために情報を寄せてほしい」と述べた。
〈2019.12.22 静岡新聞朝刊〉

淡島ホテル巡り詐欺破産 警察がホテルの経営陣ら5人を逮捕

 沼津市の淡島ホテルの旧運営会社「淡島ホテル(現AWH)」の破産手続きに関し、同社の財産を債権者の不利益になるように処分したとして沼津署と静岡県警捜査2課は22日(※2021年9月)、破産法違反(詐欺破産)の疑いで、AWHを傘下に持つ保証事業会社「オーロラ」(名古屋市)の社長(52)=東京都港区六本木6丁目=ら5人を逮捕した。同署などは社長らが財産の没収を免れ、引き続きホテルを経営するために財産を不正に処分したとみて調べを進める。

「ウィンダムグランド淡島」として営業する旧「淡島ホテル」。当時の経営者らが破産法違反容疑で沼津署などに逮捕された=22日午前、沼津市内
「ウィンダムグランド淡島」として営業する旧「淡島ホテル」。当時の経営者らが破産法違反容疑で沼津署などに逮捕された=22日午前、沼津市内
 オーロラ社長のほかに逮捕されたのは、オーロラ取締役(48)=東京都中央区日本橋中洲=、AWH社長(61)=函南町平井=、AWH取締役(76)=神奈川県座間市相模が丘3丁目=、オーロラ傘下の淡島マリンパーク社長(48)=同県横須賀市鴨居2丁目=の4容疑者。
 5人の逮捕容疑は共謀して2019年10月上旬ごろ、AWHの破産手続きに関し、同社が地権者から借り受けていた借地権について日付をさかのぼって解約するとともに、無償でグループ会社の淡島マリンパークに移転させ、AWHの財産を債権者らの不利益になるよう処分した疑い。
 AWHは19年12月20日、静岡地裁沼津支部が破産手続き開始を決定した。5人は債権者による同年7月3日の破産手続き申し立てよりも前に借地権が移転されたように装ったという。
 借地権の資産価値は約1億3千万円。借地権を建物の所有者から切り離すことで建物の買い手を付きにくくしオーロラ側が継続してホテルを運営できるようにする狙いがあったとみられる。結果として財産は目減りし、債権者に分配するはずの現金が減ったという。
 淡島ホテルを巡っては、オーロラ社長が社長を兼ねるホテル経営会社「グッドリゾート」(東京都)が20年2月に米国のホテルチェーン大手とフランチャイズ(FC)契約を交わし、現在はホテルの名称を変更した上でオーロラ側が委託した関連会社が営業している。

 <メモ>淡島ホテル 1991(平成3)年、旧東京相和銀行(現東京スター銀行)の故長田庄一元会長が、会員制高級リゾートホテルとして開業した。フランスのシラク元大統領が訪問したことでも知られる。人気アニメ「ラブライブ!サンシャイン!!」の登場人物の実家が経営するホテルのモデルとされる。現在のホテル名は「ウィンダムグランド淡島」。
〈2021.9.23 あなたの静岡新聞〉

償還金支払われず 淡島マリンパークの渡し船 2隻差し押さえ

 水族館などを経営する株式会社淡島マリンパーク(沼津市)名義の債券の償還金が支払われないとして、同市の男性会社役員(78)が同社に社債償還などを求めた訴訟を巡り、静岡地裁沼津支部は5日(※2021年10月)、淡島への渡し船として利用されている小型船舶4隻のうち、2隻を差し押さえた。

小型船舶を差し押さえる執行官(右から2人目)ら=5日午後、沼津市内
小型船舶を差し押さえる執行官(右から2人目)ら=5日午後、沼津市内
 判決文などによると、原告の男性は2017年に同社名義の債券100万円を2口購入したが、19年6月の満期を迎えても償還金が支払われなかった。
 男性は、小型船舶の仮差し押さえを申し立て、同地裁支部は同年12月、債権執行を保全するための仮差し押さえを決定した。20年1月に男性が社債償還請求を提起し、同地裁支部は21年6月、200万円を同社の不当利得と認めていた。同社は判決を不服として東京高裁に控訴している。
 沼津市内で5日、同地裁支部の執行官2人が全長10メートルほどの船舶に乗り込み、2隻の船内に公示書を貼付。現場保管とし、鍵と船舶検査証を回収した。残る2隻のうち、1隻は従業員らの移動手段を確保するために差し押さえしなかった。もう1隻は別の港に係留されているとみられ、同地裁支部はこの2隻の対応も検討している。
 原告の男性は「決着は付いていないが、気持ちの面で一段落できた」と話した。同社は「全ての船が動かせない状況にならない限り、営業は継続していきたい」としている。
 淡島マリンパークを巡っては、淡島ホテル(同市)の旧運営会社の破産手続きに関し、財産を債権者の不利益になるように処分したとして、淡島マリンパークの社長、親会社の社長ら5人が、破産法違反(詐欺破産)容疑で沼津署と県警捜査2課に逮捕された。
〈2021.10.6 あなたの静岡新聞〉
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