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【競歩】静岡県勢3選手パリ五輪代表へ白熱 18日に日本選手権

 パリ五輪出場へ静岡県勢3人がしのぎを削る競歩男子20キロは、18日に行われる日本選手権で派遣設定記録(男子=1時間19分30秒)を突破し優勝した選手が最速で代表に決まります。御殿場南高出身の川野将虎選手、浜松日体高出身の池田向希選手、静岡西豊田小出身の山西利和選手がエントリーしています。3選手のこれまでのレースを振り返ります。

【川野選手】派遣設定記録を突破

 陸上の全日本35キロ競歩高畠大会が22日、山形県高畠町で行われ、男子20キロは8月の世界選手権35キロ銅メダルの川野将虎(旭化成、御殿場南高出)が1時間18分52秒の大会新記録で優勝した。

男子20キロ競歩 優勝した川野将虎=山形県高畠町
男子20キロ競歩 優勝した川野将虎=山形県高畠町
 1時間19分26秒で2位に入った高橋和生(ADワークスグループ)とともに日本陸連が定める来夏のパリ五輪の派遣設定記録(1時間19分30秒)を突破し、来年2月に行われる代表選考会(神戸市)に弾みをつけた。
 女子20キロで世界選手権35キロ7位の園田世玲奈(NTN)は体調不良で欠場した。

代表へ弾み「最低限まとめられた」
 世界選手権の35キロ競歩で2大会連続のメダルを獲得した男子の川野にとって、種目変更を決めて迎えた20キロの初レース。35キロを実施しないパリ五輪へ大きな一歩を踏み出した。「35から20に変えるのは並大抵のことではない。まだ発展途上ではあるが、最低限まとめられた」と息をついた。
 号砲から勢いよく飛び出し、先頭で終盤まで安定したペースを保ち続けた。欧州選手のように「大きくてしなやかな」フォーム改善に取り組む最中だが、指導する酒井瑞穂コーチが「途中の段階でも18分台が出たのは、これからが楽しみ」と期待を寄せる快勝だった。
 世界選手権では厚底シューズを履く海外勢の活躍が目立った。練習では試したが、パリ五輪までの時間と自分に合う歩型を考慮して従来の靴を選択。3位以内で五輪代表に大きく近づく代表選考会へ「今大会も選考会もあくまで通過点。海外の選手に立ち向かうために、まずは日本の選手に勝たないといけない」と覚悟を示した。
〈2023.10.23 あなたの静岡新聞〉

【池田選手】東京五輪「銀」

  メダルの色を最高の輝きに変える準備は整った。陸上男子20キロ競歩の池田向希(旭化成、浜松日体高出)が19日開幕の世界選手権(ブダペスト)で満を持して「金」を狙う。2021年東京五輪、22年世界競歩チーム選手権、世界選手権とも銀。「もう一つ上に行くための歩型は完成しつつある」。頂点に立てば、来夏のパリ五輪切符はほぼ手中だ。

日本選手権20キロ競歩で圧倒的なレース運びを見せた池田向希=神戸市
日本選手権20キロ競歩で圧倒的なレース運びを見せた池田向希=神戸市
 168センチの小柄な体を生かした高速ピッチを、いかに違反を取られず維持するか-。進化の一端が表れたのは雨と強風が吹き荒れた2月の日本選手権だ。
注意ゼロの完成度
 1キロの周回コース。向かい風の前半500メートルでペースを上げて後続を振り落とし、最後は日本代表の高橋英輝(富士通)を突き放した。その上で注意ゼロのノージャッジ。優勝6度の第一人者、高橋をもってして「注意4度の自分が一緒に歩くと審判に比べられる」と引き下がらざるを得ない完成度だった。
 池田が世界で戦うようになって6年。目の前には常に大きな壁が立ちはだかってきた。世界選手権2連覇の山西利和(愛知製鋼、静岡西豊田小出)。東京五輪では競り勝ったが、昨年はチーム選手権、世界選手権とも後塵(こうじん)を拝した。特に世界選手権は自身の仕掛けに対応され「ラスト3キロからの余力の差が金と銀を分けた」と痛感した。
王者と直接対決へ
 王者の強さは瞬時に勝ち方を見極める勝負勘。「気付いた時には主導権を握られてきた」。だが、今はその勝ちパターンを崩す自信がある。「日本選手権で消耗戦に持ち込んだように歩型が安定しレース運びに幅ができた。スピードの上げ下げ、駆け引きに選択肢が生まれる」。久々の直接対決を待ち望む。
 来年1月以降にクリアする必要があるパリ五輪の参加標準記録は1時間20分10秒。自己記録が1時間17分台の池田にとってハードルは高くない。実質的に今大会で日本陸連が定める「日本人最上位でメダル」を満たせば、五輪に“当確”ランプがともるが、見据えるのはあくまで世界一。「階段を一つ一つ登って『金』を目標にできるところまできた。ベストのレースができればパリは付いてくる」

 いけだ・こうき 1998年5月3日、浜松市東区出身。浜松日体高2年で長距離から競歩に転向し、3年夏の全国総体は5位入賞。東洋大2年で世界競歩チーム選手権の20キロを制した。2021年の東京五輪で銀メダル。22年世界選手権も準優勝した。旭化成。25歳。

〈2023.08.17 あなたの静岡新聞〉

【山西選手】2022年世界陸上で連覇

※2022年07月17日静岡新聞朝刊より

世界陸上の男子20キロ競歩で2連覇を果たした山西利和(右)と2位の池田向希=15日、米オレゴン州ユージン(代表撮影・共同)
世界陸上の男子20キロ競歩で2連覇を果たした山西利和(右)と2位の池田向希=15日、米オレゴン州ユージン(代表撮影・共同)
 【ユージン(米オレゴン州)共同】陸上男子20キロ競歩の山西利和(26)=愛知製鋼、静岡西豊田小出=が15日、米オレゴン州ユージンで行われた世界選手権で、1時間19分7秒で2連覇を果たした。昨夏の東京五輪銀メダルの池田向希(24)=旭化成、浜松日体高出=が2位に入った。今大会の日本勢初メダル。
 日本選手として世界選手権2大会連続優勝は男女を通じて初の快挙。2大会連続メダルは、個人種目では2001年に銀、03年に銅を獲得した男子ハンマー投げの室伏広治(沼津市出身)以来となった。
 京都大出身の山西は、東京五輪では3位だった。競歩の日本勢として通算3個目の「金」で4大会連続の表彰台。
薄氷の勝利だった
 山西利和の話 非常に暑く、ライバルもタフでなかなか離れてくれず、どうしようかなというレースだった。薄氷の勝利だったが、何とか勝てて良かった。
集中切らさなかった
 池田向希の話 集中を最後まで切らさずに保てたことが銀メダルにつながった。うれしい半面、山西選手に負けて悔しい。来年、再来年と国際大会は続くので、そこでもメダル争いをしたい。
地域再生大賞