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難病患う漫画家の寺田浩晃さん 念願のコミック出版

 指定難病「好酸球性胃腸炎」を患う磐田市の漫画家寺田浩晃さんが念願だった初のコミック出版を実現しました。作品はYouTubeで反響を呼び、昨年6月には実写化した民放ドラマも放送されました。出版に至った経緯やこれまでの活動などをまとめました。
 〈静岡新聞社編集局未来戦略チーム・寺田将人〉

書き下ろしなど3作品を収録 「苦しむ人のよりどころに」

 指定難病「好酸球性胃腸炎」を患う漫画家寺田浩晃さん(27)=磐田市福田=が、念願だった初のコミック出版を実現した。13日、書き下ろし作品を含む3編を収めた短編集が発売された。「本を出したいという一心で諦めず描き続けた。夢の第一歩を踏み出せた」と感慨もひとしおだ。

自身初の書籍を出版する漫画家の寺田浩晃さん。長時間座ることができず、立ったまま執筆作業に励んでいる=磐田市
自身初の書籍を出版する漫画家の寺田浩晃さん。長時間座ることができず、立ったまま執筆作業に励んでいる=磐田市
 2018年、子どもの頃からの夢だった漫画家として活動を始めた寺田さん。雑誌連載が目前だった19年、多忙で無理がたたり、治療法が確立されていない病を発症。慢性的な嘔吐(おうと)や腹痛の症状に加え、前立腺炎などを併発し長時間座れなくなった。
 「生きた証しを残したい」。闘病を続けながらも本出版の夢をかなえようと、21年1月から動画投稿サイト「ユーチューブ」で漫画の発信を始めた。その思いを表現した動画「はじめまして」は130万回以上再生された。これまでに7本の漫画を投稿し、テレビドラマ化された作品もある。
 
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書籍に収録される作品の原稿の一部
 
 コミックにはタイトルにもなっている「黒猫は泣かない。」などを収録した。社会人の主人公が、小学生の頃いじめられていた同級生の死に対面し、自分を省みる物語。寺田さんは「いじめを受けていた子どもの頃、本に救われた。今作が苦しむ人のよりどころになってくれたらうれしい」と思いを込めた。
 発行を提案した、とおとうみ出版(浜松市南区)企画編集担当者の宮本弓子さん(40)は「地元企業として病気を抱えながら活動する寺田さんの一助になりたかった。若者の葛藤や生きづらさを表現した小説のような重厚な内容」と話した。
 A5判144ページ。1100円(税込み)。県内の谷島屋やネットで販売する。問い合わせはとおとうみ出版<電053(415)1013>へ。

 ■作品展と動画上映
 寺田浩晃さんのコミック出版を記念して15日まで、市民ボランティアの協力で磐田市の福田中央交流センターで作品を紹介する展示会を開いているほか、21日、同市のワークピア磐田で作品の動画上映を行う。当日入場可。
 6月4日には、とおとうみ出版が上映会を浜松市中区のクリエート浜松で開く。ネットで予約を受け付ける。抽選定員120人。いずれも入場無料。
 〈2022.05.15 あなたの静岡新聞〉

闘病や生き方、漫画でYouTube配信に反響

 指定難病の「好酸球性胃腸炎」を患う漫画家寺田浩晃さん(25)=磐田市福田=の作品が、動画投稿サイト「ユーチューブ」で反響を呼んでいる。闘病経験を含め自身の生き方と思いを表現した短編漫画の数々。寺田さんは「病気などで苦しむ人の支えとなる作品を発信したい」と意気込む。

寺田さんが描いた短編漫画を紹介する作品展のポスター
寺田さんが描いた短編漫画を紹介する作品展のポスター
  寺田さんは大学卒業後の2018年に漫画家デビューした。上京し、雑誌での連載を目標に努力を重ねた。連載まであと一歩だった19年7月、結果を早く残したいという焦りと多忙によるストレスで体調を崩し倒れた。
  腹痛や血便、嘔吐(おうと)を繰り返し、57キロあった体重が3カ月間で42キロまで減った。通院を続けたが体調は戻らなかった。10月に治療法が確立されていない病だと発覚。その事実と、闘病ストレスで前立腺炎やうつ病を併発した。長期療養が必要になり、今まで通り漫画を描くことができなくなった。
 
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新作漫画の発表に向け作業に励む寺田さん=磐田市福田
 
  「生きた証しを残したい」。その一心で、腸に負担のかからない食事や、病気に効くと言われるはり治療などを続けながら、都内の出版社に刊行を提案して回った。だが、無名の新人には難しく、実現できなかった。
  将来的な出版を目指し作品を読んでもらう場として、ことし1月に仲間とともにユーチューブでチャンネル「スタジオGARAGE」を開設した。闘病生活を赤裸々に描いた漫画をサイトに投稿すると、会員制交流サイト(SNS)で話題になり、1カ月で登録者数が千人を超えた。
  療養のおかげでここ数カ月は症状も落ち着き、新作を発表する5月のイベントに向けて作業に励む。寺田さんは「動画を見て『励まされた』というメッセージが何件も届いた。人生経験を反映した純度100%の自分の作品を届けていく」と力を込めた。
 〈2021.04.19 あなたの静岡新聞〉

昨年6月には作品が実写ドラマ化 「世にも奇妙な物語」で放送

 指定難病「好酸球性胃腸炎」を患う漫画家寺田浩晃さん(26)=磐田市福田=の作品を実写化したドラマが民放テレビで放送されると自身のツイッターで2日(※2021年6月2日)、報告した。

実写化される寺田さんの短編漫画「三途の川アウトレットパーク」の一場面
実写化される寺田さんの短編漫画「三途の川アウトレットパーク」の一場面
 放送されるのは「三途(さんず)の川アウトレットパーク」。死後の世界で死者が、来世の容姿や才能を買うことができるショッピングモールを舞台に展開する人間ドラマ。
 寺田さんは「ドラマ化の話を聞き驚いた。死後の世界を考えることで今の生き方を考えるきっかけになればと思い、描いた作品」と話す。フジテレビ系オムニバスドラマ「世にも奇妙な物語」で26日、放送される。
 作品は、動画投稿サイト「ユーチューブ」のチャンネル「スタジオGARAGE」で閲覧できる。
 〈2021.06.05 あなたの静岡新聞〉
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