​まるでマニキュア おしゃれ度◎ ジャム店「Poco a Poco」(三島市)【記者さんぽ|個店めぐり】

コロンとしたキューブ形の、色とりどりの小瓶。ハンドメードの通販サイトで、商品が目に留まりました。化粧品のマニキュアかと思いきや、果物と野菜のジャム。イチゴ、ブルーベリー、ニューサマーオレンジといった果物だけでなく、ニンジンなどの野菜の味もありました。ラインナップをよく見ると、箱根西麓三島野菜をはじめとした静岡県の食材ばかり。気になって三島市の手作り工房「Poco a Poco(ポコアポコ)」を訪ねました。

           店内には、色とりどりの商品が並んでいます
           店内には、色とりどりの商品が並んでいます

東駿河湾環状道の三島塚原インターチェンジから車で5分。国道1号沿いの店舗は、売り場面積約8平方メートル、工房約30平方メートル。展示棚は、雑貨店のよう。色鮮やかなジャムやピクルスの瓶が並び、見ているだけで楽しくなります。
  photo01 ピクルスも彩りがきれいです
代表の尾林敬子さん(66)が「本当はここまでやるつもりはなかったのだけど」と前置きし、これまでの歩みを話してくれました。尾林さんは50代前半まで、大手料理教室のケーキ部門の講師を務めてきました。実家が営んでいた個人商店が廃業し、空き家となっていたため、個人でお菓子教室を開こうとリフォームしました。生徒が徐々に上達するようにと願い、「少しずつ」という意味の音楽用語から「Poco a Poco」と教室を名付けました。 photo01 柔らかな雰囲気の尾林さん(左)と土屋さん
教室の生徒や知人に菓子をプレゼントするたびに、「おいしい」「売らないの?」と声を掛けられるように。友人が菓子製造業の許可を取得したことに感化され、尾林さんも許可を取得。日持ちする物を売ろうと、同年にジャムと焼き菓子の専門店を開きました。還暦直前の挑戦となりましたが、お菓子教室を開いていて大規模な追加投資が不要だったため、不安はなかったとのこと。当初は、毎月1回の販売でしたが、常連客が増えて店を開く日も徐々に増加。現在は週5日にまで増えました。「お店の名前通り、少しずつやってきた」と微笑みます。
現在は店長を務める長女の土屋佳奈子さん(39)は開店時、別の職場に務めていましたが、育休中だったため、工房の仕事を手伝っていました。地元素材にこだわり、リキュールやバニラビーンズで香りを引き立て、短時間で発色良く仕上がるお店のジャムに自信を持っていたそうです。
  photo01 パッと見、マニキュアのようです
しかし、農産物の生産者から大手メーカーまで、ジャム販売のライバルはたくさん。「素材へのこだわりから原価が高いこの工房のジャムを売るには、商品を“とがらせないと”いけない」と思い、地元のデザイナーに相談。そこで「ジャムをジャムとして売らない」「雑貨店に並んでも映える商品にする」という戦略が決まり、現在の看板商品のジャム「マニキュアスタイル」が生まれました。
これが工房の大きな転機になりました。首都圏のファッションビルのイベントに呼ばれるようになり、イベント時の売り上げは倍増。大手通販サイトでも特集が組まれました。購入客は圧倒的に女性が多く、ギフト需要がメーンだそうです。
  photo01 売り場開設当時は、この棚1つだったそうです
売り場にはジャムの他、ピクルスやグラノーラも並びます。なぜ菓子でない商品なのか疑問に思いましたが、これにも理由が。工房が繁盛し、前職を辞めて工房の店長となった土屋さんは、工房のジャムが「三島の土産物」として選ばれている側面があると分析。「ジャムでない物にも需要があるのでは」と考え、ジャムと同じ箱根西麓三島野菜など県内食材を使った日持ちする商品として、ピクルスとグラノーラを開発したそうです。
  photo01 グラノーラは新商品。11月発売とのことです
店舗のほか、インターネットや県内外のイベントでも販売しています。市外の売り場に立つと、箱根西麓三島野菜が意外と知られていないと感じるのだそう。2人は「ジャムが三島の特産物を知るきっかけになれば」と声をそろえます。
※【記者さんぽ|個店めぐり】は「あなたの静岡新聞」編集部の記者が、県内のがんばる個店、魅力的な個店を訪ねて、店主の思いを伝えます。随時掲載します。気軽に候補店の情報をお寄せください。自薦他薦を問いません。取材先選びの参考にさせていただきます。⇒投稿フォームはこちら

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