盛り土 報復恐れ命令躊躇か 熱海市「水道施設停止要求」を危惧

 熱海市伊豆山の大規模土石流で、同市が、不適切な盛り土を造成し被害を拡大したとされる神奈川県小田原市の不動産管理会社(清算)から市の上水道施設の使用停止を求められることを恐れ、行政命令の発出を躊躇(ちゅうちょ)した可能性があることが、20日までに分かった。水道施設は同社の所有地にあった。静岡県が公開した行政手続きの確認文書で判明した。

熱海市が、業者から水道施設の使用停止を求められることへの懸念を示した文書
熱海市が、業者から水道施設の使用停止を求められることへの懸念を示した文書

 文書によると、県と市が2010年11月、ずさんな工事を続ける同社への対応を協議した際、市側は「行政命令を出すと、受水槽の使用停止を求めてくる可能性がある」と県に伝えていた。
 斉藤栄市長は18日の記者会見で、県土採取等規制条例に基づく措置命令の発出を見送った理由として、業者が防災工事を行い、一定程度の安全性が確認されたと説明していた。発出見送りの背景には、同社の報復的な動きへの懸念があったことが浮き彫りになった。
 市によると、受水槽は崩落した起点付近の同社所有地にあり、伊豆山や泉地区に送水していた。同社からたびたび撤去を求められていて、土地の賃貸借契約も結べていなかった。市が継続使用できることを盛り込んだ同社の前の所有者との契約に基づき、使用していた。
 現在の所有者とは契約を締結したが、土石流で、受水槽につながる送水管が流出し約千軒が断水した。現在、受水施設は使用していない。
 市が措置命令を見送ったのは、県に受水槽に関する懸念を伝えてから7カ月後の11年6月。市の担当者は「当時、受水槽の問題が解決しておらず、命令が出させなかったことに何らか影響があったかもしれない」と述べた。

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