「補強禁止」前代未聞の逆境 後藤ら若手台頭で活路【3度目のJ1復帰 ジュビロ磐田㊤】

 まさにけがの功名だった。今季、FWファビアンゴンザレスの契約を巡り、国際サッカー連盟(FIFA)から補強禁止処分を受けたJ2磐田。2月の開幕戦で2得点した高校3年生のFW後藤啓介(磐田ユース出)ら若手を積極的に起用し、前代未聞の逆境を乗り越えた。

今季大きな飛躍を遂げた磐田の古川(右から2人目)と後藤(同4人目)=6月28日、ヤマハスタジアム(浜松総局・山川侑哉)
今季大きな飛躍を遂げた磐田の古川(右から2人目)と後藤(同4人目)=6月28日、ヤマハスタジアム(浜松総局・山川侑哉)

 開幕から1カ月後の3月下旬。元日本代表FW杉本健勇の横浜Mへの期限付き移籍が発表された。昨季鳴り物入りで加入しながら、PKによる1得点に終わった30歳のストライカー。今季こそチームの得点源として期待されていた。だが、本人の希望もあり、チームは放出を決意。強化責任者の藤田俊哉スポーツダイレクター(SD)は「みんなにとってベストの選択になる」。若手の台頭を期待しての決断だった。
 この状況に奮い立ったのが後藤だ。当時はゴンザレスが出場停止処分中でFWジャーメイン良も故障離脱。「試合に出られるFWは自分だけ。期待されるのは理解している」と後藤。足のけがもあり夏以降は途中出場が多くなったが、7点を挙げてFWの人手不足をカバーした。
 昨季リーグ戦7試合出場にとどまった高卒2年目のMF古川陽介(静岡学園高出)も、横内昭展監督が積極起用し、今季28試合と大きく出場時間を伸ばした。得意のドリブル突破に磨きを掛けると同時に、指揮官が求める泥くさい守備も必死で自分のものにしようと食らいついた。
 古川と同期で19歳の守備的MF藤原健介(磐田ユース出)も3月のルヴァン杯札幌戦でプロ初ゴール、6月のJ2秋田戦でリーグ戦初得点をマークした期待の若手だ。6月以降、腰と左太ももの故障で長期離脱したが、最終盤でベンチ入り。横内監督は期待の3人を「さんすけ」と呼び、ギラギラした野心を買って起用した。
 「若手にとってチャンスができたシーズン。(補強ができる)普通の争いで出られるか」。藤田SDは今後の成長が重要との認識を示した。
     ◇ 
 最終節の大逆転で2季ぶりのJ1復帰を決めた磐田。今季を振り返り、3度目の復帰となるJ1で戦うための課題を探る。

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