定数減の沼津市 現職全員出馬で総力戦/単独区新設の長泉町 候補者擁立難航極める【静岡県議選 注目区 統一地方選㊤】

 31日に告示を控え、県内全34選挙区で繰り広げられる県議選は、出馬予定者の顔触れが固まりつつある。選挙区新設、ベテラン議員引退、保守分裂と、地元事情を抱える注目選挙区を追った。

 選挙区改定で誕生した単独区の長泉町(定数1)、定数1減の沼津市(同3)。擁立が難航した長泉町は、一転して自民と連合系の有力新人の一騎打ちが熱を帯びる。沼津市は現職4人が生き残りを懸けた激戦を繰り広げる。
 
 「沼津の議席を自民と公明だけにしていいのか」。前回、最後の議席に滑り込んだ曳田卓氏は2月26日に開いた後援会の事務所開きで語気を強めた。国民民主から出馬した前回は、立憲民主の新人との間で票が割れ、420票差にまで迫られた。定数減が固まった昨夏からは自民支持層にもアプローチするなど、なりふり構わない姿勢が際立つ。
 一方の自民、公明の現職も危機感を強める。自民は議長経験のあるベテラン杉山盛雄氏と、前回は推薦だった加藤元章氏の2人を公認した。前回トップ当選の杉山氏も昨夏ごろから本格的にあいさつ回りを開始。「こんなに早く本人が来て驚いた」とある支援者はささやく。杉山氏の動きに呼応するかのように、加藤氏も1月下旬に後援会事務所を設けた。前回は3位での当選。陣営は「油断したら負ける」と気を引き締める。
 堅い支持基盤に支えられる公明の蓮池章平氏も同様だ。山口那津男代表は2月、統一地方選に向けた全国遊説初日の訪問先に沼津市を選んだ。蓮池氏は「7度目の挑戦だが、県議選で代表が来たのは初めて」。議席死守へ党本部からの重圧も受ける。
 立候補を表明していた維新新人の小松広克氏(57)は出馬を断念した。
 
 「候補者は絶対に立てる」。自民と、ふじのくに県民クラブの支持団体「連合静岡」はともに長泉町選挙区を“生命線”と位置付ける。川勝平太知事に不信任を突きつけることができる県議会の「4分の3」議席の攻防を巡り、同選挙区の結果が鍵になるとみられるが、いずれも候補者の擁立は難航した。
 自民が主導して分区した長泉町は元々、事業所が多く連合の組織力が強い地域だ。自民は昨年から複数の保守系町議に出馬を打診したが、多くが二の足を踏んだ。曲折を経て町議2期目の加藤祐喜氏が出馬の意向を固めたのは、年が明けた1月下旬だった。
 36歳の若さと「長泉生まれ、長泉育ち」が強みとする。ただ、陣営は「相手は組織で攻めてくる」と警戒を忘れない。
 一方の連合。県西部の医師を立てる案が浮上したが落下傘候補に地元が猛反発。そこで急浮上したのが、立憲民主の渡辺周衆院議員の秘書で、町内在住の弟・迅氏(54)だ。
 2021年の衆院選では、周氏が小選挙区で自民勝俣孝明氏に敗れたにもかかわらず、同町は2千票近く上回るなど“渡辺ブランド”は健在。人脈のある迅氏は「連合の最終兵器」(関係者)。連合静岡は週明けにも推薦の最終決定について判断するとみられる。
 (統一地方選取材班)
 立候補予定者
 ▽沼津市(定数3)
 杉山盛雄 64自現⑥
 蓮池章平 69公現⑥
 曳田卓 69立現③
 加藤元章 59自現①
 ▽長泉町(定数1)
 加藤祐喜 36自新

いい茶0
あなたの静岡新聞 アプリ
地域再生大賞