海と山共存、沼津市戸田を回遊 移住者が拠点整備、宿泊施設/ハーブ農園/焙煎所

 新型コロナウイルス禍直前に宿泊施設を開業し、沼津市戸田でまちづくりを展開する合同会社レイバー(鈴木智博代表)の取り組みが4年目を迎えた。海と山が共存する戸田の魅力を生かし、拠点整備や、渡船と電動キックボードで海と山をつなげる取り組みなど地域資源を最大限に活用。地域全体への波及に向け、回遊性向上を目指す試みを加速させている。

宿泊施設で電動キックボードを貸し出す鈴木智博さん(左)=8月下旬、沼津市戸田のタゴールハーバーホステル
宿泊施設で電動キックボードを貸し出す鈴木智博さん(左)=8月下旬、沼津市戸田のタゴールハーバーホステル
タゴールハーバーホステル、道の駅くるら戸田、コーヒー焙煎所
タゴールハーバーホステル、道の駅くるら戸田、コーヒー焙煎所
宿泊施設で電動キックボードを貸し出す鈴木智博さん(左)=8月下旬、沼津市戸田のタゴールハーバーホステル
タゴールハーバーホステル、道の駅くるら戸田、コーヒー焙煎所

 都内の建築設計会社に勤めていた1級建築士の鈴木さんは、沼津市のリノベーション事業参加を機に2019年に移住。人口流出や空き家増などの地域課題解決を目指すまちづくり会社を設立した。「山に囲まれ、海に向かって開く陸続きの離島のような環境に魅了された」と鈴木さん。戸田湾に面する築60年の民宿を改装し、宿泊客や外国人観光客、地域住民が交流するラウンジを備えた宿泊施設「タゴールハーバーホステル」を開業した。
 開業から半年後に新型コロナの流行が始まったが、SNSや口コミで宿を知った若年層の来訪が増加。コンビニがなかった戸田に21年、セブン―イレブンが施設裏に開店した。
 鈴木さんは「戸田には都市計画がない。海と山に拠点を設けて回遊性を高めたい」と耕作放棄地をハーブ農園に活用し、コーヒー焙煎(ばいせん)所を整備するなど「山エリア」の開発にも着手。今年7月、地元の御浜海水浴場で開催した周年イベントでは、戸田渡船組合の協力で無料の渡船を運航、乗り場では電動キックボード試乗会も実施した。8月末からは有料で電動キックボードの貸し出しも始めた。
 鈴木さんは「『よそ者』を受け入れてくれた地元やリピーターのおかげ。戸田のありのままの自然を面白がれる仲間が増えるとうれしい」。コロナ禍後を見据え、外国人をターゲットにした西伊豆エリアの情報発信にも力を入れるという。

 ■新規開業を後押し
 タゴールの開業後、戸田地区ではアクティビティや宿泊施設を開業する動きが活発化した。18年前に移住した宮崎孝治さん(44)綾子さん(41)夫妻は昨夏、係留船「カルモア」をオープンした。
 係留船は湾内に浮かぶ船にボートで渡り、釣りを楽しむ西伊豆独自の文化。高齢化などで事業者が減少傾向にあったが「古い建物を改修し、理想を形にする鈴木君に後押しされた」と孝治さん。古い船を改修し、ピクニックも楽しめる貸切係留船の開業に踏み切った。綾子さんは「若い世代に戸田の良さを伝えられて楽しい。移住を考える利用者の声もよく聞く」と話した。

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