巴川製紙所、半導体装置向け開発強化 冷却用シートや固定台

 印刷用トナーや電子材料を手掛ける巴川製紙所が、半導体製造装置メーカー向けの開発を強化している。世界的な半導体増産の追い風を受け、2022年3月期の関連売上高は前期比1割強増加と好調を維持。既存の紙事業がデジタル化で市場縮小する中、極薄素材の高度な加工技術を生かし、冷却装置などの半導体関連製品群を新たな成長の柱に据える。静岡市内の拠点が生産を担う。

巴川製紙所 半導体市場向け売上高
巴川製紙所 半導体市場向け売上高
銅繊維シートを活用した冷却装置のヒートシンク
銅繊維シートを活用した冷却装置のヒートシンク
巴川製紙所 半導体市場向け売上高
銅繊維シートを活用した冷却装置のヒートシンク

 独自に開発した銅繊維シートやステンレス繊維シートを活用し、ヒートシンクと呼ばれる冷却装置や、紙のように貼って使える薄型ヒーターの量産化準備を進める。高い熱伝導性とシート形状を利点とし、装置の小型、軽量化につなげる。世界の製造拠点で半導体の高性能化と生産の高速化が進んでいるため、排熱や省エネなどの生産課題に新技術で即応する。
 長年手掛けるシリコンウエハーの固定台「静電チャック」についても、23年3月期中に高性能の新製品を投入する方針。
 同社半導体市場向け製品の22年3月期の売上高は、前期比13・8%増の41億円。期初計画を3億円上回り、同社全体の増収増益に寄与した。26年3月期には、全社売上高予想の約14%に当たる50億円を計画する。
 同社は半導体実装に使うリードフレーム用固定テープ生産で世界シェア9割を占めるなど、半導体関連の一部商材で高い競争力を維持する。15年以降は、熱、電気、電磁波のコントロール材料を意味する「iCas」を開発スローガンに掲げ、生産部門も再編した。iCasカンパニーの担当者は「半導体分野で熱制御の技術ニーズは今後一層高まる。抄紙、塗工などの自社技術を組み合わせ、顧客の期待に応える提案を続けたい」と話す。

いい茶0
あなたの静岡新聞 アプリ
地域再生大賞