県と市の対応「失敗だった」 熱海土石流・検証委最終報告

 熱海市伊豆山の大規模土石流を巡り、静岡県と同市の行政対応を検討してきた県の検証委員会(委員長・青島伸雄弁護士)は13日、最終報告をまとめた。悪質な開発行為を繰り返す業者に適切な処置を行う機会は何度もあったとして、県と市の対応は「失敗だった」と結論付けた。不備がある申請書類を受理するなど、同市の初期対応のまずさが失敗の最大の要因だと指摘した。

行政手続きに関する検証の最終報告をまとめ記者会見に臨む青島伸雄委員長(右から2人目)ら=13日午後、県庁
行政手続きに関する検証の最終報告をまとめ記者会見に臨む青島伸雄委員長(右から2人目)ら=13日午後、県庁
行政対応検証委員会がまとめた最終報告の骨子
行政対応検証委員会がまとめた最終報告の骨子
行政手続きに関する検証の最終報告をまとめ記者会見に臨む青島伸雄委員長(右から2人目)ら=13日午後、県庁
行政対応検証委員会がまとめた最終報告の骨子

 同市は、盛り土の元所有者である神奈川県小田原市の不動産管理会社から2007年3月に盛り土造成の申請があった際、重要事項の未記載が多数あるにもかかわらず、是正を求めず受理した。検証委は「厳しい対応を取らなかったため、違法や不適切な行為が繰り返され、市は受け身になった」と批判した。
 市が、発出を最終的に見送った措置命令については「発出を検討する必要があった」と言及。明確な処分基準がなかったことが、適切な対応につながらなかったとして基準の設定を求めた。県は積極的に関与すべきだったと指摘した。
 市は同年6月、盛り土の隣接地で、県風致地区条例に基づき同社から申請があった開発申請を許可した。検証委は、盛り土部を含め一帯での開発が1ヘクタールを超えるとみなし、森林法に基づく林地開発許可違反と判断することもできたとした。この対応を巡り県が当時、「森林法の適用外」と判断したことは「妥当でない」と判定した。
 業者の悪質な行動に対し、県と市が連携して断固たる措置を執らなかった行政姿勢が問題の本質だと厳しく指摘した。会合後、記者会見で青島委員長は、盛り土崩落の危険性の認識について「これほど大きな崩落が起きるとは県も市も認識していなかったとみられる」とする一方で、「二度とこのような災害が起きないよう県と市は行政姿勢を見直し連携を強化してもらいたい」と要望した。
 県は17日に検証結果に対する正式な見解を示す。検証委は、弁護士や行政法の専門家らで構成する。計4回会合を開いた。

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