静岡県専門部会、一定の評価 JRの「湧水全量戻し」2案【大井川とリニア】

 静岡県庁で26日に開かれたリニア中央新幹線南アルプストンネル工事に伴う大井川水問題を議論する県有識者会議の地質構造・水資源専門部会で、JR東海は、県や利水者が求める「トンネル湧水の全量戻し」に対応する二つの方策案を示した。委員と県は、具体案が出てきたことに一定の評価をしつつ、JRの想定には不確実性を伴うとして引き続き検討することになった。

JR東海が示した「トンネル湧水の全量戻し」についての主なやりとり
JR東海が示した「トンネル湧水の全量戻し」についての主なやりとり

 トンネル県内区間は県境付近を山梨と長野側からそれぞれ掘削する計画。山梨側の県境は静岡側から掘り進めるトンネル工事と貫通するまでの期間、トンネル湧水が県外流出する。
 JRが示したのは東京電力田代ダムを取水抑制する案と、山梨側と静岡側の先進坑がつながった後、流出したのと同量をポンプアップして大井川に戻す案。ポンプアップする手法は、国土交通省専門家会議で示していたが、ポンプアップする区間を山梨県内工区の本坑、先進坑、斜坑の計16・6キロ区間と初めて示し、1年1カ月から1年9カ月間の範囲で流出量と同量を戻せると説明した。国交省会議の時は10~20年かかると話していたが、大幅に短縮できるとした。
 ただ、戻す期間を計算する前提となる県外流出量を、水収支解析(流量予測)の結果から、300万立方メートルから500万立方メートルの範囲と予測したことについて「1桁多くなる可能性がある」(塩坂邦雄委員)、「500万立方メートルを確定値のように議論するのは危険」(難波喬司副知事)と意見が相次いだ。JR東海の担当者は「数字の精度は検討を深める必要がある」と述べ、想定を修正する考えを示した。

 ■ダム取水抑制案「あり得る」 難波副知事、評価
 静岡県有識者会議専門部会に出席した難波喬司副知事は会議後の取材で、JR東海が県外へ流出するトンネル湧水を大井川に戻す方策の一つとして示した東京電力田代ダムを取水抑制する案について「案としては十分あり得る」と評価した。
 田代ダムは発電のため、大井川の水を山梨県側の富士川水系に流している。難波副知事は取水抑制した場合、電力供給に影響が出る可能性に触れ、「(実現には)社会との合意形成が必要になる。これからしっかりと議論を深めないといけない」と述べた。
 トンネル湧水をポンプアップして大井川に戻す案については「以前と変わっていない。リスクを考えて議論しないといけない」と指摘した。

 <メモ>トンネル湧水の全量戻し トンネルを掘削する大井川上流域で、トンネル内に水が湧き出て地下水位が低下すると、地表に湧き出る水が減る恐れがある。県や利水者は減水対策としてトンネル内に湧き出た水を工事期間中のタイミングを含めて大井川に全て戻し、中下流域に流すよう求めてきた。JR東海は工事の安全性を考えると、山梨、長野両県から静岡県内を掘る期間中はトンネル湧水が流域外に流出し、大井川に戻せないと説明している。

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