田代ダム取水抑制案、JR初提示 専門部会、少雨時水量ただす【大井川とリニア】

 リニア中央新幹線工事に伴う大井川の水問題の対策を議論する県有識者会議の地質構造・水資源専門部会が26日、県庁で開かれ、JR東海は大井川最上流部から富士川に水を流している東京電力田代ダムの取水を抑制する方策案を説明した。県側が求める減水対策「トンネル湧水の全量戻し」の方法としてJRが提示したのは初めて。委員からは少雨時に水量が確保されるのかを十分に検討すべきだとする意見が相次いだ。

JR東海が示したイメージ図
JR東海が示したイメージ図

 田代ダムの取水抑制案は、トンネル掘削時に山梨県に流出する湧水量と同じ水量の取水を抑えて流出量を相殺する案。JRの担当者は会議で「関係者の理解を得ながら東京電力と具体的な話をしていきたい」と説明した。
 ただ、田代ダムはトンネル掘削箇所の下流側に位置する。塩坂邦雄委員(地質専門家)は「渇水期に田代ダム上流の水が減って、ダムに水がたまらなければ前提が崩れてしまう」と指摘し、丸井敦尚委員(産業技術総合研究所招へい研究員)は「(河川の機能を維持するために必要な)維持流量を確保できるのか」と問題提起した。
 難波喬司副知事は終了後、「案としては十分あり得るが、現実性があるのかは別の問題」とし、検討を続ける考えを示した。
 JRは田代ダムの取水抑制案とともに、これまで示していた「トンネル貫通後、10~20年かけて県外流出分の湧水を戻す方法」に関して大幅に期間を短縮する案を提示した。
 県が提供を求めていたルート選定時の地質調査資料は、JRが会議で配布し、「超高圧大量湧水の発生する可能性が高い」などとする施工上の留意点も説明した。今後、対策の検討に使われる。
 同専門部会の開催は1年2カ月ぶり。昨年12月に国土交通省専門家会議が取りまとめた中間報告は、JRに対し全量戻しの具体策を県などと協議するよう求めていた。

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