県外流出戻し案、JR社長会見「地元不安解消できる」【大井川とリニア】

 リニア中央新幹線工事に伴う大井川水問題を巡り、JR東海の金子慎社長は26日、名古屋市内で開いた定例記者会見で、トンネル工事により県外流出する湧水を大井川に戻す方策案を県有識者会議に示したことについて「県外流出の影響に対する地元の不安や心配を解消できるのでは」との認識を示した。
 山梨県側と静岡県側のトンネル先進坑貫通後に県外流出量と同量をポンプアップして戻す方法と、東京電力田代ダムの取水を抑制する方法の2案を示した意図について「(先進坑貫通後のポンプアップは)時期を調整して戻せる。地元では『戻すなら渇水期に』との意見もあると聞く。一方で田代ダムの取水抑制は、工事と同時期に解消する案。どの方法が受け入れられるのかよく意見を聞き対応したい」と説明した。「どちらの案も『しっかり戻す』というメッセージを伝えたい」と強調し、地元の理解に期待感も示した。
 静岡から長野県側への流出に関しては「長野側は山梨側のような(県境に断層帯があるという)状態にはなく、県外流出量は少ないだろうとの見込み。先進坑貫通後に戻す方策は長野側でも可能な案」と話した。JR広報部は「先進坑貫通後に戻す方策案と同様の方策を基本として、今後検討を深める」と補足した。
 定例会見に先立ち開かれた期末決算会見では、リニアの新たな開業時期を提示する時期について見込みを問われ、金子社長は「静岡工区に着工できなければ全体の見通しが立たない」と説明した。

 ■短期間で返せる可能性 JR東海社長一問一答
  26日に行われた金子慎JR東海社長の定例記者会見での主なやりとりは次の通り。
 ―静岡県側が「トンネル工事期間を含む全量戻し」を求めてきた中、先進坑貫通後に同量を戻す案を改めて示した。地元の要求に対応した認識か。
 「以前に先進坑貫通後に戻す方法を提示した際には『何十年もかかる』と報道されたが、そうではなく山梨県側のトンネルの相当部分を使えばかなり短期間で返せる可能性があるため、十分検討に値するのではと提示した。田代ダムの取水抑制も新たな案。静岡県側から掘削する先進坑から高速長尺先進ボーリングにより県外流出量を減らす方法も併せてやれば、地元の心配や不安を解消できるのではと考えている」
 ―これまで「公表に適さない」と説明していた超高圧大量湧水の可能性を示す地質調査の資料を、県有識者会議に提出した理由は。
 「静岡県から静岡新聞の記事に関する事実関係を確認したいとの要請があったため。当該資料は専門性が高く、専門知識を持つ関係者により分析されるべきということは県にも伝えてきた。しかし現実問題として報道されて不安があるかもしれないとのことで、説明を求められたと理解している」
 ―県有識者会議では難波喬司副知事からルート選定に関し「大井川流域の地質などについて検討が不十分だった」と指摘があった。ルート選定の適切性について認識は。
 「前回の会見でも答えた通り。しっかり環境影響評価(アセスメント)をして適切に決定した」

いい茶0
あなたの静岡新聞 アプリ
地域再生大賞