ビアパブ12年礎築く 呉服町タップルーム(静岡市葵区)横田史剛さん【しずおかクラフトビール新世㉓】

 JR静岡駅は、徒歩圏内にビアパブやビアバーが約20軒ある。「日本一のクラフトビールシティー」と評価する声も聞こえる。

ベアードブルーイングのビールを注ぐ横田史剛さん(撮影時のみマスクを外しています)=4月上旬、静岡市葵区の呉服町タップルーム
ベアードブルーイングのビールを注ぐ横田史剛さん(撮影時のみマスクを外しています)=4月上旬、静岡市葵区の呉服町タップルーム
「ブロンプトンエール」(左)とウィートキングウィット
「ブロンプトンエール」(左)とウィートキングウィット
ベアードブルーイングのビールを注ぐ横田史剛さん(撮影時のみマスクを外しています)=4月上旬、静岡市葵区の呉服町タップルーム
「ブロンプトンエール」(左)とウィートキングウィット

 クラフトビールが今ほど認知されていなかった2010年、17タップを並べたビアパブ「ビールのヨコタ」を市役所近隣に開き、クラフトビールシティーの礎を築いたのが横田史剛さん(41)=吉田町出身=だ。2年前に「呉服町タップルーム」と名を変えた店は4月4日、12回目の誕生日を迎えた。
 「30年は続けるつもりで始めた。まだ12年しかたっていないのかと」。ひょうひょうとしたキャラクターだが、大人数の来店をご法度とするなど、確固たる哲学を持つ。12年間の営業を経て、一人客の居心地を優先するようになった。「一人客、二人連れで全ての席が埋まることも。店内が静かな“サイレント満席”。まさに理想的な状態」
 03年に東京・両国のビアパブ「麦酒倶楽部ポパイ」で当時沼津市で醸造していた「ベアードブルーイング」のビールを知った。都内から東海道線で同市の直営タップルーム(パブ)に通い、その味と香りにはまり込んでいく。
 「タップルームがあるから」という理由で沼津に移住し、04年には同社初の社員に。接客から瓶詰めビールの発送まで、ありとあらゆる業務に従事した。
 ベアードはこの時期、急速に需要と知名度を増していた。08年には初めての都内のタップルームを東急東横線中目黒駅前にオープン。横田さんは店長として店を軌道に乗せた。
 30歳を区切りにベアードを辞し、独立した。10年前後の静岡市には、10種以上のクラフトビールを生で飲める店は存在しなかった。開店に向けた市場調査もままならなかったが「直感で今の場所に決めた」。繁華街から少し離れた通りの物件。「徐々にお客さんが増えていけばいい。かけ算ではなく、足し算の考え方だった」
 思惑通り一人、また一人と店のファンを増やした12年。横田さんが種をまいたクラフトビール文化は、市内各所で次々に花を咲かせた。「同業の店が増えたけれど、売り上げはずっと変わらない。市内にクラフトビールが浸透した証しでは」
 店内をのぞくと、ビールを飲みながら本を読む人、パソコンで仕事する人がいる。もちろん、会話を楽しむカップルもいる。「12年通ってくれている人もいる。よく飽きないなと」。横田さんは心底うれしそうに笑った。

ブロンプトンエールとウィートキングウィット


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 「ブロンプトンエール」(左)は、「ビールのヨコタ」開店時にベアードブルーイングが開発したオリジナルビール。横田さんが旅先のスコットランドで盗まれた自転車の名前を冠した。やや低温で発酵させたスコティッシュエールで、穏やかなモルトの味わいが口いっぱいに広がる。
 ベアードの定番の一つ「ウィートキングウィット」は、夏の草原を思わせるフレッシュで爽快なフレーバー。丸みのある後味も特徴で、生ビールで飲むと、酵母のキャラクターも引き立つ。

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