テーマ : クラフトビール新世代

伊豆の国ビール(伊豆の国市)渡辺仁さん なじみの水で仕込み「飲みやすさ高める」【しずおかクラフトビール新世代⑳】

 自分が育った町で、飲み慣れた水を使ってビールをつくっている。「伊豆の国ビール」の醸造担当、渡辺仁さん(42)は醸造所が立地する旧大仁町(伊豆の国市)出身、在住。「大仁の水は昔からおいしいと言われていた」と胸を張る。

仕込んだビールの状態を確認する渡辺仁さん=1月中旬、伊豆の国市の伊豆の国ビール
仕込んだビールの状態を確認する渡辺仁さん=1月中旬、伊豆の国市の伊豆の国ビール
人気のプレミアムピルスナー(左)とクライム
人気のプレミアムピルスナー(左)とクライム
仕込んだビールの状態を確認する渡辺仁さん=1月中旬、伊豆の国市の伊豆の国ビール
人気のプレミアムピルスナー(左)とクライム

 20代から30代半ばまで、ビールが全く飲めなかった。日本酒、焼酎、サワーなど酒類は何でも飲めたが、唯一の例外がビール。「ホップの苦みが苦手だった」という。
 2015年、醸造所のレストラン担当として、毎朝のビールテイスティングを任された。「ピルスナーもヴァイツェンも苦さが控えめ。口当たりが柔らかく、のど越しが良かった」。人生で初めてビールを「うまい」と感じた。
 同醸造所のルーツは観光植物園「伊豆洋らんパーク」だ。2009年に時之栖(御殿場市)が経営権を取得。建物を改装して設備を整え、同年末に醸造を始めた。植物園は12年にハワイの伝統芸能「フラ」をテーマにしたリゾート施設「みんなのハワイアンズ」に業態転換。だが17年8月に閉園を余儀なくされる。その間、醸造所は変わらず稼働を続けた。
 会社の事業環境が変化する中で、渡辺さんは飲食部門の担当から醸造担当への転身を図った。「初めておいしく飲めたビールを自分の手でつくりたい」。当時の醸造部長に直談判し、17年9月に新しい世界に飛び込んだ。
 同じ時之栖グループの御殿場高原ビール(御殿場市)で修業し、18年に伊豆の国ビールに戻ってきた。ホームタウンでの醸造は巡り合わせの産物かもしれない。だが最近は「運命だったのかなと思うようになった」。
 同グループのビール醸造所と言えば、伊豆の国ビール、御殿場高原ビールに加え、20年には「富嶽[ふがく]麦酒」を看板に据える「富士かぐや蒸溜所」(富士市)が開業した。同じグループで3ブランドが競う。渡辺さんは「2社が最大のライバル。伊豆の国ビールの強みである『飲みやすさ』の精度を高めていく」と意欲を燃やす。

 ■プレミアムピルスナー ■クライム
 醸造所でつくる4種のビールの中で最も人気がある「プレミアムピルスナー」は、欧州産のモルトとホップを使用。苦みは穏やかだが、ピルスナー特有の鼻に抜けるフレーバーが存分に感じられる。酒販店だけでなく、大手スーパーでも手に入る。
 2015年に発売した「クライム」は、ロッククライミングの愛好家が集まる伊豆の国市の城山[じょうやま]をイメージしたスコティッシュエール。切れが良くすっきりした味わいで、味が濃いめの料理に合わせたくなる。

いい茶0

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