テーマ : クラフトビール新世代

柿田川ブリューイング(沼津市)片岡哲也さん 英国パブ文化に憧れ 飲み手の人生を彩る【しずおかクラフトビール新世代⑧】

 17年前に英国で出合ったパブ文化、ビール文化の美点を日本にも広めたい-。柿田川ブリューイング(沼津市)のエンブレムに刻まれた「SLOW BEER SLOW LIFE」のスローガンには、社長片岡哲也さん(36)=秋田市出身=の願いが込められている。「ビールはコミュニケーションを豊かにするツール。英国のパブに通って、それを学んだ。おいしいビールを通じて、飲み手の人生を豊かに彩りたい」

瓶詰めしたビールのラベル貼りにいそしむ片岡哲也さん=沼津市の柿田川ブリューイング
瓶詰めしたビールのラベル貼りにいそしむ片岡哲也さん=沼津市の柿田川ブリューイング
EXTRA SHIZUOKA 美茶(左)とクリームラガー(右)
EXTRA SHIZUOKA 美茶(左)とクリームラガー(右)
瓶詰めしたビールのラベル貼りにいそしむ片岡哲也さん=沼津市の柿田川ブリューイング
EXTRA SHIZUOKA 美茶(左)とクリームラガー(右)

  語学留学で住んだブライトンは、ロンドンの南に位置する港町。現地に着いてすぐ、ホームステイ先の近所のパブに一人で行った。住宅街の真ん中にある約20席の小さな店は、近隣住民と常連ばかり。だが片言の英語でラガービールを注文し、モニターに映るサッカー・イングランド代表の試合を応援しているうちに、すっかり打ち解けた。「ビールを飲んでいる者同士の、特有の連帯感を知った」
  欧州、南米など世界各国から集まったクラスメートと、市内各地のパブに通った。その数百カ所以上に及んだ。日本では珍しかったベルギーのホワイトエールがお気に入り。パブでは、初対面の人でもすぐに親しくなれた。「みんな、それぞれの出身地のビールを誇らしげに勧めてくる。自分も帰国後にビール造りに携わりたいと強く思った」
  2008年、当時沼津港エリアにあったベアードブルーイング(現伊豆市)に入社。アメリカンエールの“名手”、ブライアン・ベアードさんから醸造のイロハを学んだ。ベアードさんの口癖は「4K」。ビール造りは危険、汚い、きついの3K職場。でも「かっこいい」-。「その通りだ」。片岡さんは強く感じていた。
  独立したのは「自分が信じたビール、魂を込めたビールを世に問いたい」との思いが募ったから。「沼津クラフト」をブランド名に掲げ、定番5種を基幹に、地元のかんきつ類などを活用した季節限定ビールを20種以上仕込む。
  反骨心が仕事の原動力。「はやりのスタイルは追い掛けない。おかわりしてもらえる、飲む人にとっての定番を造り続ける」と強調する。「これ、もう1杯」が最高の賛辞だ。
 (文化生活部・橋爪充)
 
 ■クリームラガーとEXTRA SHIZUOKA 美茶
  創業当時からの定番「クリームラガー」は、切れとのど越しを重視した大手ビール会社のラガービールとは異なる、まろやかな口当たりが特徴。大麦と小麦のバランスに気を配り、一般的なピルスナーにない味わいを追求した。飲み込んだ後に、モルト、ホップの心地よい余韻が続く。
  20年秋新発売の「EXTRA SHIZUOKA 美茶」は、ほうじ茶の個性をはっきり感じるESB(エクストラ・スペシャル・ビター)スタイルの新様式。発酵前の煮沸工程で煮出したほうじ茶を投入する。モルトとほうじ茶の味と香りが無理なく溶け合い、お互いを引き立て合っている。

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