テーマ : クラフトビール新世代

マウントフジブリューイング(富士宮市)会森隆介さん “背水”で技術習得 切れの良さを追求【しずおかクラフトビール新世代②】

 加和太建設(三島市)のビール醸造部門として2019年3月に産声を上げたマウントフジブリューイング(富士宮市)。醸造責任者の会森隆介さん(42)が醸造を学び始めたのは開業の1年前だった。異例の短期間で醸造法を習得し、今春のビール審査会「ジャパン・グレートビア・アワーズ」(日本地ビール協会主催)で3部門入賞を果たすなど急成長を遂げている。“背水の陣”で身に付けた技術を礎に、新しいビール造りを見通す。

仕込みタンクのビールの状態を確認する会森隆介さん=富士宮市のマウントフジブリューイング
仕込みタンクのビールの状態を確認する会森隆介さん=富士宮市のマウントフジブリューイング
黒鳶富士 (左)と琥珀富士 (右)
黒鳶富士 (左)と琥珀富士 (右)
仕込みタンクのビールの状態を確認する会森隆介さん=富士宮市のマウントフジブリューイング
黒鳶富士 (左)と琥珀富士 (右)

  「ビールについては知識ゼロだった」と3年前を振り返る。県内外の飲食店でソムリエやホール担当を経験し、17年に加和太建設入社。函南町のすし店を任されていたが、18年初頭にビール醸造責任者を言い渡された。「決められた開店日まで約1年しかない。技術を習得できなければこのプロジェクトは終わり。プレッシャーは大きかった」
  4月、研修受け入れを承諾した栃木マイクロブルワリー(宇都宮市)に入った。市内にアパートを借りて醸造所に通い、横須賀貞夫醸造長(54)の一挙手一投足を目に焼き付けた。工程に込められた意味を細かく、しつこく聞き取った。
  醸造用タンクは100リットルの小型サイズで、必然的に仕込み回数が多くなる。「多様なスタイルを実践を通じて学べたのは幸いだった。野菜や果物などさまざまな副原料も使った」
  3カ月の修行を終え、クラフトビールの“聖地”とされる米ポートランドへ。帰国後は金沢ブルワリー(金沢市)で12月まで修行を重ねた。酵母の自家培養や使用する水のpH調整など、さらに学びを深めた。19年1月、自社の醸造所で初仕込み。「手が震えた」。当初は使い慣れなかった設備も、現在は自らの体の一部のように使いこなす。
  富士山本宮浅間大社の近隣という観光客が多く集まる立地を踏まえ、切れが良く飲みやすいビール造りを心掛ける。造り手としての“野心”も捨ててはいない。いずれは自家培養の酵母を使ったビール造りを本格化させたいと考えている。
  ビールという飲料への信頼は厚い。「街と人、人と人をつなげる強い機能がある。自分のビールもその役割を果たせたら」
 (文化生活部・橋爪充)

■琥珀富士と黒鳶富士
  マウントフジブリューイングでは基幹ブランドとして「白」「黒」の2種を打ち出す。「白」はベルジャンウィート酵母を用いたホワイトエールの「琥珀[こはく]富士」。近隣の農家から取り寄せたコリアンダー、オレンジ果汁を加えている。グラスに注ぐとクローブに似た爽やかで華やかな香りが漂い、飲み口は軽快そのもの。醸造所併設のレストランでは食前酒として注文する客も多い。
  「黒」に当たる「黒鳶[とび]富士」は、チョコレートモルトなど4種のモルトの特徴が複雑に現れるスタウト。濃い色をしているが、余韻や重さをあえて抑制し、口当たりが軽くなるよう設計している。

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