ヤングケアラー進路支援 自治体相談窓口に専門員 こども家庭庁配置へ

 大人に代わって日常的に家事や家族の世話を担うヤングケアラーに関する自治体の相談窓口に、こども家庭庁が4月以降、進学や就職の専門支援員を配置する新事業を始めることが18日、同庁への取材で分かった。家庭の状況や本人の考えを聞き、受けられる支援制度も紹介するなどして希望に沿った進路を選べるよう後押しする。

 ヤングケアラーは、世話との両立や経済面の不安から進学をためらったり、転勤の有無などで仕事を選んだりすることがある。国が2021、22年に公表した実態調査結果によると、大学生ケアラーで将来の不安に関し「希望する進路の変更を考えざるを得ない」と答えたのは13・6%。必要とする支援は「進路や就職など将来の相談に乗ってほしい」が28・3%に上った。高校生への調査でも、進路支援を求めた人が17・3%だった。
 調査では、大学3年の6・2%(約16人に1人)、高校2年の4・1%(約24人に1人)が「世話をしている家族がいる」と回答した。
 こども庁は、各自治体が相談窓口を設置するのを推進し、関連費用を補助している。4月以降は、窓口に進路支援の専門員を配置した場合に、人件費などを上乗せする。専門員は、支援団体のメンバーらヤングケアラーに理解が深い人を想定している。
 ヤングケアラー支援を巡っては、18歳や20歳といった年齢で区切らずに、大学生でも高校生でも必要な支援を受けられるよう関連団体などが施策の整備を求めていた。
 こども庁は、ヤングケアラー支援を初めて法制化する子ども・若者育成支援推進法改正案を含む少子化対策関連法案を今国会に提出した。国や自治体の支援対象だと明文化することで、対応の地域格差解消などにつなげる。
 年齢で支援区切らないで 関連団体「大人になっても家族のケア続く」  ヤングケアラーを巡って関連団体は「大人になったら家族のケアが終わるわけではない」として、支援を18歳などの年齢で区切らないよう訴える。子どもから若者、大人へと見守りを途絶えさせないことが重要だ。
 一般社団法人「ヤングケアラー協会」(東京)は昨年3月、進学や就職、転職などに特化したLINE(ライン)相談窓口「ヤングケアラーズキャリア」を開設した。当事者として進学をあきらめたり、就職で苦労したりした経験があるスタッフらが対応している。
 「現在は家族の世話のため派遣社員で働いているが、今後正社員になれるだろうか」など相談内容はさまざまで、目の前の生活に追われて頭の中が十分に整理できていない人も多いという。家庭の状況と自身のキャリアを切り分けて考えることは簡単ではなく、スタッフ相談者が話し合いを重ねながら一緒に将来のプランを設計する。
 元ヤングケアラーで介護離職の経験がある代表理事の宮崎成悟さん(34)は「18歳で対象外となる公的支援も多いが、家族のケアは18歳を過ぎても続く。キャリア支援を含め、伴走しながら支えていく必要がある」と強調する。
 企業側の協力も欠かせない。宮崎さんは、柔軟な働き方が認められつつある子育てとの両立のように「家族のケアをしながらでもその人らしく働けるように理解を広げていきたい」と話す。

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