(SBSラジオ・ゴゴボラケのコーナー「3時のドリル」 2026年5月26日放送)

(川内)今日は清涼飲料水の自動販売機の設置台数が2025年末に195万台と、記録のある過去30年間で初めて200万台を切ったという話です。ピーク時の247万台から約2割減りました。
(山田)何が背景にあるのでしょうか。
(川内)スーパーやドラッグストアなどに比べて割高で、「マイボトル」を持ち歩く人が増えたことなどから、消費者が離れているようです。飲料各社は不採算自販機の撤去を進めていて、それが初の200万台割れという結果になりました。
(山田)そうなんだ。確かに割高感はある。早速リスナーから声が届いています。「以前2台置いてあった所が1台になった」とのこと。
かつては「ドル箱」的存在

(川内)自販機は定価に近い値段で24時間休みなく販売できることから、飲料メーカーにとって長らく「ドル箱」でした。1960年代ごろから経済の高度成長に合わせて普及が進みました。
(山田)買う側にとっても便利だ。
(川内)ワンコインの気軽さも大きく、私自身振り返っても100円で買えなくなったあたりから利用頻度が減ったような気がします。缶コーヒーの苦戦は、コンビニのいれたてのカップコーヒーとの競合、専門店の台頭、喫煙者の減少などの影響が指摘されています。
(山田)昔は1枚で買えましたね。タバコとコーヒーがセットというのは分かる。
(川内)冬の朝の寒い取材現場で、先輩が「飲みな」と温かい缶コーヒーを放ってくれた時はうれしかった。
(山田)その状況、目に浮かぶようです。
設置場所や売る商品の「最適化」
(川内)逆風の中、各社は採算性を高めるため、個々の自販機の設置場所や商品ラインアップの最適化に力を入れています。各販売機から集まった販売時点情報管理(POS)データを分析し、人工知能(AI)なども駆使しています。全国各地に設置した自販機から得られるデータは膨大で、売れた商品や時間帯だけでなく、例えば代金を入れてからボタン押すまでの時間なども分かり、利用者が自販機の前に立った時の「気持ちの分析」につなげています。
(山田)そんなことまでやっているんだ。
(川内)ある社は「スポーツ施設はイメージとは逆に、保護者が待ち時間に飲むホット系飲料が売れる」というような傾向も把握できたとのことです。
(山田)興味深い話ですね。
(川内)キャッシュレス決済では、あらかじめ同意した人の利用について年代や性別を把握し、商品開発などを含め活用している例があります。
自販機を「一つの端末」としてデータ を収集してフィードバックさせるとともに、「一つの店舗」ととらえ1台1台をマネジメントする発想です。補充タイミングを見極め、効率良い巡回スケジュールを組み立てることは、重荷となっている人件費や物流コスト削減のためにも重要です。
(山田)すごいですね。ユニホーム姿で補充するかっこ良さにあこがれたことがあるな。
視線の動きも分析

(川内)自販機の前の利用者の視線を分析することで、売り上げを伸ばした例もあります。
(山田)どういうことですか。
(川内)自社のマーケティング担当や顧客モニターが参加した調査で、眼球の動きを「アイトラッキング」という技術で測定・解析し、飲料業界の常識とされていた「商品サンプルの配列は人気商品を左上に置く」を改め、左下に注力商品を置き、売り上げ増につなげたとのことです。
(山田)具体的に説明してください。
(川内)顧客の視線は左上―右―左下―右という「Z型」に動く「Zの法則」というのがあるそうですが、実際は左下を最初に見ていることが分かりました。自販機に近づく際、足元を意識していることが影響したのではと推測されています。
(山田)「Zの法則」は聞いたことがあります。そこまでやっているとは驚き。
復活の鍵はキャッシュレス
(川内)キャッシュレスは飲料自販機復活の鍵と言え、最近増えてきました。独自の決済アプリを導入し、クレジットカードや電子マネーとひも付けすることでスマホをかざすだけで簡単に買えることを売りにする社もあります。JR系の会社が駅構内などに設置する自販機では交通系ICカードにも対応します。(山田)僕もある社のアプリを入れていて、スタンプがたまると1本もらえるというような特典があります。
(川内)顧客をつなぎとめようというわけですね。
(山田)リスナーからの声を紹介します。「万博では自販機さまさまでした。定価で7本ぐらい飲んだ」「今、100円玉で温もりが買えなくなってしまった」「災害時に無料で取り出せる機能もあるので、減らし過ぎは良くない」など。
(川内)皆さん、いろんな思いがあるようですね。各社の売れ筋商品を1台にまとめた「ミックス自販機」も増えています。
新顔の自販機が続々登場

(川内)注目を集める動きとして、環境に配慮した大気中の二酸化炭素(CO2 )を〝食べる〟自販機の全国的な広がりがあります。
(山田)CO2 を食べる?
(川内)複数の飲料メーカーによる「街中に木を植え、森を作る」という発想の取り組みで、 内部の特殊な吸収剤で集めたCO2は炭酸カルシウムに変化し、コンクリートなどの工業原料として活用できます。
(山田)初めて知りました。
(川内)清涼飲料の自販機が苦戦する一方で、新しい発想の自販機も生まれています。菓子やパン、カップ麺などの軽食は知られていますが、熱海駅には冷凍干物の自販機があります。
公共施設などで紙おむつや生理用品の自販機も増えてきました。厚生労働省は薬剤師からオンラインで説明を受けることなどを条件に、市販薬を自販機で買えるようにする方針を示しています。
(山田)まだまだ広がりそうですね。
(川内)「物語の自販機」というのもあるんですよ。
(山田)物語を売る?
(川内)書籍の取次会社がメーカーと共同開発し、大学キャンパスなどに期間限定で設置しました。実際は無料で、「モチベーションアップ」など何項目かの中から一つ選ぶと、幅8センチのレシート状の感熱紙に500~2500字のテーマに沿った文章が印字されて出てくるとのことです。「本を身近に」との狙いです。
(山田)面白いですね。
自販機は日本の文化
(川内)自販機は日本で独自に発展した文化とも言われています。壊して盗難する被害が少ないことも普及の要因とみられ、自販機の多さは外国人観光客に「安全な日本」の象徴としても受け止められているようです。(山田)先日、外国人の方へのインタビューで自販機の多さに驚いたと話していました。
(川内)災害時には飲料を無償提供できる機能に加え、電光掲示板で避難情報などを発信する自販機もあります。「自販機の明かりが防犯に役立っている」という声もあります。
(山田)自販機の明かりは心強いですね。
(川内)2011年3月の東日本大震災による東京電力福島第1原発の事故で電力不足となった際は、飲料自販機を削減すべきという意見も出ました。しかし、その後、自販機の省電力化も進んでいます。社会インフラとしての役割も含め、これからも進化は続きそうです。
(山田)リスナーから続々と声が届いています。「子どもが赤ちゃんだったころ、おむつやお尻ふきの自販機があったら助かったな」、「くじ付きの自販機で当たった時、迷い過ぎて時間切れになる人が多かった」「過疎化が進む山間部で仕事をしているが、10年前に8台あった自販機が1台になった」など。
(川内)私も山奥に渓流釣りに行った時、自販機を見つけてほっとする時があります。
(山田)苦境からの脱却を目指す飲料自販機の戦略や、無人で販売できるメリットを生かした新しい動きなどが良く分かりました。今日の勉強はこれでおしまい!










































































