【スペース十夢の「山田ケンジ・挿絵と絵画展」】静岡新聞連載小説『頼朝 陰の如く、雷霆の如し』の挿絵に“再会”

静岡県のアートやカルチャーに関するコラム。今回は5月12日に静岡市葵区のスペース十夢で開幕した「山田ケンジ・挿絵と絵画展」を題材に。
(文と写真=論説委員・橋爪充)

2010年2月~2011年4月の静岡新聞夕刊の渥美饒兒さん作『沈黙のレシピエント』、2022年3月~2023年3月の静岡新聞夕刊の秋山香乃さん作『頼朝 陰の如く、雷霆の如し』の挿絵を担当した画家山田ケンジさんの個展。筆者は『頼朝』の連載や、2023年4~6月に駿府博物館(静岡市駿河区)で開かれた個展「挿絵画家 山田ケンジの世界」に深く関わったので、『頼朝』関係の作品一つ一つに感じ入るものがあった。

ミリペンと水彩で描いたケンジさんの作品は、「物語の説明」という挿絵の役割のずっと先を行くクオリティーで、連載中も驚かされたものだった。今回展のように、物語と切り離された形で見ると、その思いが強くなる。今回は全250回から選り抜かれた約30点が展示されているが、モチーフの多様さ、輪郭線と色彩のバランス、光と影の繊細な描き分けなど、高度な技巧が伝わってくる。

個人的には第79話で「石橋山の戦い」の敗残兵を描いた作品が好きだ。今回、「また、出合えた」との思いがこみ上げた。長槍を持った武士が、もう一人に肩を貸す形で立っている。その後ろ姿を捉えた。前方から幾筋かの光が入り、武士たちの背後の水たまりに頼りない影が映っている。

画面は青が基調で、美しいにじみがあちこちにちりばめられている。計算ずくのもの、自然に委ねたもの、どちらか判別がつかないもの。いろいろ入っているが、全体の緊張感はきちんと制御されている。このテンションで250回という途方もない枚数の連載挿絵を仕上げていたことに、改めて頭が下がった

今年3月に亡くなった漫画家つげ義春さんの追悼コーナーもある。かねて敬愛を口にしている。『赤い花』の「その後」を描いた作品(非売)のリリカルなたたずまいに感動。

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■スペース十夢「山田ケンジ・挿絵と絵画展」
住所:静岡市葵区安西1-55-1 
開廊:午前11時~午後5時(入場無料、最終日は午後4時まで)
会期:5月17日(日)まで


静岡県に関係する文化芸術、ポップカルチャーをキュレーション。ショートレビュー、表現者へのインタビューを通じて、アートを巡る対話の糸口をつくります。

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