伊豆半島西海岸の南部に位置する松崎町の「薪火レストラン QUEBICO(クエビコ)」オーナー・松本潤一郎さんに、お店の特徴や自然資源を活かした取り組みについてお話を伺いました。
聞き手はSBSラジオ「鉄崎幹人のWASABI」パーソナリティーの鉄崎幹人、高田愛弓。
鉄崎:国内初の「薪火レストラン」とは、どんなレストランなんですか?松本:うちのレストランはガスを引き込んでいません。自分たちで伊豆の山から切り出した木を使って、熱エネルギーを自給しています。
鉄崎:すごいですね。
高田:「薪火レストラン QUEBICO」は昨年、農林水産省「INACOMEビジネスコンテスト」ファイナルで優秀賞を受賞しました。
松本:そうですね。合わせて、観光庁の「サステナブルな旅アワード」の準大賞も受賞させていただきました。
鉄崎:静岡県文化財団からは「ふじのくに地域づくり創造賞」をもらっていますね。
松本:薪火レストランの他に、「ロッジモンド」という直営の宿でも、自分たちで伐採した木を使って熱供給しています。ウッドボイラーを焚いて、給湯と暖房に使っています。
鉄崎:お店の内装を見ると、天然木を張り合わせて壁にしていますね。
松本:伊豆半島は広葉樹がとても豊富な地域です。枝が広がる広葉樹の特徴を活かすために、あえて不揃いな木を選んで使っています。
伊豆半島の豊富な広葉樹を活用

鉄崎:広葉樹を使うメリットは?
松本:広葉樹は火力が強くて長持ちするので、熾火(おきび)と言って炭のようになった時から安定した火力が得られます。薪火料理には欠かせないんです。
鉄崎:そっか。針葉樹はすぐ火がつくけど、すぐ消えちゃいますね。備長炭は広葉樹(ウバメガシ)ですもんね。
松本:伊豆半島はシラガシやサクラ、クヌギなどの広葉樹がとても豊富なので、活用しています。
自然豊かな松崎町に移住
鉄崎:自然にこだわったレストランや宿を始めようと思ったのはなぜですか?松本:僕は17歳の頃から、ヒマラヤのトレイルを歩く旅に出かけたり、オートバイで南米大陸2万3000キロを1年かけて走ったり、色々な経験をしました。その上で、日本の自然豊かなところに住んでみたいと思って、松崎に来ました。
鉄崎:他にも候補地はあったんですか?
松本:高知県の四万十ですね。自然がバランスよくあります。松崎の方がよりコンパクトで、山にも海にも川にも5分で辿り着けるので、松崎を選びました。
鉄崎:自然遊びは何をやるんですか?
松本:カヤックフィッシングをやったり、マウンテンバイクに乗ったりします。ツアー事業として、松崎を拠点にして展開しています。
山道を再生させたトレイルツアー
高田:どんなツアーがあるんですか?松本:最初に始めたのは、使われていなかった古道を再生させてマウンテンバイクで走る「山伏トレイルツアー」です。13年ほど前に始めました。
元々、広葉樹が豊富で、山で炭を焼くために使われていた山道がありました。昭和30年ごろにガスで煮炊きをするようになって、木炭の需要がなくなり、山に人が入らなくなって、荒れ放題でした。そこに僕たちが手を入れました。
鉄崎:なるほど。松崎は海に面しているから、照葉樹が多いと思うんだよね。照葉樹林って、放っておくとジャングルみたいになりますよね。
松本:おっしゃる通りです。塞がっていた山道を切り開いて、40キロのコースになり、マウンテンバイク愛好家たちが世界中から松崎に来るようになっています。
鉄崎:すごいな、それは。
松本:カヤックフィッシングで釣りに出かけるツアーもやっています。釣れた魚を薪火レストランに持ち込んでいただくと、魚のお腹に伊豆の山で採れた香草を詰めて、丸々一匹焼き上げる豪快な料理を提供できます。
鉄崎:うわあ。めちゃくちゃ美味しいですよね。
松本:はい。松崎は、山の幸と海の幸が手に入るので。
鉄崎:それが松崎の良さなんだな。レストランでは、薪火で焼いたり炙ったりするんですか?
松本:そうですね。「QUEBICO」は、キッチンの中に木質バイオマスボイラーを入れて熱を取り出せる状態にしてあるので、給湯・暖房・調理を全て木質エネルギーだけでまかなっています。
鉄崎:本当にそれはすごいな。
松本:化石燃料を一切消費しない仕組みを作って、年間18トンぐらい二酸化炭素を削減できています。これは、乗用車19台分ぐらいの年間排出量に当たります。この地域の中だけでエネルギー循環できているレストランなんです。
薪火を操る大変さも
鉄崎:薪火ならではの大変さもいっぱいあるでしょう?松本:そうですね。ガスみたいにパチッと火を点けられないので、絶えず火の様子を見ながらコントロールをしていかないといけません。調理とはまた別の、「薪火を操る」技術が必要になります。
鉄崎:なるほど。朝は暖かくなるまでに時間かかかりそうだね。
松本:温水を店内に回して暖房に使っているので、やはり、ちょっとタイムラグはありますね。
鉄崎:日本の山が針葉樹だらけになってしまうと、山に木の実がなくて、熊が町に下りてくるっていう図式があって、熊の問題などにも結びついていると思います。
僕は、日本の山に循環のシステムを作って生まれ変わらせたいなってずっと思っていたんです。松本さんはまさにそれをやっていますね。
松本:適度に木を切ってあげて、どんどん循環させれば、広葉樹を切っても自然林に戻っていきます。それをほったらかしにしていると、動物が里に下りてきてしまいます。
鉄崎:日本の木を使わなくなりすぎちゃったことが、いろんな問題を引き起こしていると思います。
自然資源の魅力で、人を呼び込める
鉄崎:松崎でレストランなどを始めて、よかったなと思うことは?松本:自然の資源にはとてつもないポテンシャルがあります。電車も通ってないちょっと不便な地域ではあるんですが、まだまだ世界から人を呼び込めるような場所にできると感じています。
今、レストランと宿とツアーの3つを回せるようになりました。これができるのが松崎、西伊豆エリアのいいところです。今後は、薪火レストランを日本の各地に作っていきたいなと考えています。
鉄崎:いいですね。
松本:これほど森の資源がある国はそれほど多くないです。各地で森の問題を抱えているので、エネルギーを自給しながら食材を美味しく焼き上げられる「薪火レストラン」が日本の各地にあってもいいなと思っています。
鉄崎:地産地消型のシステムはもっと広がってほしいですね。
高田:松本さん、ありがとうございました。
※2026年1月12日にSBSラジオ「鉄崎幹人のWASABI」で放送したものを編集しています。
今回、お話をうかがったのは……松本潤一郎さん
西伊豆・松崎町で、薪の熱エネルギーを活用したレストラン「QUEBICO」とアクティビティツアーや宿泊事業を運営。「食×森×脱炭素」の循環モデルが評価され、環境省・農水省・観光庁の主要アワードで3冠を達成。地域資源を価値に変えるこの仕組みを、全国各地へ実装することを目指している。株式会社BASE TRES代表。








































































