​【poly_search報告会「見えない祈りをたどって」】旧ヴァンジ彫刻庭園美術館でアーティスト小鷹拓郎さんが静岡県東部でのリサーチを報告

静岡新聞論説委員がお届けするアートやカルチャーに関するコラム。今回は長泉町の旧ヴァンジ彫刻庭園美術館で1月16日に開かれたpoly_search報告会「見えない祈りをたどって」を題材に。

旧ヴァンジ彫刻庭園美術館の庭園は手入れが行き届いていた


静岡県が2024年2月に民間から譲渡された旧ヴァンジ彫刻庭園美術館(長泉町)は今、新しい文化施設として利活用するための準備を進めている。美術館を再建するのではなく、県民が主体的にアートを楽しみ、ジャンルにこだわらない多様な文化に触れる場とする方針。官民で新たに形成する東部・伊豆地域の文化振興ネットワークの拠点としての役割も期待されている。

今回の催しはネットワーク形成準備事業の一つ。「poly_search」と名付けられたプロジェクトで、公募で選ばれたアーティストに県東部の市町の境界を超えた「おもしろい!」を見つけてもらおうという趣旨である。

担当のアーツカウンシルしずおかの鈴木一郎太プログラム・ディレクターによると、60組のアーティストから応募があった。劇作家、教育関係者ら識者5人の選考で選ばれた小鷹拓郎さんは、分断や共存を主題に、記録とフィクションを交差させるモキュメンタリーの手法を用いる都内在住の映像作家。昨秋から断続的に富士市、沼津市、長泉町、裾野市、御殿場市などを巡った。御殿場市の写真家、鈴木竜一朗さんが各所への案内役を務めた。

展示作品を撤去した旧美術館内でリサーチの報告を行う小鷹拓郎さん


報告会で小鷹さんは富士山をはじめとした静岡県東部における「祈り」や「呪い」にまつわる場所が関心対象だったと説明。「祈りと呪いは同じ場所から生まれる表裏一体の関係にある」という認識のもと、御胎内清宏園(御殿場市)、国立駿河療養所(同)、白糸の滝(富士宮市)、人穴富士講遺跡(同)、淡島(沼津市)などを訪ねた際のエピソードを語った。

リサーチから見えた「新たな問い」として「祈りや呪いは誰のものなのか」「見えない力は、誰に都合よく配置されているのか」「私たちの日常は、どこまでそれに支えられているのか」という3項目を挙げ、リサーチで蓄積した映像素材を作品にまとめると予告した。

会場を庭園に移してクロストークを行う(左から)小鷹さん、鈴木竜一朗さん、鈴木一郎太さん


小鷹さんは、リサーチを通じて得た手応えや人的ネットワークを駆使して、1月17日に御殿場市のかつて映画館だった宿泊施設「noctarium/マウント劇場」でイベント「反転した惑星」を行う。アーティストの柴田祐輔さん、山本篤さんを招き、3者の映像作品の鑑賞やトーク、御殿場ツアーを組み合わせた複合型イベント。鈴木竜一朗さんの写真展示もある。小鷹さんは「キャッチコピーは『狂っているのはお前か、俺か-。』。日常の価値観をずらすような作品を制作するアーティストと、地元の人を接続する機会にしたい」と話した。

(は)

<DATA>
■イベント「反転した惑星」
日時:2026年1月17日(土)正午~午後8時
会場:noctarium/マウント劇場(御殿場市新橋1988-17)
出店:あなぐま酒場&ブックス、カレーと催事2i、国立奥多摩美術館、NOTAのおみせ、BOSCHI COFFEEなど
スケジュール:
<第1部>(午後1時~3時)
上映
アフタートーク「ノクタリウムと国立奥多摩映画館~自作映画館について~」
司会=小鷹拓郎 出演=佐塚真啓、勝呂恒介
<第2部>(午後3時半~4時半)
御殿場ツアー 
ガイド=勝呂恒介
<第3部>午後5時~7時)
上映
アフタートーク「反転した世界について」
司会=小鷹拓郎 出演=柴田祐輔、山本篤
チケット:前売2500円、当日3000円 ※入退場自由、小学生以下無料
申し込みはnoctariumのサイト(https://noctarium.peatix.com/)から

 

静岡新聞の論説委員が、静岡県に関係する文化芸術、ポップカルチャーをキュレーション。ショートレビュー、表現者へのインタビューを通じて、アートを巡る対話の糸口をつくります。

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