静岡新聞論説委員がお届けするアート&カルチャーに関するコラム。今回は11月17日まで掛川市内各所で行われている「かけがわ茶エンナーレ2024」を題材に。

2017年にスタートした「かけがわ茶エンナーレ」は、3回目の開催。「Moving~日日是動日~」をテーマに、「茶文化創造」「未来創造」「掛川三城」「美術」「音楽」「舞台芸術」の六つのプロジェクトで構成する。各所に設置された作品を巡った。(は)

掛川城二の丸御殿庭園、掛川城大手門にはそれぞれ、彫刻家石上和弘さん(静岡市)の 代表作「アフターニュートンアップル」と「バナナピール」を設置。縦横のラインがはっきりした城門や御殿建築の柱と、やわらかい曲線が印象に残る二つの作品。木製のオブジェクトという共通点がありながら、硬軟のイメージは実に対照的。

掛川城竹の丸では、デザインスタジオUOによる映像作品「茶の周囲としての急須群 vol 2」。日本家屋の中でリピートされる「生を受け、増殖する急須」の映像は、「茶器のある生活」を強烈に印象づけられる。急須の群舞、宇宙空間を漂う無数の急須など笑いがこみ上げるシーンも。

掛川市役所北側駐車場の「思惟の森・河田砦」では土井健史さんの「砦と境界~chain wall~」。雑木林の中に突如出現する、等間隔にずらりとつるされたプラスチックチェーン。まるで人々を導く「道」や「神域」を示しているよう。一部のチェーンは統制を乱して木々と絡まったりしている。人為的な作業がところどころ「変調」を来しているのが面白い。

掛川城近くの中町公会堂の横の空き地に設置された日高恵理香さん「透かしを掛ける」。風を受けてゆらゆらする緑色のガーゼ状の生地。タイトル通り、生地の向こう側の事物も目に入るが、こちらは揺るぎがない。さながら風景に緑のフィルターをかぶせているようにも見える。

掛川城近くの商店街にある、かつて履物店だった場所で展開する山内啓司さんのインスタレーション「街中の光と音楽の演奏会」掛川市出身のピアニスト佐藤元洋さんの演奏が、ガランとした空間のスクリーンにきらびやかに映し出される。スクリーンの背後には地下足袋の看板広告や大祭のカレンダーなどが、別の映像作品と同居しており、過去と現在の記憶が混じり合う。