掛川西
010 001 001 014=17
000 000 201 06 =9
掛川東
(延長11回タイブレーク)

延長11回に何が?
最終スコアは17―9。延長タイブレークで何が起きたのか―。終盤、掛川東打線は相手のエース古岡都暉投手を捉えていた。
七回に4安打を集めて畳みかけ、九回も同点機を逃さなかった。「完全にこっちの流れだった」と掛川東の鈴木泰介主将は言う。

遠のいた目の前の勝利
延長十回タイブレーク、表の守りを無失点に抑え、「これは勝てると思ってしまった」と鈴木主将。マウンドの市川太陽投手も「舞い上がってしまい、集中力を切らしてしまった」。

ところが、十回裏の攻撃で無死一、二塁から先頭の市川投手がバスターを試みて左飛に終わり、次打者も犠打失敗。続く鈴木主将の中前への打球が相手に好捕され、無得点に終わった。
目の前にあった勝利が再び遠のき、その落胆がチームに重くのしかかった。

鈴木主将は「十回の攻撃に後悔が一番残る」と、真っ先に敗因に挙げた。
落胆、切れた緊張の糸
続く延長十一回、市川投手は「自分の弱さが出た」と先頭に四球を与え、失策絡みで勝ち越しを許すと、張り詰めていた緊張の糸が切れた。
2失点目を喫した時点で、この日先発した浅田選手が再びマウンドに上がったものの相手の攻勢は止まらなかった。

浅田選手は「(最初の登板機会に)真っすぐを張られていると思ったので、(再登板の)最初の打者にチェンジを投げたが、うまく拾われてしまった。2番バッターにも低めのいいスライダーがいったのに合わせられた。技術的に負けたと思う」と振り返る。その後の継投も実らず、失策、暴投が相次ぎ14失点。「悔しいより情けない気持ちだった」と鈴木主将は言う。
食い止めるという気持ち
心の動きがスコアに表れた。試合終了後、世古雄馬監督はベンチの前にナインを集めてこう呼びかけた。
「新チームがスタートしていろいろ課題があった中で、掛川西高校さんにあと一歩というところまでいったことに関してはよく頑張った。ただ、14点取られている間にどこかで食い止める、という気持ちが切れてしまった弱さがあった。もう一つ、踏ん張れる人間になろう」

目標にあと一歩
この日先発し、遊撃の守備にもついた浅田選手、2番手で救援した市川投手と鈴木主将の3人は中学硬式野球の磐田ボーイズ出身。ポテンシャルの高い選手が集まった今年は「東海大会出場」という目標を掲げてきた。「どんな相手でも粘って食らいつく」(鈴木主将)という覚悟で臨み、2回戦で強豪私学の藤枝明誠を撃破。昨夏の覇者、掛川西も土俵際まで追い詰めた。相手が見せた集中力
相手にここぞの集中力と勝利に対する執着心を見せつけられた。
「これだけいい勝負ができていたのだから、そこまでの集中力をタイブレーク入ってからも続けられるように、練習でも甘えをなくしていきたい」と鈴木主将。副将も担う浅田選手は「冬に頑張って体を鍛えて、技術的にも精神的にも向上させて、強豪校を倒したい」と雪辱を誓った。
世古監督は「いつもは悔しいという気持ちが、長続きしないんです。いつもの掛川東で終わるのか、新しい掛川東になるのかは、その悔しさがどれだけ長く続くか、そこは見ていきたいです」と選手の奮起に期待した。
(編集局ニュースセンター・結城啓子)
<取材こぼれ話>
十回までは緊迫感の漂うシーソーゲームとなり、掛川東が粘りの反撃を見せると球場全体が盛り上がりました。
浅田選手は「十回に決めきれず、十一回に負けたことは悔しいけれど、そこまでは後半になるにつれて楽しさが上がっていきました。もともと掛西応援だった人が、自分たちが追い付くことで結構盛り上がったりして、こっちに付いてくれた」と感じていたそうです。それだけに、世古監督は「せっかくここまで2チームで作り上げてきた球場の雰囲気みたいなものを、壊してしまって申し訳ない気持ち。球場の人(観客)たちも楽しんでいたと思う。選手には『あと2回くらいやってもいいぞ』なんて話していたんですけどね」と残念がっていました。
