【富士川楽座で吉澤実さん(御前崎市出身)、柴本幸さんがリコーダー演奏会】ナイチンゲール、ヒバリ、スズメ、カナリア…。鳥に歌声を教える曲とは

静岡新聞論説委員がお届けするアートやカルチャーに関するコラム。今回は富士市の富士川楽座で8月30日に開かれたリコーダー奏者吉澤実さん(御前崎市出身)、柴本幸さんのデュオコンサートを題材に。同施設で開催中の特別企画展「御宿至ー進化する記憶の造形ー」の関連企画。

富士宮市在住の彫刻家御宿至さんと吉澤実さんは県立静岡東高の同窓。それぞれ4期生、5期生という。イタリアと日本を行き来して創作を続ける美術家と、オーストリアで学び演奏活動やNHK教育テレビ「ふえはうたう」講師で人気を集める音楽家が、10代の頃に同じ屋根の下で学んでいたことに驚く。

同じ高校のよしみで演奏を買って出た吉澤さんは、リコーダー奏者の柴本幸さんを富士市に連れてきた。俳優の柴俊夫さんと真野響子さんの娘で、俳優として活躍後、7年間米ロサンゼルスで音楽家として活動してきた。今年から日本に軸足を置くという。

リコーダーという楽器は、やわらかく、親密な音色が特徴だ。2人の高度なテクニックはすぐ分かるが、旋律やハーモニーは風のように空間を吹き抜けていく。あれこれ考え込むいとまがない。音が心地よく耳を通り抜けていく。

コンサート中盤、18世紀初頭の英ロンドンで発行された楽譜集「小鳥愛好家の楽しみ」から数曲演奏した。
実際に鳥に演奏を聞かせ、旋律をまねさせたという。ナイチンゲール、ヒバリ、スズメ、カナリア…。2人のリコーダーの音が、頭の中で鳥の歌声に変換されていく。楽譜集の作者は不詳だが「鳥に気に入ってもらいたい」という気持ちを込めて作曲したのだろうか。人間以外の動物を意識した音楽は、なかなか珍しいのではないか。

観客の中に子どもがいるのを見つけた吉澤さんと柴本さんは、NHK番組「ピタゴラスイッチ」のオープニングテーマ曲をプログラムに急遽さし込んだ。同曲を演奏する栗コーダーカルテットには、浜松市出身の管楽器奏者川口義之さんがいる。「ピタゴラスイッチ」の監修者は沼津市出身の佐藤雅彦さんだ。静岡県出身者の優れた作品、表現が富士市にギュッと集まった瞬間だった。

(は)

<DATA>
■富士川楽座開館25周年記念特別企画展「御宿至ー進化する記憶の造形ー」
会場:道の駅富士川楽座フジヤマギャラリー
住所:富士市岩淵1488-1  
開館:午前10時~午後5時
休館日:なし
観覧料:無料
会期:9月7日(日)まで

静岡新聞の論説委員が、静岡県に関係する文化芸術、ポップカルチャーをキュレーション。ショートレビュー、表現者へのインタビューを通じて、アートを巡る対話の糸口をつくります。

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