「130キロオーバーのストレートを弾き返す自信はあるか」“急造チーム”くふうハヤテジュニアが神宮の杜に刻んだ大きな一歩

第20回を迎えたNPB12球団ジュニアトーナメント KONAMI CUP。この大会に招待チームとして初参加した『くふうハヤテベンチャーズ静岡ジュニア』は、1回戦で歴史的初勝利を挙げるなど、神宮の杜で躍動した。

選手たちは、約150人の応募があったセレクションで選ばれた小学6年生。8月から9月にかけて行われたセレクションから大会まで約4か月の間、静岡県内外から集まった選手たちは、強豪ぞろいの大会で勝ち抜くべく練習に汗を流した。

小学生時代、この大会を経験したプロ野球選手も多い、いわば「夢への第一関門」。したがって、レベルは非常に高い。9月中盤に行われたセレクションの最終面談時、チームの編成に携わる池田省吾球団社長から候補選手に向けて、こんな質問を投げかけていた。

「130キロオーバーのストレートを弾き返す自信はありますか?」

急造チームでも「やるべきことをやり切ることができればいい勝負ができる」

各球団に集う選手たちは、その地方を代表するような選手たち。レベル感で言えば、実力のある中学生チームと対戦するようなものだ。質問を受けた選手の中には、不安げな表情に変わる者も、笑顔で待ち遠しいという気持ちを全面に表す者も半々くらいでいたのが非常に印象的だった。

10月からチームは本格始動。毎週末の練習はもちろん、10月後半頃からは練習試合が、ほぼ毎週のように組まれていた。しかも、相手は地元の中学生チームをはじめ、スワローズJr.やジャイアンツJr.といった決勝トーナメントに進めば対戦するであろう12球団のジュニアチーム。加えてほとんどの日程で、ダブルヘッダーが組まれた。

当然のことながら、野球はチームスポーツであり、攻撃も守備もチーム内の連携が勝敗を決める上で非常に重要なポイントとなる。くふうハヤテJr.はこの『12球団ジュニアトーナメント』に招待されたことから結成された急造チームであるため、一刻も早い試合感とチームワークの向上が急務だった。

それでも、大会直前での取材時には、多くの関係者が手応えを感じていた。元日本ハムやオリックスでプレーし、現在はトップチームの投手コーチを務める中村勝監督は「(勝ち進む手応えは)大いにあります。自分たちがやるべきことを当たり前のようにやり切ることができれば、いい勝負ができるチームです」と自信を口にして、背番号1を背負う桑折海聖選手は「家族みたいな感じでみんな仲が良い」とチームを表しつつ、「うまい子が集まっているから、勝てると思う」と胸を張った。

「大きい球場で緊張したが緊張感の中でピッチングをできたのはよかった」

迎えた12月26日の大会初日。舞台は東京ヤクルトスワローズの本拠地・神宮球場だ。記念すべき初戦の対戦相手は、同じく招待チーム・独立リーグのルートインBCリーグJr.。くふうハヤテJr.は、3回に3点を許すが、4回裏、百瀬壮汰選手・桑折選手・後藤大和選手の3連続適時打で4点を挙げて、逆転に成功。さらに5回裏には、野田一心選手の犠飛で追加点を挙げて、5-4で同大会初出場初勝利を飾った。まさに快挙だった。

<桑折海聖選手>
「プロ野球の試合が行われるような大きい球場で投げたことがなかったので緊張しましたが、そんな緊張感の中であのピッチングをできたのはよかったと思います」

<杉山滉選手>
「最終回で追いつかれそうになってドキドキした分、今日の勝利はいつもよりうれしかったです。(ヒット2本に対して)あまり調子はよくなかったけれど、こういう大きな舞台で打ててよかったと思うし、きのうたくさん素振りをしておいて良かった」

<福田有 キャプテン>
「いつもよりみんな盛り上がっていたし、声も出ていて良い感じだなと思いました。将来は大谷翔平選手のようなメジャーリーガーになりたいです」

翌27日は独立リーグの四国アイランドリーグplusJr.と対戦。しかし、この日は相手先発・堀川緒夏投手の緩急をつける投球術に打線が翻弄され、5回2死まで1本のヒットも出なかった。2死1塁から後藤大和選手がチーム初安打を放ち、チャンスを広げたがあと一本が出ず。最終回2死、最後の打者となった福田キャプテンの懸命のヘッドスライディングも届かず、0-2の完封負け。約4か月にわたる、静岡県を代表する野球少年たちの挑戦が幕を閉じた。

惜しくも決勝トーナメントに進み、12球団のジュニアチームと対戦することはできなかったが、ほとんど全員が静岡のチームで活動してきた地元の選手で結成されたチームが、歴史ある大会で価値ある1勝を挙げたことは、今後に向けて大きな財産となるだろう。

大会を終えて、中村勝監督はこのように振り返った。

「早い段階で全国の舞台を知ることができる機会があって、高いレベルの野球を体感できるのは大きいと思います。間違いなく疲労感だったり、緊張感という部分が普段の試合とは変わってくると思うので、その辺の経験であったりを子どもたちの成長につなげられるに違いないので、よい大会でした。この経験が静岡の子どもたちの野球に何か与えてくれることを信じています」

くふうハヤテJr.での活動を経験した選手たちの中から、今後、甲子園で、そして、プロの舞台で活躍するような選手は出てくるのだろうか。彼らのプレーにも引き続き注目していきたい。

「あしたを“ちょっと”幸せに ヒントはきょうのニュースから」をコンセプトに、静岡県内でその日起きた出来事を詳しく、わかりやすく、そして、丁寧にお伝えするニュース番組です。月〜金18:15OA

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