政治から災害まで激動の1年だった2024年。川勝平太前知事の突然の辞職で大きく変化した静岡県政1年を振り返ります。リニア問題は、鈴木康友知事の就任によって前進しましたが、強調する「スピード感」が懸念される一幕もありました。
<静岡県 川勝平太前知事>
「6月議会をもって職を辞そうと思っております」
新年度の幕開けとともに激震が走った川勝前知事の突然の辞任表明。辞表が提出された5日後、知事選への出馬を表明したのが、前浜松市長の鈴木康友氏でした。
<鈴木康友氏>
「もう一度原点に立ち戻り『やります!』の精神でこれからの県政の舵取りをしていきたい」
過去最多6人による激戦を制し、第21代静岡県知事に就任しました。
<静岡県 鈴木康友知事>
「全容を把握した後、スピーディーに、事に当たっていきたい」
就任会見で「スピード感」を強調した鈴木知事。県政最大の課題リニア問題については。
「特に流域市町の皆さんの不安がある程度解消されるのが必要かなと思うし、最後はそうはいってもどこかで政治的な決断も必要かなと思う」(鈴木知事)
「政治的な決断」に向け、早速、スピード感のある対応を示します。就任から1週間後、国土交通大臣と面会しました。
<斉藤鉄夫国土交通大臣(当時)>
「大臣になって2年半経ちますが、静岡県知事にこの部屋に来ていただいたのは初めてでございます」
その翌日には、JR東海の丹羽俊介社長とトップ会談。さらに7月には、静岡工区を初めて視察します。しかし、鈴木知事が強調する「スピード感」を巡っては…
<島田市 染谷絹代市長>
「あまりにスピード感があって流域はついていけないし、あまりに急激な変化をどう理解したらいいのかわからないところもあると思う。丁寧な説明をお願いした」
静岡県はこれまで、山梨県から静岡県に向かって進められているボーリング調査について、県境300メートル手前で調査をやめるよう求めていましたが、鈴木知事は就任後、1か月も経たないうちに調査を容認。大井川流域のトップは、川勝前知事とのギャップに戸惑いました。
こうした中、9月には、静岡県内のボーリング調査も容認され、膠着していたリニア問題が動き出しました。
一方で、県議会との距離感は。
「今回の人事案件に一定の影響が出ると判断したことから、慎重な取り扱いが必要だということで、議会への提出を見送った」(鈴木知事)
鈴木知事は9月議会で、副知事人事案を提出する方針でしたが一転して見送ったのです。事前説明のなかった鈴木知事に対し、自民会派の一部が反発し、釘を刺した形となりました。
15年ぶりにリーダーが代わった静岡県。県議会の各会派は、鈴木県政1年目をどう評価するのでしょうか。
<自民改革会議 相坂摂治代表>
「70点。(川勝前知事が)いろいろなところで発言が強すぎて軋轢が生じていたものを解消して、再構築しようという努力を大変なさっていたと思う」
<ふじのくに県民クラブ 田口章会長>
「点数をつける様な立場ではないが、どうしてもということで75点。よくスピード感ということをおっしゃるが、民間企業の感覚の経営が非常に地に足が着いているなと思っている」
<公明党県議団 蓮池章平団長>
「70点とつけさせていただいた。リニアの問題については山梨県知事と現場に行って、国との連携も今までの経験や人脈を生かして、しっかり連携を取られているなということは非常に感じる」
<LIVEしずおか 井手春希キャスター>
まさに激動の県政1年と言えますが、鈴木知事に対しては3会派とも一定の評価をしているようですね
<静岡県政担当 植田麻瑚記者>
特に自民は川勝前知事との関係性を考えるとかなり高い評価をしたように感じます。そこで、2年目に向けた課題も聞いてみました。
まず、自民改革会議の相坂代表は、▼1つ目にビジョンの見える化、▼2つ目に県全体の鈴木知事、▼3つ目にミクロよりマクロの視点を挙げました。
まだ、どうしても「西部の鈴木康友」というイメージが残っているので、政策については県全体に与える効果を示してほしいということでした。
そして、ふじのくに県民クラブの田口会長は、来年度の当初予算編成と新総合計画を挙げました。「鈴木知事は総合計画について、『基本構想』ではなく、『経営方針』という言葉を使っていて、康友イズムが入っている。歳出をどう減らしていくか期待したい」と話しました。
また、公明党県議団の蓮池団長も「財政の健全化」を挙げたうえで、「幸福度日本一の静岡県を作るために市や町の課題を認識する必要がある。それがまだ不足している印象」と述べました。
知事選の時に繰り返した「やります!」の精神で、県政をどのように舵取りしていくのか注目です。