
廃業してから20年以上が経過する静岡県下田市のホテルの行政代執行が2025年8月20日に始まりました。廃墟となった宿泊施設は、倒壊のリスクや景観への影響も指摘され行政は対応が迫られています。
<下田支局 柴田寛人記者>
「長年、周辺住民に被害を与えてきた旧下田富士屋ホテルの行政代執行が始まりました」
下田港にほど近い旧下田富士屋ホテル。2001年に廃業しましたが、その後も放置されたままです。「心霊スポット」として知られ肝試しに訪れる人もいたということです。2023年1月には、不審火とみられる火災が発生し、周辺住民への不安につながっていました。
<下田市建設課 佐々木豊仁課長>
「特定空き家に対し、緊急代執行による木造部分の撤去を開始することを宣言します。それでは作業を開始してください」
20日から始まった行政代執行。業者が周辺の草刈りや伐採を行い、さらに重機を入れて、積み重なったがれきを崩し、状況を確認しました。
<佐々木課長>
「これまで(旧ホテルの)所有者の方に再三にわたって、建物の除却をお願いしたところなんですけど、改善がみられなかったことから行政代執行に踏み切ったところです」
崩壊した木造部分の撤去は、9月中に終了する予定で、約600万円の費用は所有者に請求するということです。建物のがれきなどが飛んでくるなどの被害を受けていた付近の住民は…。
<被害家屋の住人>
Q.夜はゆっくり寝られそうですか?
「そうですね、これからはもう、今までは風が吹いても雨が降っても、どうだろう、どうだろうってビクビクしてたんですけど、これからは安心して眠れると思うんですけど。本当に感謝しかないです」
市内の「廃墟ホテル」は、ここだけではありません。高台にあるこのホテルは、下田市が取得済みで公園として整備する方針ですが、解体費が9億円に膨らむ見通しで、解体に踏み切れない状況です。
<下田市 松木正一郎市長>
「危険性に対しては行政が踏み込むというのがかなり可能なんですけど、景観だけだと、なかなか私の権利というものに対して、踏み込むことができないとなってます。従って、所有者さんの方に自発的な改善をお願いするということですね」
以前のにぎわいを失いつつある観光地に残った廃墟ホテル。代執行には簡単にも乗り出せず、行政はジレンマを抱えています。