
「党の人気に便乗したと思われるかもしれないが、以前から検討していた」。昨年12月に国民に入党した杉森賢二長泉町議は、3年ほど前から榛葉賀津也幹事長(参院静岡選挙区)から勧誘されていたと明かす。かつて自民県連青年局長を務めた経歴もあるが、国民が唱える手取りを増やす政策に共感したとし、「今の自民には実行できない」と主張する。近隣市町の選挙に国民から出馬したいという相談も複数受けているとし、野党が手薄な県東部で勢力を広げる考えだ。
県西部では2月に北野谷富子浜松市議が入党し、次期衆院選に静岡7区からの出馬を表明。3月には森田賢児同市議も加わった。県中部でも同月の静岡市議選で葵、清水両選挙区の国民公認の新人2人が断トツの得票数でそれぞれトップ当選を果たした。
両政令市で立て続けに現職市議が誕生した一方、20日投開票の県内6市町議選に出馬予定の国民公認候補は森町の現職1人にとどまる。県連関係者は「地縁や血縁を頼る選挙戦略は薄れてきているが、幅広い層から支持を得るために政党色を出さない人はまだ多い」とし、国民からの出馬を見送った人もいると明かす。
国民は昨年の衆院選で議席数を伸ばしたが、比例代表の候補者が足りず、東海、北関東ブロックで計3議席を他党に譲った。静岡市議選では駿河区選挙区に擁立できなかった。清水唯史県連幹事長(島田市議)は「自民が落ち目とはいっても組織力は健在。地方議員だけでなく、党員・サポーターも増やしていかなければいけない」と課題を口にした。一方、自民の地方議員からは「国民への“風”が、いつまで続くかは分からない」と冷ややかな声も聞かれる。