渡辺皐(藤枝東3年、セレッソ大阪西出身)
決勝トーナメント1回戦のオイスカ浜松国際戦で見せたミドルシュートは圧巻だった。前半30分、右サイドでパスを受けると、中にカットインしてすかさず得意の左足を振り抜いた。鋭く曲がって落ちたボールはゴール前の密集地帯を越え、バーをたたいてネットを揺らした。
「巻いて落とすキックは得意。GKが前に出てくるのは分かっていたので、遠くでも振り抜こうとイメージしていた」
名門の10番を背負うトップ下。左足の精度に絶対の自信を持つ。鷲巣延圭監督は「まだまだプレーに波がある」と注文を付けつつ、「彼は一発で勝負を決めることができる。面白いですよ」とにやり。
レフティーの進化
中学時代は日本サッカー協会のエリートプログラムに参加したことも。「藤枝東の伝統と、つなぐサッカー」に好印象を抱き、セレッソ大阪西からやって来た。昨年の選手権予選は主力としてチームの決勝進出に貢献したが、準決勝から決勝までの間のトレーニングで故障。夢舞台を懸けた大一番のピッチに立つことができず、チームは浜松開誠館に敗れた。自分の不甲斐なさと、先輩への申し訳ない気持ちがあふれ、涙に暮れたという。
現在は当たり負けしない体をつくろうと、フィジカル強化に励む。5月、関東地区の大学の練習会に参加した時に線の細さを自覚したという。胸、腕、下半身と毎日部位を変えて集中的に筋トレを行い、体が一回り大きくなった。
「今年はリベンジしたい。自分が得点に絡んで、チームを勝たせたい」。名門への期待と重圧を背負う覚悟はできている。