沼津東高サッカー部の増山大介監督にインタビュー!!静岡県内有数の進学校が高校選手権県大会で初の決勝トーナメント進出!


全国高校サッカー選手権静岡県大会で、県内トップレベルの進学実績を誇る沼津東高が創部76年目で初の決勝トーナメント進出を果たしました。3年生は大学受験に専念するため、すでに引退。1、2年生だけの若いチームが快進撃を披露しました。母校を率いて5年目の増山大介監督(50)にインタビューすると、驚きの指導法を語ってくれました。

〈増山大介監督・プロフィール〉
沼津東高ー東京学芸大から教員の道に。農業経営高、下田北高、沼津工業高などを経て、4年前に母校に赴任。選手時代のポジションはゴールキーパー。教員になった後も社会人リーグの芙蓉クラブでプレーし、国体成年男子の県代表として2001年宮城国体の優勝に貢献した。2002年、29歳の時に「現職教員派遣制度」を利用し、青年海外協力隊の体育指導者として2年間パラグアイに。現地の教員養成に尽力しつつ、パラナ州1部リーグのチームなどでプレーした。

「どう戦うかは選手たちが決める」

ー1次トーナメントを振り返ってください。
「選手たちがしっかり自分たちの足元を見てやったことがうまく結果に表れたと思います。シード校を相手に、選手たちはブロックを作り、相手にボールを持たせて、パスの出どころをどう抑えるか、どこで奪うかと、狙いを持ってやっていました」

ー収穫と課題は?
「収穫は結果ですね。自分たちが考えた対応策が結果に結びついたことで、自信になったところはあると思います。まだ1、2年生なので課題はいっぱいあります。この大会で勝ち進んでいけば、引いて守る展開のゲームになるってことを体験できた。ボールを握るサッカーをしたいというビジョンがあったとしても、それができない状況になる。そこで感じたものが彼らのベースになる。自分たちがこれから進んでいく方向が決まっていくんだろうと思います」

ースカウティングはやっているんですか?
「なかなか情報が得られない対戦相手については、私たち教員も他校の先生とかに傾向や特徴を聞くことはありますが、最終的にどう戦うかは選手たちが決めます。選手たちが考えた戦術を否定するのではなく、自分はその戦術にさらにプラスになることを伝えることができれば建設的かなと思っています」

ー練習メニューや戦術を選手たちで決めさせています。いつ頃からですか?
「この学校にきて、2年ぐらい経ってからです。8月までの鍛錬期は『こういう練習をちょっとやりたいんだけど、今日やってもいいか?』と私が選手たちにお願いすることもあります。導入するかどうかは、選手たち次第。そのメニューを引き続きやってくれる時もあれば、1回限りのときもあります(笑)。

私たちとしても、生徒と一緒にメニューを作っていきたいので、なぜこの練習をやるのか、理解しやすい練習を考えることが重要になります。私も勉強しなきゃいけないと思っています。今は走りの練習やフィジカルトレーニングはやっていません。みんなで共有する、この2時間を大事にしようと。個人でできる練習は全体ではやらないです」

ー選手主体にした効果は感じていますか?
「子どもたち主体でやることで、いろんな成長の効果があると感じています。私達が強制するのではなく、生徒たちでより良い環境を作っていくことが大事だと思っています。進学校では、部活動って勉強の息抜きみたいな感じもあるんですよね。とんがっている生徒も多いので、それをサッカーの方に向けていったらいいなと考えました。選手たちは好きなことをやっているんですから、追求できるはずだと思っています」

医学部や旧帝大を目指す選手も

ー戦術やスタメンまで選手に決めさせて、チームの和は乱れませんか?
「今の子どもたちは基本的に不合理なことが嫌いなので、1、2年生同士でも何でも言い合える。戦術についても『試合中に困ってもベンチを見るな、自分たちで向き合って考えろ』と伝えています。ベンチの指示どうこうじゃなくて、自分たちで顔を突き合わせるサッカーが一番たくましいのでは」

ー入学試験でサッカーの学校裁量枠はあるんですか?
「あるにはありますが、他の部活動との兼ね合いもあり、3〜5人ぐらいです。学力の基準も高いですし、サッカーだけで入学できるわけではない。個人的にはサッカー部だけが強くなるよりは、沼津東高の部活動全体が盛んになった方がいいと思います。進学校とはいえ、この学校は勉強だけじゃないという部分も大切かなと思っています」

ー選手たちは学業の成績も良いですか?
「医学部希望の子もいるし、東京大など旧帝大を目指す子もいます。冗談半分ですが、いつかアスルクラロ沼津の社長になって、君たちが東部地区のサッカーを支えろって言っています(笑)」

ー進学校、しかも1、2年生だけのチーム。他校の大きな希望になったと思います。
「たまたま今回はうちが結果を出させてもらいましたが、東部地区の公立校でもやればできるというところを感じてくれれば嬉しいですよね。サッカーは中部地区や西部地区がすべてではないし、僕らも東部地区のチームと対戦しても圧勝できるようなチームはありません。サッカーってやっぱり技術や戦術だけではない。心の部分もすごく大事ですから。

ブランドに憧れて中部や西部の強豪校に行く子たちも多くなってきた中で、地元を愛して、ここに残って頑張るってことに大きな意味があると思います。そういう子はすごく大事にしたいし、やっぱり東部の誇りみたいなものを持ってほしいと思っています」

勉強も部活動も一流を目指せ

ーパラグアイでの2年間について聞かせてください。
「プロの2部リーグのセレクションを受けたり、いろいろなチャレンジをしました。結局パラナ州1部リーグのチームと契約して2試合ぐらい出場した後、カップ戦に臨む別のチームにレンタル移籍したり。

パラグアイに2年間いて、日本人の“謝る文化”について考えたことがあります。日本人って何か言われたら、すぐに謝る。でも、海外では『簡単に謝っちゃ駄目』と言われるじゃないですか。でも“謝る文化”って、自分にベクトルを持ってくるということ。そこから成長ができる」

ー指導の中で、いつも選手たちに伝えていることはありますか?
「『日常以外は出ないので、日常を大切にしよう』ということ。あとは、せっかくプライドを持ってこの学校に来てるのだから、勉強も部活も一流を目指そうと。私はこの沼津東高の出身ですし、『進学校なんだから勉強だけやってればいい』みたいなことを言われるのは屈辱です(笑)。『君たちがサッカー強かったら、付け入る隙がないよ。無敵だよ。それぐらいの気持ちでやりなさい』と生徒には伝えています」

ー大学生とよく練習試合をしているとか。
「今夏は進路指導を兼ねて東大や東北大と練習試合をしました。静岡大もいつも協力してもらっています。東大のサッカー部は学生主体でやっていて、スタッフが多い。組織づくりや会社づくりの参考になります。

サッカー特待生でもない東大や東北大の学生が、なぜこんなに自分の時間を使ってサッカーをやってるのか。生徒たちは何かを感じてくれると思います。高校まででサッカーをやめるのではなく、生徒たちにはずっとサッカーを続けてほしい」

「私たちを驚かせてほしい」

ー決勝トーナメントへの意気込みを。
「どうせ相手は第1シードなので。ボコボコにやられる可能性は大きいんですけど、引いて守る戦い方もある。私が決めることではなく選手たちが決めることですが、そういう狙いになるんじゃないかなと想像します」

ー客観的にみれば、中部地区や西部地区の伝統校を次々に破って全国に行くのは相当難しい。中長期的な目標は?
「静岡ではベスト8を目指すにしても、プリンスリーグ所属の伝統校や県Aリーグのチームを破らなきゃいけない。力や技で押し切ることはできないと思うんですよ。でも、そういうことをちゃんと理解した上で、結果にこだわり、選手がどういう工夫をするのか。工夫のレベルをどこまで上げていけるか。そうして、いずれは痛快なゲームを見てみたいですね。僕らとしてもサプライズみたいなものを感じることができたら面白いなって思います」

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