全国高校サッカー選手権静岡県大会で、県内トップレベルの進学実績を誇る沼津東高が創部76年目で初の決勝トーナメント進出を果たしました。1次トーナメントでは、3回戦で第4シード科学技術高をPK戦の末に、4回戦で第5シードの静清高を3−1で撃破しました。3年生は大学受験に専念するため、すでに引退しています。1、2年生33人の若いチームが見せる快進撃の裏には何があるのか、キーマンのMF山﨑優輝選手とチーム得点王の斉藤有哉選手に話を聞きました。
〈MF山﨑優輝(2年・FCヴァーデュア三島出身)〉
ー沼津東は戦術や先発メンバーを選手たちで決めていると聞きました。誰が、どうやって決めているんですか。
「まず自分が戦術案を考えて、他の戦術部の2年生3人と、増山先生(監督)、キャプテン、副キャプテンの6人で話し合います。そこでOKとなれば、週始めの練習前に全体共有しています」
ー戦術部なんてあるんですね。戦術部はほかにどんなことをやってるんですか?
「基本的には、普段の練習メニューを考えたり、試合のスタメンを考えたり、戦術を考えたりしています」
ー戦術部のほかに、どんなグループがあるんですか?
「環境部と広報部、フィジカル部、メディカル部、メンタル部があります。部員33人はどれかのグループに入っています」
ー山﨑君はどうやって戦術を考えているんですか?
「県東部のリーグ戦の場合は、部員の中学の頃のチームメートが各高校に散らばっているので、対戦相手にどんな特徴があるか聞いてもらっています。相手チームの特徴を踏まえて、自分たちの強みが生かせるところと、相手の強みに対してどう対策するかを考えています。それを踏まえた上で、その週の練習メニューを決めています」
ー1次トーナメント4回戦の静清戦はどんな分析をしたんですか?
「静清は右サイドの選手がすごい足が速いという情報があったので、その週の始めに完全にブロックを敷いて守るという戦術を決めました。練習はもうずっとブロックを敷いて、低めの位置からディフェンスを整備してカウンターっていう練習をしてました」
ーちなみに3回戦の科学技術戦は?
「基本的には静清戦と同じようにブロックを敷きましたが、相手の中盤の選手がボールをさばけるので、真ん中の選手を抑えるために、自分たちのシステムを4−2−1−3から4−1−2−3に変えました。
普段は自分と依田泰暉君でダブルボランチを組んでいますが、科学技術戦は依田君のワンボランチに。自分が1列前に出て、自分たち2インサイドハーフと相手のダブルボランチがマンツーマンになるようにしました。相手のダブルボランチを抑えて、依田君がカバーしてっていうような戦術を考えました。それがうまくいって無失点で抑えられたと思います」
ーシードを倒した時は“ドン引き”的な感じだったんですか?
「そうですね。ずっと自分たちは引いて引いて。相手のセンターバックがボールを持って、押し上げてくるんですけど、ハーフラインのところまでは全くプレッシャーをかけずに引き込んで引き込んで。
そうすると、半分のコートの中に相手キーパー以外の21人がいるので、スペースがなくなって詰まる。相手の足の速い選手も封じることができますし、自分たちも味方のフォローができるので、そこでボールを取り切る。相手の帰陣が遅いという情報もあったので、カウンターは一気に。ドン引きしていた分、自分たちはそんなに体力を使っていなかったので、静清戦では点を取ることができたんじゃないかなと思います」
ー先発メンバーはどうやって決めてるんですか?
「基本的には、前の試合のメンバーを軸に考えていますが、その週の練習ですごいいいプレーをしてる選手がいれば変更します」
ー練習で良いプレーをしたかどうかは誰が決めるの?
「自分です」
ー責任重大では。チームメートから文句は言われない?
「いや、みんなちゃんと聞いてくれます。スタメンについては、自分が案を出して、キャプテンと副キャプテンに確認して、OKサインが出たら試合直前のミーティングで伝えます」
ー増山監督はそこで何も言わないの?
「そうですね、特には」
ー戦術部として今年のチームの特徴は?
「科学技術や静清などのシード校には個々の力では勝てませんが、試合の中で感じたことをそのまま戦術に落とし込むことができるのが今年のチームの強みだと思います。誰も文句を言わずに付いてきてくれて、決勝トーナメント進出の要因の一つかなと思います。正直な話、自分は科学技術や静清には勝てないかもって思ってたところもあるんですけど、自分が考えてた戦術以上のことを11人でできました。練習したことをやり切って、約束事とかを徹底して、守り切った」
ー決勝トーナメントへの意気込みを。
「どこと当たっても自分たちより格上だし、下馬評でも相手が上。自分たちは対策されないと思うし、対策という部分では自分たちの方ができると思う。そういう部分で上回って、勝ちたいなと思います」
〈FW斉藤有哉(1年・アスルクラロ沼津出身)〉
ー4試合7得点した1次トーナメントを振り返ってください。
「得点で勝利に貢献できたのは良かったと思います。科学技術戦はチャンスは作れたけれど、決められなかったので、(静清戦でハットトリックして)ホッとしたところはあります」
ー自分の持ち味は?
「タイミングを見て背後に抜け出したり、相手の隙を狙ってプレスをかけたりするところのスピードですかね。足元?うーん、まあまあです(笑)」
ー自分たちで戦術や先発メンバーを決めることについて、どう思いますか。
「みんなで意見を出して、みんなで決めているので、そこは文句なんて言えないし。結局、自分ではそれ以上の良い戦術も思いつかないですし、自分は自由にプレーさせてもらっています(笑)。毎回敵に合わせて戦術を変えて、それを1週間で完成させるのは難しいけれど、結構うまくやれてるんじゃないかなと。スタメンも、その週で良かった人を使うのがベストなんじゃないかなと思います」
ーアスルクラロ沼津ジュニアユースから、なぜ沼津東高に?
「中学3年の早い段階から、勉強もサッカーも頑張りたくて沼津東に行こうと決めていました。サッカー部の体験をさせてもらった時に、全部自分たちでやってるし、自立しているチームだと感じました。先輩もみんなすごく優しくて。すごい悩みましたが、プロの道というよりは、大学でサッカーを続けられたらいいなと思いました」
ーこれまでトレセンの経験は?
「小学校のときに県東部トレセンに入ってましたが、県トレセンには落ちました。中学ではたっけんカップの東部選抜に選ばれたことがあります」
ー決勝トーナメントに向けて意気込みを。
「相手は第1シードになってくるんで、自分がどこまで通用するか楽しみではあります。昔から静岡学園や藤枝東が出ている選手権の決勝をテレビで見ていたので、ちょっと不安なところはありますけど、貴重な経験を楽しみたいと思います」