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魅力いっぱい 沼津御用邸記念公園

 国の名勝地に指定されている沼津御用邸記念公園。7月には棋聖戦第3局もこの地で開かれ、藤井聡太棋聖がタイトルを初防衛し、九段に昇段しました。昨年7月に開園50周年を迎え、新たにレストランもオープンした沼津御用邸記念公園の魅力に迫ります。
 〈静岡新聞社編集局TEAM NEXT・寺田将人〉

藤井聡太棋聖も食べた「将棋メシ」提供 公園内にレストラン開業

 7月に棋聖戦第3局が開かれた沼津市の沼津御用邸記念公園内に、洋食レストラン「大正ロマン食堂・娯洋亭-GOYOTEI」がこのほど、オープンした。タイトルを史上最年少で初防衛し、九段に昇段した藤井聡太棋聖と渡辺明名人が食べた「将棋メシ」を提供する。

藤井棋聖が棋聖戦当日に注文した「富士山キーマカレー」(左)と「水神餅」=沼津市の沼津御用邸記念公園
藤井棋聖が棋聖戦当日に注文した「富士山キーマカレー」(左)と「水神餅」=沼津市の沼津御用邸記念公園
 指定管理者の加和太建設(三島市)が、1893年に建てられた木造官舎を改装した。藤井棋聖は地場野菜とひき肉を溶岩に見立て、駿河湾越しの富士山を表現した「富士山キーマカレー」(1200円)を、渡辺名人はオムライス(同)をそれぞれ注文した。
 藤井棋聖がおやつで食べた愛鷹水神社(長泉町)の湧き水を使ったオリジナル和菓子「水神餅」も提供する。売店でも1箱2個入り1500円で販売している。
 千円以上食事をすると、藤井棋聖が使用した直筆扇子と直筆メニュー表を東付属邸で観覧できる。轟敏男所長は「今後は棋聖戦ゆかりの地にできれば」と意気込んだ。同園は7~15日、21、22、28、29日に開園時間を午後6時まで延長する。
〈2021.08.05 あなたの静岡新聞〉

市民の手で庭園きれいに リバイバルプロジェクト始動

指定管理者に選定され、庭園の清掃活動を行う河田社長(右)ら=沼津市の沼津御用邸記念公園
指定管理者に選定され、庭園の清掃活動を行う河田社長(右)ら=沼津市の沼津御用邸記念公園
 本年度から沼津市下香貫島郷の沼津御用邸記念公園の指定管理者になった加和太建設(三島市、河田亮一社長)が、ボランティアらを積極的に受け入れる「沼津御用邸リバイバルプロジェクト」に乗り出した。第1弾として27日、地元住民らと同公園で清掃活動を行った。市民による庭園の維持管理に向け、年4回程度の清掃活動の実施を目指す。
  同プロジェクトは、敷地面積15・6ヘクタールに及ぶ広大な園内の美化や環境保全の一部を市民に協力してもらい、同公園に対する愛着を育んでもらう。市民参画を進めることで、多額の予算が必要な庭園の維持管理費の低減につなげる。
  清掃活動には、近隣自治会やぬまづ観光ボランティア協会、サッカーJ3アスルクラロ沼津などの関係者ら計約100人が参加。高峯聡一郎副市長も駆け付け、西付属邸の庭園を中心に雑草を抜き取ったり、落ち葉を拾い集めたりした。
  河田社長は「これまで関心のなかった市民にも協力の輪を広げ、庭園の美しさを再生させたい。御用邸の歴史に詳しい地域の人々の知見を得ながら、魅力ある公園を運営できれば」と話した。
 〈2021.04.28 静岡新聞朝刊〉

耐震化やバリアフリー向け整備へ 2020年には開園50周年

 国の名勝地に指定されている沼津御用邸記念公園(沼津市下香貫)が7月(※2020年7月)に開園50周年を迎えた。同市は文化財としての価値を市民に伝え、次世代に継承するため、2020年度、新たな整備事業に着手した。15年ほどをかけて、御用邸時代の姿を残す建築物の耐震化やバリアフリー化、太平洋戦争で焼失した旧本邸の活用などに取り組んでいく。

開園50周年を迎えた沼津御用邸記念公園。西付属邸は内部を見学でき、皇族の暮らしぶりを知ることができる=沼津市
開園50周年を迎えた沼津御用邸記念公園。西付属邸は内部を見学でき、皇族の暮らしぶりを知ることができる=沼津市

  同公園は、旧大蔵省から同市に無償貸与された園地と建物を活用して1970年に開園した。旧本邸は45年に空襲で焼失したが、明治時代に建てられた東付属邸や西付属邸は当時のまま残っている。現在は展示施設や飲食施設として活用され、2017年度には12万人が訪れている。
  市は新たな整備方針として、御用邸時代の建造物の保存▽公園施設の活用▽約4600本ある松の保全▽駿河湾や牛臥山を望む眺望の確保-を掲げる。
  具体的な内容として、西付属邸と東付属邸は初めて耐震診断・改修を実施する。スロープや多目的トイレの設置、段差解消や音声・点字案内といったバリアフリー化を図り、誰もが訪れやすい施設にする。研修室として貸し出すことが多い東付属邸は、子どもたちの学習や冠婚葬祭など幅広く利活用できるよう方法を検討する。
  建築面積が約5千平方メートルあったという旧本邸については、芝生を使って御殿や付属建物の位置を示す平面表示を行う。防空壕(ごう)は公開を目指して宮内庁と協議を進めるほか、旧本邸の上に建てられた歴史民俗資料館は移転も視野に入れている。
  市はガーデンツーリズムなどの広域連携で観光誘客を図り、旧御用邸の魅力を広く発信する考えだ。市緑地公園課の担当者は「皇室はなぜ沼津を選んだのか。風光明媚(めいび)な公園を訪れてその魅力を感じてもらい、守るべき価値や歴史があると知ってほしい」と話した。
 〈2020.07.15 静岡新聞夕刊 表記などはすべて当時〉

沼津御用邸記念公園の歴史

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沼津御用邸記念公園の歴史

 
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沼津御用邸記念公園の場所
地域再生大賞