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名門ジャズ店 ライフタイム復活へ

 新型コロナウイルスの影響で5月末に閉店した静岡の名門ジャズクラブ「浮月楼ライフタイム」。昼間の客席をコワーキングスペースとして活用する形で、夜のライブステージとともに7月から復活することになりました。国内外にファンを持つ名門の魅力に迫ります。
 〈静岡新聞社編集局TEAM NEXT・寺田将人〉

有志ら資金募り7月再開へ 昼はコワーキングの場、夜はライブ

 新型コロナウイルス禍の影響で5月末に閉店した静岡市葵区紺屋町の名門ジャズクラブ「浮月楼ライフタイム」が7月、これまで空いていた昼間の客席をコワーキングスペースとして活用する形で、夜のライブステージとともに再スタートを切ることになった。市民有志が営業継続のために資金を募り、店舗の柔軟な運用を検討してきた。

ジャズクラブの活用と再開に向けて話し合う関係者=6月上旬、静岡市葵区の浮月楼ライフタイム
ジャズクラブの活用と再開に向けて話し合う関係者=6月上旬、静岡市葵区の浮月楼ライフタイム
 閉店を惜しむ常連客の有志が始めたクラウドファンディングは、目標額の約4倍となる400万円以上が寄せられている。代表幹事の知久昌樹さん(62)は「全国屈指の名店が閉じることは、静岡の文化にとって大きな損失。再開に向けた仕組みづくりをさまざまな可能性から提案したい」と支援の経緯を説明する。
 新たな事業展開は、街路や庭園に開かれた明るい空間と音の響かない構造を生かし、落ちついた環境でリモートワークや打ち合わせができる点に着目した。既存の約50席をビジネス仕様に配置換えし、寄付金で照明やオンライン機器を設置するなど快適なオフィス環境を整える。
 夜はジャズクラブとしての機能を維持し、昼間と夜に分けてサブスクリプション(定額制)会員を募って一定数の利用を確保するという。オーナーでピアニストの久保田隆さん(66)は「たくさんの応援から勇気をいただいた思い。気持ちのいい空間を市民の資産として役立ててもらえることに期待している」と話す。
 詳細は同店の公式サイトで。

 <メモ>ライフタイムは2005年にJR静岡駅北口付近で開業し、後に徳川家ゆかりの浮月楼内に移転。通算千回に及ぶイベントには、故マッコイ・タイナーさんや渡辺貞夫さんら国内外の著名ミュージシャンも訪れた。

 ■元記事=閉店一転 7月♪音色戻る 静岡のジャズ店「ライフタイム」 有志ら資金募り運用検討 昼はコワーキングの場/夜はライブ(「あなたの静岡新聞」2021年6月28日)

コロナ影響、5月末に閉店 長引く移動制限で招待公演難しく

 静岡市葵区のジャズクラブ「浮月楼ライフタイム」が、新型コロナウイルスまん延の影響で5月末に閉店する。国内外の著名ミュージシャンが訪れる全国でも指折りの店として知られたが、長引く移動制限で遠方からの招待公演が難しい状況が続いていた。静岡のジャズシーンを築いた出演者や常連客からは惜しむ声が聞かれる。

新型コロナの影響で5月末に閉店することを決めた「浮月楼ライフタイム=2月上旬、静岡市葵区
新型コロナの影響で5月末に閉店することを決めた「浮月楼ライフタイム=2月上旬、静岡市葵区
 「世界的プレーヤーから身近な実力派まで、さまざまなステージが味わえる。これほどの会場は東京にもなかなかない」。2月上旬、元音楽教師の細谷裕和さん(69)=同区=は地元バンドの演奏に喝采を送った。
 徳川家ゆかりの浮月楼内で営業が始まった13年前は気軽に入りにくいと感じたが「一度のぞいてみるとアットホームな雰囲気で、音楽の喜びを改めて感じた」。立地や設備など通い続けた理由を挙げ「これだけのファンがいる店なのに」と残念がった。
 ライフタイムは05年にJR静岡駅北口近くで開業し後に現在地へ移転した。通算千回に及ぶイベントは、故マッコイ・タイナーさんやエディ・ゴメスさん、渡辺貞夫さんらビッグネームも名前を連ねた。同市出身のジャズ歌手ウィリアムス浩子さんは「トップアーティストに学び、勉強させてもらう場所だった。グラミー賞ピアニストとの共演にもつながった」と感謝する。
 新型コロナ禍で例年十数回は企画した海外組の公演はなくなり、県外から招待する奏者も3分の1程度に。オーナーでピアニストの久保田隆さん(65)は「厳しい現実を前に、今後の道筋を立てられなくなってしまった。閉店までの間、素晴らしい時間を共有したい」と話す。

 ■元記事=コロナ影響、閉店へ 静岡のジャズクラブ「浮月楼ライフタイム」(「あなたの静岡新聞」2021年3月28日)

アメリカのジャズバンドがアルバム録音も 世界から愛されるクラブ

 ニューヨークが拠点の4人組ジャズバンド「ニューヨーク・スタンダード・カルテット」(NYSQ)が、静岡市葵区のジャズクラブ「ライフタイム」でCDアルバムの録音を兼ねたライブを開いた。

アルトサックスを演奏するNYSQのティム・アマコスト。右はベースの安ヵ川大樹=11日、静岡市葵区の「ライフタイム」
アルトサックスを演奏するNYSQのティム・アマコスト。右はベースの安ヵ川大樹=11日、静岡市葵区の「ライフタイム」
  サックス、フルート担当のティム・アマコストは「ここは特別な会場」と話す。2009年、リハーサル中に、偶発的にジミー・ヴァン・ヒューゼンの名曲「バット・ビューティフル」のアレンジが出来上がった。同曲はバンドの定番となり、以後世界中で200回以上演奏した。「曲紹介では必ず『ライフタイム』での出来事を説明する。世界中の人が静岡にあるこの店を知っているはずだよ」(アマコスト)。会場への愛着が、ライブ録音につながった。
  2004年結成のNYSQは「自分たちのやり方でスタンダード曲を演奏すること」がコンセプト。「よく知られているメロディーに別のコード進行を付ける。新しい進行から新しいメロディーが生まれる。それが僕らのやり方」(アマコスト)。ライブでは楽曲が次々に解体、再構築されていく。大胆にフレーズを崩すこともあるが、端正なアンサンブルはぶれることがない。
  リズムが複雑に交錯するローレンス・ウィリアムズ「No.3」が客席を沸かせ、セロニアス・モンク「ラウンド・ミッドナイト」がしっとりとした雰囲気を醸す。ジョン・コルトレーン「ジャイアント・ステップス」は軽やかな感触。重量感たっぷりのブルース、オーネット・コールマン「ターン・アラウンド」で本編を締めた。
  CD発売は今秋(※2012年秋)。一部演奏は7月1、8日のSBSラジオ「インビテーション・トゥ・ジャズ」(午後10時~10時半)で放送する。

 ■元記事=「特別な会場」静岡でライブ 今秋発売、CD録音兼ね-ニューヨーク・スタンダード・カルテット (2012年6月26日静岡新聞夕刊)

ジャズ・ベースの世界的巨匠ロン・カーターさんも演奏

 ジャズ・ベースの世界的巨匠ロン・カーターさん(81)率いるトリオのジャズライブ(静岡新聞社・静岡放送主催)が13日、静岡市葵区の浮月楼ライフタイムで開かれた。約200人の観客が貫禄の演奏に酔いしれた。

豊潤な演奏で観客を沸かせたロン・カーターさん(中央)ら=13日夜、静岡市葵区の浮月楼ライフタイム
豊潤な演奏で観客を沸かせたロン・カーターさん(中央)ら=13日夜、静岡市葵区の浮月楼ライフタイム
  カーターさんが同会場で演奏するのは3回目。今回はドナルド・ヴェガさん(ピアノ)、ラッセル・マローンさん(ギター)とともに、スタンダード曲やクリスマスにちなむ曲を披露した。
  歌い上げるようなカーターさんの豊潤なソロ、感覚を研ぎ澄ました3人による息ぴったりのセッションで会場は熱気に包まれ、大きな声援と拍手が湧き起こった。

 ■元記事=豊潤なジャズ演奏 巨匠ロン・カーターさん 静岡(2018年12月14日静岡新聞朝刊)
地域再生大賞