10月14日開幕♪「ハママツ・ジャズ・ウィーク」見どころは
10月14日~22日に、アクトシティ浜松を中心に市内各所で開催されるハママツ・ジャズ・ウィーク。1992年に「ヤマハ・ジャズ・フェスティバルin浜松」として始まりました。ことしは新たな取り組みとして、ボーカリストとピアニストを対象に、発声法やピアノ奏法を指導する実践的ワークショップを行います。見どころやイベントの歴史をまとめました。
出番待つ戦前製造“幻のピアノ” 設置の居酒屋もライブ会場
戦前の1911年~45年に横浜中華街で製造された“幻のピアノ”が浜松市中区紺屋町の和食居酒屋「和音」にある。14日から同市で始まるハママツ・ジャズ・ウィークのライブ会場の一つとして、ジャズの軽やかなリズムを刻む出番を待っている。
周ピアノは、英国系ピアノ製造・販売会社にいた中国浙江省出身の周筱生氏が、独立して「周興華洋琴専製所」を立ち上げ製造した。23年の関東大震災で店がなくなった後、息子の周譲傑氏が復活させたが、太平洋戦争とともに製造は終了した。周ピアノを研究する「横浜ユーラシア文化館」(横浜市)の伊藤泉美副館長によると、現時点では全国で30台ほどしか確認されていないという。
幻のピアノは、周氏の生い立ちや歴史にほれ込んだ朱里さんの夫秀典さん(52)が10年ほど前に、国内で手に入れた。「店にピアノを置こうとは思っていたが、まさか『周ピアノ』とは」と朱里さん。「弾いてもらってこそ意味がある」と、開店当初から来店者に自由に触ってもらう機会を提供してきた。
歴史の古い周ピアノは限られた職人しか調律ができないという。手入れを任されてきた調律師狩野真さん(59)=埼玉県=は「部品の8割はオリジナル、2割は浜松の部品で修復した。ここだけにしかない特別なピアノ」と語る。
ジャズ・ウィーク期間中は20、21の両日午後7時から、周ピアノを使ったスタンダードジャズライブを開く。朱里さんは「音楽好きな人も、音楽になじみの少ない人も周ピアノの音を一度、聞きにきてもらいたい」と話す。
(浜松総局・小林千菜美)
〈2023.10.13 あなたの静岡新聞〉
コンサート多彩な9日間 発声法や演奏法のワークショップも
ジャズや音楽文化の魅力を体感する浜松市の一大イベント「第31回ハママツ・ジャズ・ウィーク」(市、市文化振興財団、ヤマハ、静岡新聞社・静岡放送など主催)が10月14~22日、同市中区のアクトシティ浜松を主会場に市内各地で開かれる。主催者の事務局関係者が21日、市役所で概要を発表した。
ジャズ初心者をはじめ、愛好家やファンなど老若男女が気軽に親しめるように多彩なコンサートやトークイベントを9日間にわたって繰り広げる。メインは最終日の「ヤマハ・ジャズ・フェスティバル」。アクトシティ浜松を舞台に、歌手の荻野目洋子さんらを迎えて1日限りの特別ステージで会場を盛り上げる。
新たな取り組みとして、市内で活動するボーカリストとピアニストを対象に、発声法やピアノ奏法を指導する実践的ワークショップ(10月19、21日)を開く。米ニューヨークを拠点に活動する実力派ピアニスト海野雅威さんらが講師を務める。
このほか、市内の特別支援学校をミュージシャンが訪れる「出前ジャズコンサート」(同20日)なども計画している。
杉山俊道事務局長は「市民の皆さんが笑顔になるイベントを企画した。多様な音楽文化の発展につなげたい」と意気込みを語った。
チケットは7月29日から、アクトシティ浜松チケットセンターやチケットぴあなどで取り扱う。問い合わせは事務局<電053(460)3325>へ。
(浜松総局・小林千菜美)
〈2023.06.22 あなたの静岡新聞〉
荻野目洋子さん「今こそ歌にグルーブ感」 出演者に聞く
来年歌手デビュー40周年を迎える荻野目洋子が、ヤマハジャズフェスティバルに初登場する。「歌声は生ものだから変化する。この年齢だからこそのグルーブ感を大切にしたい」と意気込みを語った。
ジャズとの出合いはビートルズがカバーしていた「ア・テイスト・オブ・ハニー」。原曲を聴き、ジャズに対して抱いていた敷居の高さが払拭され、ポップスに近いという印象さえ受けた。その後、エラ・フィッツジェラルドのボーカリストとしてのしなやかさとチャーミングな人柄にほれ込み、「ジャズにいつかチャレンジしたい」という思いを強くしていった。
「ご縁のつながりが強い」。高校時代からの親友森口博子の紹介で、2017年に国内で最も歴史のあるジャズフェスティバル「サマージャズ」に出演したり、音楽番組で披露したり、活躍の場を広げてきた。
浜松は夫の仕事に帯同し、何度も訪れている街。「たまたまハママツ・ジャズ・ウィークのポスターを目にして、さすが音楽のまちだなと。いつか出たいと言葉にしていたら実現した」と明かす。
約1時間の今回のステージには、初共演となる5人の演奏家とともに立つ。楽器が少なくなれば音がシンプルになり、ボーカルの響きが際立つ。緊張感は高まるが、ジャズならではの即興を楽しみにしている。
ジャズの生演奏は「物おじしていたらつまらない。飛び込んでいく度胸が試される」。アップビートの楽曲や、自身の代表曲のジャズアレンジにも挑戦する。
■私の名盤 「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」 ナット・キング・コール(1962年)
ナット・キング・コールは楽曲を分かりやすく歌うという点で、とても大きな存在。ピアニストの彼は、軽やかに歌い上げる。ボーカルワークの技術よりも、音楽そのものの心地よさが感じられ、とても勉強になった。初めて聴いた20代のころから、何回も聴きたくなる1曲。娘のナタリー・コールが、グラミー賞のステージで映像と“デュエット”したシーンも感動的だった。
22日、3部構成で開催
「ヤマハジャズフェスティバル」は22日午後1時から、浜松市中区のアクトシティ浜松大ホールで開催される。海野雅威NYトリオ、荻野目洋子、渡辺貞夫オーケストラの3部構成。チケットは全席指定、各プレイガイドで発売中。詳細はハママツ・ジャズ・ウィークの公式ウェブサイトへ。
(教育文化部・名倉佐記)
〈2023.10.03 あなたの静岡新聞〉
当初は赤字からスタート 発案者、30年の歴史回顧
「ハママツ・ジャズ・ウィーク」(浜松市、市文化振興財団、ヤマハ、静岡新聞社・静岡放送など主催)が15日、開幕する。1992年に「ヤマハ・ジャズ・フェスティバルin浜松」として始まり今年が30回目。「音楽のまち」を標榜(ひょうぼう)する浜松で、どのような役割を果たしてきたのか。
初回の92年は同社主催だった。浜松アリーナにジャズファン約4500人を集めたが、予想以上の赤字を出した。94年のアクトシティ浜松完成を前に、音楽のまちづくりを目指す市の関係者が興味を示し始めた。「官民一体のイベントにならなかったら、3年で終わっていたかも」と振り返る。
ジャズは近年、秋の中心街を彩り、風物詩のようになった。コロナ禍前には約2万人(主催者調べ)を集めるイベントに成長した。一方、中区の男性教員(48)は「ジャズに興味がなく、行ったことはない」と話す。同区のピアノ講師の女性(50)も「静岡市の大道芸と異なり、ジャズは気軽には行けない雰囲気」と率直だ。多くの市民への浸透という点では課題を残している。
運営側は新規のファンを何とか取り込もうと、今年は飛び入りの子どもたちがステージで演奏したり、春風亭昇太さんらによる落語とジャズのコラボを試みたりするなど、新たな趣向を用意した。
佐藤伸行プロデューサー(49)は「以前はコアなファン向けだった。今はジャズに親しみのない層にも、どういう楽しみ方を提案できるのかに重点が変わった」と強調する。
(浜松総局・大山雄一郎)
〈2022.10.14 あなたの静岡新聞〉