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パリ五輪「金」へ弾み 自転車伊豆拠点、杭州で10種目金メダル

 東京五輪・パラリンピック自転車競技の開催地になった伊豆市。日本連盟の強化拠点HPC(ハイパフォーマンスセンター)での取り組みが実を結び、中国・杭州アジア大会ではトラックの11種目中10種目で金メダルを獲得しました。三島に拠点を置き、HPCでトレーニングするチームブリヂストンの活躍も紹介します。

杭州アジア大会 トラック11種目中10種目でV

 東京五輪を契機に、サイクルスポーツセンター(伊豆市)に日本自転車競技連盟の強化拠点「HPC(ハイパフォーマンスセンター)」が整備されたトラック種目。中国・杭州アジア大会では出場11種目のうち、男女合わせて10種目を制した。東京五輪では「金」ゼロに終わったが、HPCが「至上命令」と位置づける来年パリ五輪での金メダルに向け、国際大会で成果が見え始めている。

27日のアジア大会4000メートル団体追い抜きでアベック優勝を飾った日本チーム。大会を通じて10種目で金メダルを手にした=中国・杭州(本社臨時支局・二神亨)
27日のアジア大会4000メートル団体追い抜きでアベック優勝を飾った日本チーム。大会を通じて10種目で金メダルを手にした=中国・杭州(本社臨時支局・二神亨)
 英国グラスゴーで8月に行われたトラックの世界選手権。2018年から三島市に住み、HPCで練習を積んできた窪木一茂選手(34)=ブリヂストン=が男子スクラッチで2年連続の銀メダルを手にした。アジア大会でも男子団体追い抜きなど2個の金メダルを獲得した窪木選手は、HPCでの練習が若手を含む日本チームの成長につながったとし「世界レベルの強化拠点。選手が競技力を上げることに専念できる」と実感を込めた。
 東京五輪を控えた16年、同連盟は強化方針を大転換した。大会に合わせて短期合宿を行う形式から、選手を県東部に集め、「金メダリストの育成」を目指し伊豆ベロドロームを拠点に年間を通じて強化する。その過程で専門的な知識を持ったコーチ、メカニック、トレーナーらがサポート役として集まり、徐々にHPCの形が出来上がった。
 ただ、東京五輪はまだ下地作り。「世界に出て戦うのが精いっぱいの状態だった」(HPC担当者)。梶原悠未選手(26)が女子オムニアムで日本女子初の銀メダルを手にしたが、世界の頂点にはあと一歩届かなかった。
 HPCの運営資金は決して潤沢とは言えない。パリ五輪で結果を出し、競技の認知度や人気を高めることが、関連団体やスポンサーからのバックアップにつながる。「東京五輪は“種まき”でよかったが、今は結果が求められている」(同)との意識は強い。
 同連盟の選手強化スーパーバイザーを務める中野浩一氏は、現在の強化態勢を維持、発展させるためにも「伊豆でトレーニングすれば世界で勝てると証明することが必要」と指摘する。現役時代に世界選手権男子スプリントを10連覇し、海外選手との勝負の厳しさを体感してきた第一人者は「パリで金メダルを目指す上で、アジア大会は選手、スタッフともに五輪をイメージできる貴重な場。来年の好結果につなげてほしい」と期待を寄せた。(杭州=本社臨時支局・大沼雄大)
<2023.10.1 あなたの静岡新聞>

三島に拠点置き5年 チームブリヂストン、男子団体追い抜き「金」

 三島市を拠点に活動する自転車競技の「チームブリヂストンサイクリング」。トラック種目を中心に五輪出場を目指して埼玉県から移転し、5年がたつ。「団体追い抜きで世界と戦う」-。27日に中国・杭州アジア大会を制した男子チームが見据えるのは、来年パリ五輪での悲願成就だ。

男子団体追い抜き決勝 レース終盤に力走する(奥右から)橋本英也、児島直樹、窪木一茂。手前は松田祥位=中国・杭州(本社臨時支局・二神亨)
男子団体追い抜き決勝 レース終盤に力走する(奥右から)橋本英也、児島直樹、窪木一茂。手前は松田祥位=中国・杭州(本社臨時支局・二神亨)
 東京五輪を契機に、日本自転車競技連盟は伊豆市のサイクルスポーツセンターにトラック種目の強化拠点「ハイ・パフォーマンス・センター(HPC)」を整備。ブリヂストンも五輪会場の伊豆ベロドロームでの強化に本腰を入れるため、2018年に三島市に拠点を新設した。メンバーは同市に住みながら練習漬けの日々を送ったが、五輪出場はかなわなかった。
 本番を観客席で見た今村駿介選手(25)は「オリンピックでしか感じ得ないレベルの高さがあった。やっぱりオリンピックが一番の大会」と、世界トップレベルで争う場所への憧れと悔しさをかみしめた。チームの照準は、そこから3年後のパリに移った。
 HPCと連携した着実な強化に加え、成長を後押ししたのが五輪出場枠の拡大。若手エースの今村選手が「従来の8カ国では際どかったが、10カ国に増えて出場が現実味を帯びた」と話す通り、チームの士気は一気に高まった。今季は5月の全日本選手権、翌月のアジア選手権で日本新記録を連発。メンバー最年少の児島直樹選手(22)は「今はオリンピックに出場するだけでなく、結果を残す意識に変わっている」と手応えを口にする。
 貫禄のアジア制覇で弾みを付けたチームは、ここから五輪枠を懸けた本当の勝負に挑む。「日本の自転車競技に期待感を持ってもらいたい」と今村選手。三島で鍛え上げた健脚をパリでも披露する。
(杭州=本社臨時支局・大沼雄大)
<2023.9.28 あなたの静岡新聞>

世界選手権 窪木選手「銀」今村選手「銅」報告

 三島市を拠点に活動する自転車チーム「チームブリヂストンサイクリング」の窪木一茂選手(34)と今村駿介選手(25)が4日、三島市役所に豊岡武士市長を訪ね、8月に開かれた世界選手権でのメダル獲得を報告した。

世界選手権でのメダル獲得を報告した窪木選手(左)と今村選手=三島市役所
世界選手権でのメダル獲得を報告した窪木選手(左)と今村選手=三島市役所
  窪木選手は男子スクラッチで2大会連続の準優勝に輝き、団体追い抜きで8位に入った。今村選手は男子オムニアムで3位に入り、同種目で日本勢初のメダルを獲得した。
  好成績を残し、パリ五輪出場権獲得に前進した窪木選手は「個人・団体ともにパリ五輪へ向けてすごく良い雰囲気。しっかりと来年に向けて頑張っていきたい」と決意を新たにした。国際大会の個人種目で自身初のメダルとなった今村選手は「東京五輪は、補欠で悔しい思いをした。形のあるものを残せて自信につながった。パリに向け、次の大会では金メダルが取れるようトレーニングを重ねていきたい」と語った。
  豊岡市長は「五輪でのメダル獲得を目指して頑張ってほしい」と激励した。
<2023.9.6 あなたの静岡新聞>

団体追い抜き アジア選手権でもメダルラッシュ

 三島市を拠点に活動する「チームブリヂストンサイクリング」が、自転車トラックのアジア選手権(6月、マレーシア)でサポート選手を含め金9、銀5、銅2とメダルラッシュを繰り広げた。好調ぶりを特に示したのが男子団体追い抜き。決勝で今年3度目の日本記録更新となる3分51秒055を出し、頂点に立った。8月3日開幕の世界選手権に向け、窪木一茂主将は「3分40秒台を出せば、おのずとパリ五輪が見えてくる」とさらなる飛躍を誓う。

アジア選手権の戦いぶりを報告する窪木(左から2人目)や橋本(同6人目)らチームブリヂストンサイクリングの選手=三島市
アジア選手権の戦いぶりを報告する窪木(左から2人目)や橋本(同6人目)らチームブリヂストンサイクリングの選手=三島市
 「陸上男子100メートルで9秒台が次々と生まれたように、一度殻を破るとドンドンいける」。6日にオンラインで開かれた社内報告会。エリミネーション、オムニアムと合わせた3冠に輝いた橋本英也が、5月の全日本選手権で3年ぶりに日本記録更新して以降の好調ぶりに言及した。
 日本代表の中長距離は今年1月、スイス代表をかつて指導したダニエル・ギジガーヘッドコーチが就任した。世界的な名将を迎え「量よりも質を重視するようになった」と窪木は変化を語る。食事の仕方や姿勢など細かな目配りもあり、積み上げてきた成果が結果に表れ始めた。
 窪木はリオデジャネイロ五輪代表、橋本は東京五輪代表だが、団体での出場が悲願だ。団体追い抜きで出場枠を獲得すれば、マディソンやオムニアムの出場権も与えられる。橋本は「チームメートは心強い。パリ五輪はみんなで出て、一緒に笑ったり悔しがったりしたい」と思い描く。
 国別ランキングは現在、五輪出場枠ギリギリの10位。世界選手権で好成績を残せば、パリへの道は大きく近づく。橋本は「良い状態で世界選手権に臨める。結果を出したい」と意気込む。
(三島支局・岡田拓也)
<2023.7.8 あなたの静岡新聞>
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