知っとこ 旬な話題を深堀り、分かりやすく。静岡の今がよく見えてきます

乱れがちな生活習慣 改善のためのお助けツールは?

 心がけていても、忙しい日々の中での良い生活習慣の維持は容易ではありません。とはいえ肥満症や高血圧、糖尿病をはじめとする健康への影響は防ぎたいところ。そこで習慣の改善に向けたサポートを図る、静岡県内の取り組みを紹介します。(武前愛香)

AIが改善提案 磐田市とNECが実験へ ポイントシステム活用

 磐田市とNECは10月、人工知能(AI)を活用したスマートフォンアプリで、不摂生になりがちな働き盛りの世代に生活習慣の改善を提案する実証実験を始める。生活習慣病の予防に加えて、改善の取り組みに応じて市内店舗での特典や割引サービスに活用できるポイントを付与することで、消費を促し地域経済の活性化にもつなげる。

実証実験で使うスマートフォンアプリ(NEC提供)
実証実験で使うスマートフォンアプリ(NEC提供)
 市内企業に勤務する30~50代の約300人を対象に実施する。NECが開発した健康ポイントサービスアプリ「WoLN(ウォルン)」で日々の歩数や食事、睡眠時間などを記録すると、健康診断の結果を予測し、AIが改善につながる活動を提案する。取り組み実績をポイント化し、市内の協力店舗で利用できるチケットやクーポンに交換できるようにする。
 市健康増進課によると、市内の糖尿病患者と予備軍の比率は全国平均を上回っている。実証実験は地元企業の健康経営を促し、市民の健康データを政策立案に生かす狙いもある。
 連携協定の締結式をこのほど市役所で開き、草地博昭市長とNECの高橋和寛パブリックビジネスユニット支配人が協定書に署名した。草地市長は「市民のウェルビーイング(幸福感)を高めるには健康が第一。企業の技術を生かして市民の健康意識を高める取り組みにしたい」と述べた。(磐田支局・八木敬介)
〈2023.8.1 あなたの静岡新聞〉

血圧平均値低下 生活習慣改善も 静岡県が実証結果報告

 静岡県はこのほど、県民に血圧測定の習慣化を促す課題解決チームの会合を県庁で開き、2022年度に県内5事業所の協力を得て実施した実証事業の結果を報告した。2カ月間の測定によって血圧の平均値が低下し、生活習慣改善などの行動変容につながるケースもあったとした。

静岡県庁
静岡県庁
 実証事業は従業員約130人に血圧計を貸与し、朝と晩の2回、各家庭で測定してもらった。既に受診中だった人を合わせると約半数が高血圧だったことが判明。全体の約3割に受診を勧め、服薬を開始した人もいたという。
 アンケートでは「昼間に医療機関で測るのと自宅で朝晩測るのは全く違った」「日々の生活習慣を見直すきっかけになった」などの回答があり、塩分摂取を減らすなど生活習慣の改善に取り組む参加者もいた。事業所全体の健康意識の向上、家族への波及効果なども期待されるとした。
 23年度も実証事業を続ける方針を確認した。県内事業所の従業員最大300人を対象とし、3カ月程度実施する。
 課題解決チームは産業医や大学教授、全国健康保険協会の担当者で構成。「事業終了後も血圧測定を継続するための環境づくりが重要」との意見が出た。(政治部・森田憲吾)
〈2023.4.1 あなたの静岡新聞〉

食育漫画が若者に好評 習慣の乱れ解決へ発信 静岡市の事例

 若い世代に主体的な取り組みを促す静岡市の食育事業「しずおかカラダにeat(イート)75」が5年目を迎え、軌道に乗っている。当初は中心としてきた実習や試食を伴うイベントがコロナ禍で開きにくくなる中、新たに取り入れた漫画冊子が好評だ。

来年度に向け、漫画冊子やレシピ集の内容を検討する職員=静岡市役所静岡庁舎
来年度に向け、漫画冊子やレシピ集の内容を検討する職員=静岡市役所静岡庁舎
 事業では正しい食習慣を通じ、国が掲げる75歳の健康寿命達成を目指す。朝食を食べないといった食習慣の乱れなど若い世代に顕著な食の課題解消に向けて、市内の大学生らを巻き込んだ情報発信を進めてきた。
 漫画冊子は、進学や就職で卒業後に実家を離れる高校生に向け、食事の内容やバランスを整える重要性をストーリー仕立てで紹介。大学生や専門学校生が考案した健康レシピも掲載した。今年度当初、1万部を市内の高校3年生に配り、公共施設にも置いたところ、追加配布の要望が相次いだ。
 来年度に向け、さらに行動を促す新版を作製する。若い女性に多い痩せすぎが招く健康問題にも触れ、自ら準備して食べる習慣につなげるため、写真共有アプリ「インスタグラム」で募集した朝食レシピ集を添える。好評だった本年度版も増刷する。
 市健康づくり推進課の担当者は「この時期からの食習慣が一生の健康を左右する。食事を適切な組み合わせで選べるよう、独り立ちする前に学んでほしい」と話す。
 漫画冊子は市のホームページでも公開している。(社会部・西條朋子)
〈2023.1.4 あなたの静岡新聞〉

健康チェック 利用者数目標より4割増 大井川庁舎「見える化コーナー」

 焼津市役所大井川庁舎(同市宗高)に「健康見える化コーナー」が開設してから半年が経過した。利用者数が当初目標よりおおよそ4割多い831人を数え、好調に推移している。気軽に健康状態を確認できる機器が多いことから、70、80代の市民が定期的な健康チェックの施設として定着してきたようだ。

老化物質の蓄積レベルを調べる「糖化産物測定器」を利用する市民=焼津市宗高の焼津市役所大井川庁舎
老化物質の蓄積レベルを調べる「糖化産物測定器」を利用する市民=焼津市宗高の焼津市役所大井川庁舎
 健康見える化コーナーは昨年12月に開設。血圧計や脳年齢計、生活習慣診断といった測定機器が無料で使える。市によると、利用者数は昨年12月から今年5月までに831人で、当初目標(600人)より39%多い結果となった。再利用率を見ると、4月が40・5%、5月は30・5%とリピーターも定着している。担当者によると、利用者の年齢層は70代、60代がほとんどで、最初に訪れた人は次回以降、仲間と連れ立ってきたり、夫婦で訪れたりするケースが目立つようだ。
 測定機器で最も利用頻度が高いのは骨粗しょう症のリスクを確認できる「骨波形測定器」。続いて老化物質の蓄積レベルを測れる「糖化産物測定器」で、いずれも手首や指先ですぐに測定できる。定期的に利用し、数字の推移を比較して見ることで、健康状態を確認している利用者が多いという。
 市健康づくり課の担当者は「測定会などのイベントをより多く実施することで新規利用者を増やしていきたい」と語る。(焼津支局・福田雄一)
〈2023.7.13 あなたの静岡新聞〉
地域再生大賞