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新茶シーズン到来 1キロ120万円「高嶺の香」どんなお茶?

 静岡茶市場の初取引が行われ、今年の新茶シーズンが幕開けしました。初取引で最高値を付けたのは、静岡市清水区両河内茶業会が販売した「高嶺の香」。なんと1キロ120万円だったということです。どんなお茶なのでしょうか。地域の自慢ともいえるお茶ですが、お茶の消費低迷や後継者不足も深刻な問題です。

最高値は1キロ120万円「高嶺の香」 静岡茶市場で新茶初取引

 今年の新茶シーズン幕開けを告げる静岡茶市場(静岡市葵区)の新茶初取引が、13日行われた。県内の茶園は生育状況が良好で、4月下旬までに各産地で摘採作業がピークを迎え、新茶商戦が本格化する。

静岡茶市場で始まった新茶の初取引。威勢の良い手合わせが響いた=13日午前、静岡市葵区(写真部・二神亨)
静岡茶市場で始まった新茶の初取引。威勢の良い手合わせが響いた=13日午前、静岡市葵区(写真部・二神亨)
 初取引には県内産一番茶1375キロが上場した。午前7時の取引開始と同時に、買い手の製茶問屋と売り手の生産者が、生葉をもんで乾燥させて作った「荒茶」の出来栄えを見ながら、そろばんを片手に価格交渉を展開した。商談が成立すると、場内に「手合わせ」の音が響いた。
 4月13日に初取引を行うのは、1956年の市場開設以来最も早い。茶市場の内野泰秀社長は「1日でも早く取引を始めることで、新茶商戦を盛り上げたかった」と説明。その上で「おいしいお茶を適正な価格で販売するため、努力を尽くしていく」と語った。

■清水・両河内の「高嶺の香」 7年ぶり最高値
 静岡茶市場(静岡市葵区)の新茶初取引で、両河内茶業会(同市清水区)の機械もみの茶「高嶺の香」が1キロ当たり120万円で最高値だった。
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新茶の初取引で最高値をつけたJAしみず両河内茶業会の「高嶺の香」=13日午前、静岡市葵区(写真部・二神亨)

 同会の茶に最高値が付くのは7年ぶり。購入した和田長治商店(同市葵区)の和田夏樹社長(36)は「高い品質のお茶に最高の評価をつけることで、魅力を広く伝えたい」と話した。
 手もみの最高値は、JAふじ伊豆が販売した富士宮産の茶で、1キロ当たり111万1111円だった。

‘‘地域の顔’’ 40年かけ自慢のお茶に

初取引を前に茶葉の栽培状況を最終確認する両河内茶業会の役員=静岡市清水区清地
初取引を前に茶葉の栽培状況を最終確認する両河内茶業会の役員=静岡市清水区清地
※2022年4月18日 静岡新聞朝刊より
 静岡茶市場の新茶初取引を前にこのほど、機械製茶で40年以上連続最高値を付けている高級茶「高嶺の香(たかねのはな)」の栽培状況の最終確認を両河内茶業会が実施した。同茶業会の役員は「高値の香は地域の誇りだ」と話した。
 興津川沿いに山々が並び茶どころと知られる両河内地区で「高嶺の香」の生産が始まったのは四十数年前。当時の同茶業会役員が地域の顔となるような茶葉を作ろうと初取引用に育て始めた。枝を伸ばして育てることで葉数を少なくし一枚一枚に養分を蓄えさせた。育った茶葉は強いうま味を持ち、最高値を10年、20年と付け「高嶺の香」と名付けた。
 
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静岡茶市場初取引で40年以上連続で最高値を付けている高級茶「高嶺の香」

 当初は地域住民の中でも「高嶺の香」に対する反応には温度差があった。しかし県内の茶業が最盛期を過ぎ、同地区でも茶農家が減少する中、茶業会一丸で育てる“自慢のお茶”に育っていった。
 「高嶺の香」は400平方メートルほどの小さな茶畑で栽培されていて、1年かけて約4キロの製茶しかできない。片平靖士会長(53)は今年も色が濃く太い芽が育ったと評し「良い物を作るために採算度外視でやっている。これからも何十年と栽培し続けていきたい」と話した。

丹精の茶つなぐ一手は 消費低迷、後継者不足に対策必須

取引が成立し、手合わせをする両河内茶業会の吉川勝敏会長(左から2人目)=20日午前10時5分ごろ、静岡市葵区の静岡茶市場
取引が成立し、手合わせをする両河内茶業会の吉川勝敏会長(左から2人目)=20日午前10時5分ごろ、静岡市葵区の静岡茶市場
※2020年4月20日 静岡新聞朝刊より
 「パ、パ、パン」―。20日午前、静岡市葵区の静岡茶市場で商談成立を告げる売り手、買い手の手合わせの音が鳴り響いた。「今年も最高のお茶を消費者に届けることができそうだ」。静岡市清水区両河内地区の自園自製農家でつくる両河内茶業会の会長吉川勝敏さん(45)がほっとした表情を見せた。
  地域を挙げて摘み取ったのは「高嶺(たかね)の香(はな)」。静岡茶市場の初取引で、機械もみで昨年まで40年連続の最高値を付けている高級茶だ。新型コロナウイルスの影響で新茶初取引の式典が見送られた今期は昨年を上回る1キロ当たり8万8888円で取引された。
  「子どもの頃、お茶畑の中を歩いて通学した。お茶を摘んでいる人とあいさつを交わしながら。そんな原風景は今も残っている」と回想する吉川さん。両河内茶の知名度を高めた先輩農家への感謝から、産地を守り、次代に継ぎたいとの思いは強い。
  一方で、茶業を取り巻く環境は厳しい。ライフスタイルの変化に伴う慢性的な消費の低迷や後継者不足に今期は新型コロナの感染拡大が追い打ちを掛けた。消費地の百貨店などは休業し、新茶のムードは盛り上がらない。
  静岡茶市場で本格化している新茶取引でも需要は一部の良品に集中し、多くが例年に比べて苦戦を強いられている。「コロナの影響で先行きが全く見えない」と取引業者。
  新茶シーズンを迎えた産地の現場からは「茶業の支援が大規模農家に偏っている。量より質で勝負したい」「基盤整備を求めたい。生活が成り立たないと産地を守れない」と切実な声が上がる。 
地域再生大賞