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県立高校初「演劇専攻」清水南芸術科に新設へ 経緯や背景は

 静岡県教委が2024年度、県立清水南高の芸術科に「演劇専攻コース」を設置する方針を固めました。県舞台芸術センター(SPAC)と連携した専門教育を行い、芸術分野で活躍する人材の育成を目指します。コース設置に至るまでの経緯、関連する取り組みをまとめます。

静岡県教委、24年度設置方針 SPACと連携、人材育成

 静岡県教委が県立高に初の演劇専攻コースを設置する方針を固めたことが、4日までに関係者への取材で分かった。県立清水南高(静岡市清水区)の芸術科に専攻を新設し、2024年度から入学者を受け入れる方向で調整している。21年度に協定を締結した県舞台芸術センター(SPAC)との連携を生かした専門教育を行い、芸術分野で活躍する人材の育成を目指す。

 同校は21年度以降、中等部の独自科目「表現」や高校の総合的な探究の時間でSPAC俳優の指導を受け、演劇教育のカリキュラム研究に取り組んできた。県教委は今後、演劇専攻設置に伴う定員の在り方や教員配置などを検討していく。
 県立高における演劇教育の導入は、県教育振興基本計画(18~21年度)や県立高第3次長期計画(18~28年度)で、実学を充実させる新学科設置研究の一環として位置づけられた。県教委は21年度に県立高の特色化を進めるため開始した「オンリーワン・ハイスクール事業」の中で、清水南高を専門機関と連携する「アカデミック・ハイスクール」に指定。同年11月にSPACと同校が協定を締結し、講師として俳優の派遣を受け、演劇を通じた表現力の向上などに取り組んでいる。
 同校は1986年に県内初の芸術科が設置され、現在は1学年1学級(40人)に音楽専攻と美術専攻の2コースがある。
 〈2023.1.5 あなたの静岡新聞〉

「オンリーワン・ハイスクール」とは? 県教委が33校選定

オンリーワン・ハイスクールの実施校
オンリーワン・ハイスクールの実施校
 ※2021年6月23日 あなたの静岡新聞から
 静岡県教委は(2021年6月)18日までに、県立高の魅力向上を図る「オンリーワン・ハイスクール」事業に33校を選定した。文理融合の教育課程や高大連携など4分野で、公募と県教委の指定で実施校を決めた。第3次長期計画の検討課題だった演劇科の新設に向けた研究に清水南、スポーツカリキュラムの研究に静岡西を選ぶなどした。研究期間は2023年度までの3年間。
 文系、理系の枠を超えた学びを目指す「イノベーション・ハイスクール」には7校を選定。このうち沼津東、静岡、浜松北の3校は、医療人材の育成をテーマに、医師との交流や倫理観を醸成する教育などのカリキュラムを検討する。
 演劇科やスポーツカリキュラムの検討は、大学や専門機関と協働する「アカデミック・ハイスクール」の分野で、清水南は県舞台芸術センター(SPAC)と、静岡西は静岡産業大やプロチームとの連携を目指す。地域課題を巡る探究活動を行う「グローカル・ハイスクール」では、地域資源の富士山を題材に選んだ富士宮北や、コミュニティースクールを軸に地域連携を図る浜北西などが選ばれた。
 そのほか、英語教育や国際交流、地元企業と連携したキャリア教育などのテーマで各校が研究に取り組む。
 同事業は、国の高校普通科改革を見据えた本年度の新規事業。高校教育課は「これまで力を入れてきた取り組みを、各校の特色に育てようという学校が多い」としている。(政治部・杉崎素子)

清水南高、演劇専門教育の実現へ SPACと協定

協定書にサインするSPACの宮城聰芸術総監督(左)と清水南高・中等部の小野田秀生校長=4日午後、静岡市清水区の同校
協定書にサインするSPACの宮城聰芸術総監督(左)と清水南高・中等部の小野田秀生校長=4日午後、静岡市清水区の同校
 ※2021年11月5日 あなたの静岡新聞から
 静岡市清水区の清水南高・中等部と県舞台芸術センター(SPAC)は4日、県内の公立高で初となる演劇専門教育の実現に向けた協定を締結した。同校の教育活動で、舞台芸術を通じた生徒の表現力、思考力、対話力の向上を目指す。
 協定はSPACからの講師派遣などに関する5項目。中等部では全国で唯一教科として取り組んでいる「表現」の授業でSPACの専門家から指導を受ける。高校では総合学習の中で指導を受けるとともに、2024年4月の導入を目指す演劇専門教育のカリキュラムなどを研究する。
 同日、SPACの宮城聰芸術総監督が同校を訪れ、小野田秀生校長と共に協定書にサインした。宮城総監督は「自分の創作を振り返ると、大学入学以前の美に関する体験がその後の活動を支えてくれた」と意義を強調した。小野田校長は「演劇教育は芸術科を持つ本校の校風にも合っている。SPACの力を借りて、本校の魅力を高めたい」と述べた。
 同校は本年度、県立高の魅力向上を図る県教委の事業「オンリーワン・ハイスクール」で、専門機関などと協働する「アカデミック・ハイスクール」の指定を受けている。(文化生活部・遠藤竜哉)

中学部独自教科「表現」 発表会は台本も舞台装置も生徒が準備

 清水南高中等部は(2022年2月)24日、静岡市清水区の清水文化会館マリナートで卒業制作発表会を開いた。体育や音楽、美術を組み合わせた同校独自の教科「表現」の学習に取り組んできた3年生105人が、3年間の集大成となる舞台をつくり上げた。

表現の学習の集大成としてミュージカルなどを上演する清水南高中等部の生徒=静岡市清水区の清水文化会館マリナート
表現の学習の集大成としてミュージカルなどを上演する清水南高中等部の生徒=静岡市清水区の清水文化会館マリナート
 表現の授業は本年度、連携協力協定を結んだ県舞台芸術センター(SPAC)の俳優や技術スタッフから指導を受け、舞台上での体を使ったパフォーマンス力を磨いてきた。クラスごとの発表では、高校生が大切な仲間ややりたいことを見つけて成長する物語を上演した。
 3年生全員によるミュージカル「グレイテスト・ショーマン」は、映画原作に基づいて台本や舞台装置を生徒自身が準備した。ショーを通じてさまざまな人の人生を輝かせる舞台人の生き方を歌とダンスで表現し、会場の保護者らから大きな拍手が送られた。(文化生活部・宮城徹)
 〈2022.2.25 あなたの静岡新聞〉
地域再生大賞