知っとこ 旬な話題を深堀り、分かりやすく。静岡の今がよく見えてきます

ついに動き出した 清水港「海洋文化施設」経緯おさらい

 静岡市の長年の懸案事項の一つ・清水港の海洋文化施設。整備の落札者が決まりました。基本構想の策定から5年。新型コロナ禍で一時は計画が凍結するなど、紆余曲折がありました。事業の経緯と施設の完成イメージを1ページにまとめました。

国内4位の大水槽設置へ 落札者決定

 静岡市が2026年4月のオープンを目指し進めている清水港の海洋文化施設「海洋・地球総合ミュージアム」の整備について、同市は25日、乃村工芸社(東京都)を代表企業とする9社の事業者グループが落札したと発表した。国内4番目の大きさとなる水量1700トンの大水槽を設置する。本年度内に契約を行う。

水量1700トンの大水槽がある「静岡市海洋・地球総合ミュージアム」の2~3階内部のイメージ(同市提供)
水量1700トンの大水槽がある「静岡市海洋・地球総合ミュージアム」の2~3階内部のイメージ(同市提供)
 落札金額は市の上限金額とほぼ同じ約169億6千万円。先月下旬までに同グループのみから事業提案と応札があった。学識経験者による審査会や、庁内の業者選定委員会を経て落札者を決定した。9社は特定目的会社(SPC)を設置し、市と正式契約を結ぶ。
 市の発表によると、施設は鉄筋コンクリート一部鉄骨造5階建て、延べ床面積は約8500平方メートルとなる。
 市は当初施設全体で水量約1千トンを想定。9社は集客機能を高める目的で大幅に上回る水量を提示。大水槽が1700トン、施設全体では約1800トンとなる。大水槽は東京都の葛西臨海水族園(2200トン)に次ぐ規模。
 子供たちに駿河湾の海洋生態系について解説するコミュニケーターが常駐する「ディスカバリーラボ」も設置し、博物館機能も高める。料金は大人1800円(年間パスポート4千円)、小中校生900円(同2千円)に設定。初年度は67万人の入館を見込む。
 田辺信宏市長は25日午前の定例会見で「『みなとまちしみず』のさらなる魅力となり、日本中、世界中からこの地域を目指して人々がやって来る『キャンパス』のような場所にしたい」と述べた。(清水支局・坂本昌信)
〈2022.11.25 あなたの静岡新聞〉

これまでの主な動きをおさらい

 

photo01

※地図、表、記事は2022年1月26日あなたの静岡新聞から抜粋
 静岡市は26日までに、新型コロナウイルスの感染拡大でストップした清水港の海洋文化施設整備計画を再開するため、2022年度一般会計当初予算案に当初計画と同額程度の約170億円の債務負担行為を盛り込む方針を固めた。
  整備計画を巡っては、市議会が2019年10月、169億6千万円の債務負担行為を盛り込んだ補正予算案を可決したが、コロナ禍により、市は20年5月に計画の凍結を決定した。市議会は同年10月に債務負担行為の廃止を盛り込んだ補正予算案を可決、予算上は計画がいったん白紙になっていた。
 施設整備は運営を民間事業者が担う「民間資金活用による社会資本整備(PFI)」のスキームを活用する。総事業費約240億円のうち、約70億円は15年間の入場料収入でまかなう見込みで、残る約170億円を来年度一般会計当初予算案に計上する。
  市は展示物監修などで海洋研究開発機構(JAMSTEC)や、1970年開館で施設が老朽化している三保半島の水族館(水量700~800トン)を運営する東海大と、連携のための覚書を締結済み。事業再開は静岡-山梨間の中部横断自動車道が昨夏に全線開通した影響も大きい。市は建設時と開館後15年間の経済波及効果を約600億円と試算している。

モデルは米モントレー湾水族館 2017年に視察団

※2017年11月4日 静岡新聞朝刊(肩書は当時)

工夫を凝らした水族館の展示を見学する視察団メンバー=米モントレー市のモントレー湾水族館
工夫を凝らした水族館の展示を見学する視察団メンバー=米モントレー市のモントレー湾水族館
【モントレー=清水支局・河村雅彦】静岡市の産官学米国視察団は2日(日本時間3日)、モントレー市役所訪問などに先立ち、年間200万人を集客するモントレー湾水族館を見学した。先端の研究者が所属する同水族館研究所(MBARI)と連携した子供向け教育プログラムなど集客のノウハウを学んだ。
  目の前に広がるモントレー湾の生態、自然など550種の動植物3万5千点以上を展示している。静岡市が2020年代前半に清水港ウオーターフロント地区に整備を目指す海洋文化拠点「海洋・地球ミュージアム(博物館)」のモデル施設。
  一行は教育プログラム担当者などから、入館料と寄付で運営する経営の仕組みやMBARIと連携した展示、地域社会との関わりなどの説明を受けた。
  井上恒弥静岡市議会議長は「公的資金に頼らずに運営している点は興味深い。静岡でも実現の可能性がある」と指摘。東海大海洋科学博物館の秋山信彦館長は「多くの民間ボランティアが関与する教育プログラムの支援体制などすぐにまねできない部分もある」と課題を述べた。
  静岡商工会議所の酒井公夫会頭は「施設を教育と結びつけることで多く人を引き寄せている。日本でも持続可能なシステムにするため、産官学でさらに議論を深めたい」と語った。

建設費100億円 市合併後最大

※2022年1月26日あなたの静岡新聞より抜粋

   静岡市が26日までに、新型コロナウイルス禍で凍結した整備計画の再開を決めた「海洋・地球総合ミュージアム(仮称)」。2022年度一般会計当初予算案に盛り込む方針の約170億円の債務負担行為のうち、100億円程度を建物の建設費と想定している。03年の旧静岡市と旧清水市の合併以降に完成した市長部局の大型事業の建設費を単純比較すると、同ミュージアムはJR清水駅東口の清水文化会館マリナートの約76億円を抜き、最高額になる見通しだ。
  市に情報開示請求をして財産台帳に記載された市有施設の価格を調べた。一部は大型設備類の価格を含む上、物価変動もあり、統一基準で比べられない面はあるが、マリナートのほか、静岡科学館る・く・る(約68億円)やJR静岡駅北口地下駐車場「エキパ」(約45億円)が建物の建設費の上位を占める。23年1月の完成を目指して建築中の市歴史博物館は、約46億円を見込む。同ミュージアムには、これらを大きく上回る建設費が投じられることになる。
地域再生大賞