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どうなるリニア 川勝知事、JR東海社長と会談平行線

 リニア中央新幹線工事を巡り、川勝平太静岡県知事と金子慎JR東海社長は13日、静岡県庁で会談を行いました。部分開業や静岡工区の早期着工などについて議論が行われましたが、両者の隔たりは埋まらず、具体的な成果は得られませんでした。会談の詳細をまとめます。
 〈キュレーター:編集局未来戦略チーム 安達美佑〉

「水問題解決が先」川勝知事、早期着工の要請応じず

 リニア中央新幹線工事を巡る川勝平太知事と金子慎JR東海社長の会談が13日、県庁で行われた。金子社長は静岡工区の工事の遅れにより、2027年の品川―名古屋間だけでなく37年を目指す品川―大阪間の全線開業も「めどが立たない」として静岡工区の早期着工に協力を要請したが、川勝知事は大井川水問題や南アルプスの生態系への影響に関する問題が未解決として応じなかった。

リニア中央新幹線工事について会談に臨む川勝平太知事(左)と金子慎JR東海社長=13日午後、県庁(代表撮影)
リニア中央新幹線工事について会談に臨む川勝平太知事(左)と金子慎JR東海社長=13日午後、県庁(代表撮影)
 一方、川勝知事が主張する相模原―甲府の部分開業や、相模原市の関東車両基地の整備の遅れについて金子社長はいずれも知事の見解を否定し、議論は平行線をたどった。
 2人の会談は静岡工区のヤード工事について意見を交わした20年6月以来2回目。JR側の今月8日の要望を受けて非公開で行われ、終了後に2人が取材に応じた。
 リニア南アルプストンネル工事が県内の水資源や生態系に影響を与える問題については、国土交通省や県の会議で対策を議論している。金子社長は、本県が7月にリニア建設促進を掲げる期成同盟会に加盟したことを指摘した上で「(問題解決に向けて)一生懸命やるので早期着手に理解、協力をお願いしたい」と迫った。川勝知事はこれらの問題が「クリアできていない」と応じず、7月に施行された県盛り土規制条例を受けて、トンネル残土処理計画も新たな対応が求められるとの認識を示した。(政治部・尾原崇也)
 〈2022.9.14 あなたの静岡新聞〉

2年ぶり“電撃訪問” 両者の主張は

 リニア中央新幹線の工事を巡り、13日に県庁で行われた川勝平太知事とJR東海金子慎社長の2度目のトップ会談。金子社長による約2年ぶりの“電撃訪問”は、初回と異なる非公開で粛々と行われた。終了後に入れ替わりで取材に応じた2人は「直接話ができてよかった」と肯定的な受け止めを示したものの、県内区間の着工に対する両者の隔たりは埋まらず、具体的な成果は得られなかった。

 
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 川勝知事は県内区間の工事について、政府が6月に閣議決定した経済財政運営の指針「骨太方針」と自民党の参院選公約、リニア建設促進期成同盟会の総会決議を挙げ、「大井川の水資源と南アルプスの自然環境を守るという本県の主張が共通認識になった」と強調した。水資源や環境の保全に向け、国の専門家会議や県の有識者会議での議論を重視する姿勢を示した。
 金子社長は、川勝知事が主張した神奈川県駅(仮称、相模原市)―山梨県駅(仮称、甲府市)の部分開業について、「中間駅同士を結んだ部分開業は考えていない」と改めて否定。知事が8月に神奈川県駅の視察で指摘した関東車両基地の整備の遅れも「用地取得は5割ほど済んでおり、実際の工事は短縮できる」と説明し、あくまで静岡工区の着工遅れが開業時期に影響していると説明した。
 川勝知事は、JRがトンネル湧水の県外流出対策として示した東京電力田代ダムの取水抑制案について「水が戻ることを歓迎する」と伝え、大井川流域の首長の要望として静岡市道閑蔵線のトンネル整備も提案した。一方、金子社長は山梨リニア実験線の試乗を提案し、知事もこれを希望したという。
 会談を非公開とした理由について金子社長は「率直なやりとりをするための通常の方法」と説明。「(知事の発言は)私たちの考えとは違うので、直接会って話す意味は大きい」と知事との対話には前向きな姿勢を見せた。(政治部・杉崎素子)
 〈2022.9.14 あなたの静岡新聞〉

南アルプストンネル工事 川勝知事、工区設定の説明求める

 川勝平太知事は13日、リニア中央新幹線南アルプストンネル工事の静岡、山梨両工区の設定過程に「ふに落ちないところがある」として、設定の時期や理由の説明を求める文書を金子慎JR東海社長に渡したと明らかにした。

リニア中央新幹線計画ルートと南アルプストンネル工事の状況
リニア中央新幹線計画ルートと南アルプストンネル工事の状況
 同工事の県内区間10・7キロのうち、静岡工区は8・9キロ。東側の1・1キロは山梨工区、西側の700メートルは長野工区と設定されている。JRは県内の山梨、長野両工区のトンネル湧水は静岡工区のトンネルとつながるまで県外流出するとしている。
 山梨との県境付近には大規模な破砕帯が確認されていて、川勝知事は「静岡の水を全部山梨側に抜くために(工区を)設定したように見える」と指摘。工区の設定過程を通じてJRがいつごろ破砕帯の存在を認識したのかを確認できるとし、大井川水問題の議論を深めるのに必要な資料と強調した。(政治部・尾原崇也)
 〈2022.9.14 あなたの静岡新聞〉
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