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動きだす沼津市中心街 JR高架化に伴う再開発の現状は

 沼津市中心街で、複数の再開発計画が進んでいます。前提工事が始まったJR沼津駅付近鉄道高架事業を見据え、駅前の再開発が加速することが見込まれます。中心市街地はどう変わるのか。高架化と街の再開発の現状をまとめます。
 〈キュレーター:編集局未来戦略チーム 片瀬菜摘〉

アーケード名店街再開発へ 2027年当初の工事完了目指す

 JR沼津駅南口「アーケード名店街」の大規模再開発に向け、地元地権者らでつくる町方町・通横町第一地区市街地再開発組合(水口隆太理事長)は22日、事業の実施設計や建築工事などを担う特定業務代行者の公募を始めた。代行者との基本協定締結を10月下旬に行う予定。計画通りに進めば2027年当初に工事は完了する。

再開発に期待が集まるアーケード名店街=21日、沼津市町方町
再開発に期待が集まるアーケード名店街=21日、沼津市町方町
 沼津市が同日、発表した。関係者によると、再開発後の施設には地下に駐車場、地上1階に店舗や多目的スペース、2階以上の上階に住居部分が入る構想という。代行者が決まり次第、組合などとすり合わせて最終決定する。
 市によると、今月30日を代行者の参加資格登録申請書などの提出期限とし、10月中に選定委員会で絞り込む。事業認可などを経て24~26年度に既存の建物の解体と整地、新施設の建設に着手する予定。

 ■地元組合「やっとこぎ着けられた」
 「アーケード名店街」の再開発事業は地権者らにとって“悲願”だった。特定業務代行者の公募を22日発表した地元の町方町・通横町第一地区市街地再開発組合の水口隆太理事長は「困難に直面してきたが、やっと公募にこぎ着けられた」と強調した。
 アーケード名店街は1954年に整備。日本初のアーケード建築の商店街で、戦災復興の観点から「沼津本通防火建築帯」として誕生した。
 戦後まもなくから毎月1日に「ついたち市」としてイベントを開くなど、商都・沼津をけん引してきた。
 しかし、近年は郊外の大型店に押されるなど「にぎわいが失われて久しい」と水口理事長。2004年ごろから地権者らが復活に向け検討を始めていた。
 市は、名店街を形成する町方と通横の両町をまちづくりの上で重視するエリアと位置付けている。頼重秀一市長は「(この地域は)駅南エリアの拠点になることが求められている」と期待を示した。今回は計画対象の1・8ヘクタールを5エリアに分け、まずは「第一地区」の約0・3ヘクタール部分に着手する。

高架化の現状は? 「仮換地」初指定、区画整理本格化へ

JR東海道線と御殿場線に挟まれた車両基地(右上)周辺の「静岡東部拠点第二地区」。今年秋以降、建物の取り壊しや移転など、本格的な動きが始まる=2021年2月、沼津市(静岡新聞社ヘリ「ジェリコ1号」から)
JR東海道線と御殿場線に挟まれた車両基地(右上)周辺の「静岡東部拠点第二地区」。今年秋以降、建物の取り壊しや移転など、本格的な動きが始まる=2021年2月、沼津市(静岡新聞社ヘリ「ジェリコ1号」から)
 ※2022年6月30日 あなたの静岡新聞から
 沼津市は29日の定例記者会見で、JR沼津駅付近鉄道高架化に関連する「静岡東部拠点第二地区土地区画整理事業」のうち、JR東海道線と御殿場線に挟まれた車両基地周辺12・5ヘクタールで、事業区域内の土地権利者が新たに使用できる土地を指定する「仮換地の指定」を初めて実施したと発表した。今秋以降、移転に向けた建物の取り壊しが始まり、区画整理事業が本格化する。
 2007年に始まった同事業は市が実施主体で、38年3月の完了を目指す。区域内には都市計画道路の他、公園、住居エリア、拠点整備用の大型区画も設けている。
 市によると、5月に区画整理後の各権利者が持つ土地の位置や形状を示す「換地設計」を実施。設計に基づき仮換地の指定を行った。区域内には現在、106軒あり、このうち9割ほどが事業に理解を示しているという。残りの1割は事業に反対、または所有者が不明。平野明文沼津駅周辺整備部長は「理解を得られるよう、1軒1軒丁寧に説明していきたい」と述べた。
 頼重秀一市長は「市民から事業が前に進まないことを心配する声が聞かれる。(今年1月の)新貨物ターミナルの着工に続き、動きを実感してもらえる」と事業の進展に期待感を示した。

市街地の再生、どう進める? 「ヒト中心の公共空間」に

沼津駅南口前広場のイメージ図(2020年4月1日静岡新聞朝刊)
沼津駅南口前広場のイメージ図(2020年4月1日静岡新聞朝刊)
 ※2020年4月1日 静岡新聞朝刊から
 沼津市は、沼津駅周辺総合整備事業の進展と併せて実施するまちづくりのビジョンを示した「中心市街地まちづくり戦略」を策定した。今後20年間程度をかけ、「ヒト中心の公共空間の創出」など四つの戦略に基づいた施策を段階的に展開し、魅力ある中心市街地を再生する。
  ヒト中心の空間をつくるため、沼津駅前を歩行者広場にする。駅舎と駅ビル、南北街区が一体となった空間を形成し、回遊性や利便性を高めていく。そのために、地域の交通体系を再編したり、車道を廃止したりする。
  二つ目の戦略は、拠点機能の立地促進。鉄道高架化によって生じる車両基地跡、貨物駅跡、高架下の土地に、地域の発展に資する施設を整備する。市役所や医療機関、防災公園や商業施設などが候補に上がり、立地特性や市民ニーズを踏まえて検討を進めていく。
  三つ目は、まちなか居住の促進と市街地環境の向上。空き店舗や未利用地の増加で生じた遊休地に、集合住宅を立地誘導してスポンジ化の解消を図る。リノベーションまちづくりや駐車場の配置適正化なども進め、住宅地として暮らしやすい環境を整える。四つ目は、地域資源との連携。中心市街地と観光地、周辺住宅地をつなぐ交通ネットワークを充実させ、相互のにぎわいと魅力向上につなげていく。

駅南に新ビルも 富士急が建設、年明け開業へ

新ビルを建設する旧富士急百貨店沼津店ビル跡地(赤線で囲った部分)=6月、沼津市(静岡新聞社ヘリ「ジェリコ1号」から)
新ビルを建設する旧富士急百貨店沼津店ビル跡地(赤線で囲った部分)=6月、沼津市(静岡新聞社ヘリ「ジェリコ1号」から)
 ※2022年8月6日 あなたの静岡新聞から
 富士急行がJR沼津駅南口(沼津市大手町)の旧富士急百貨店沼津店ビル跡地に、店舗と事務所が入居する2階建て複合ビルを3棟建てることが5日までに分かった。来年1月の開業を目指す。同駅周辺の鉄道高架事業の進展を見据え、再開発を加速させる。
 現在、跡地で稼働している有料駐車場(31台分)は残す。新複合ビルはいずれも鉄骨造りで1階に飲食などの店舗、2階に企業の事務所が入る方向で調整している。延べ床面積は3棟合わせて540平方メートル。12月末までに工事を終える計画だ。
 旧富士急百貨店沼津店(地下1階~地上6階)の開業は1965年。建物の老朽化などで2020年4月に解体に着手した。解体後は跡地の半分を有料駐車場として活用。同店ビルを所有する富士急行は再開発に向け構想を練ってきた。
 現場は同駅南口からすぐの所に位置し、周辺にはビルや商店街が並ぶ商業エリア。周辺では複数の再開発計画が進んでいる。
地域再生大賞