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頂-ITADAKI- 3年ぶり復活、見どころは?

 吉田町の県営吉田公園で開かれる野外音楽フェスティバル「頂」が6月、コロナ禍を経て3年ぶりに開催されます。全国に広がる「ローカルフェス」のお手本とされる頂。ことしの見どころやフェスを支える裏方の制作者の思いをご紹介します。
 〈静岡新聞社編集局未来戦略チーム・吉田直人〉

6月4、5日の2日間 常連、大物、新進…総勢18組♪

 6月4、5日に吉田町の県営吉田公園で開かれる野外音楽フェスティバル「頂-ITADAKI-2022」(BOOM BOOM-BASH主催、静岡新聞社・静岡放送など共催)の出演者が出そろった。2020、21年は新型コロナウイルス感染拡大を受けて開催を見送った同フェスに、常連組、初出場の大物、新進バンドなど18組が集う。

THA BLUE HERB
THA BLUE HERB
 夕暮れ時にろうそくの明かりがステージを彩る「キャンドルタイム」には同フェス初登場の奥田民生、PUSHIMが出演。EGO-WRAPPIN’、GOMA&The Jungle Rhythm Section、渋さ知らズオーケストラといった、08年初開催の「頂」の歴史を紡いだアーティストも集結する。
 ヒップホップ界からは13、17年に感動的なステージを見せたTHA BLUE HERBが参加。心地よいグルーブと柔らかな歌声が溶け合うNulbarich、温かみを感じるギターサウンドの男女混成4人組Homecomingsなども出演する。
〈2022.04.10 あなたの静岡新聞〉

「頂」の歴史紡いだアーティストも出演

奥田民生
奥田民生
 ■タイムテーブル
 ◇4日(午前9時半開場)
 10:45 CHILLDSPOT
 12:15 Homecomings
 13:45 never young beach
 15:20 BAGDAD CAFE THE trench town
       (meets PAPA U-Gee/CHEHON)
 16:50 SOIL&“PIMP” SESSIONS(guest Rei)
 18:20 EGO-WRAPPIN’
 19:40 PUSHIM
 20:50 UA
 22:10 Rickie-G & 児玉奈央
       (SLOW DANCE SESSION)
 23:15 orbe×Meadow
       (田辺玄+haruka nakamura)

 ◇5日(午前9時開場)
 09:20 cro-magnon feat.元晴
 11:25 yonawo
 12:55 Friday Night Plans
 14:30 GOMA&The Jungle Rhythm Section
 15:55 THA BLUE HERB
 17:30 Nulbarich
 19:00 奥田民生
 20:05 渋さ知らズオーケストラ feat.PJ/keyco

裏方の思い キャンドルステージ制作の伊藤さん、「魔法の光」でムード演出

 静岡県内で2008年から続く野外音楽フェスティバル「頂-ITADAKI-」(BOOM BOOM-BASH主催、静岡新聞社・静岡放送など共催)が6月、吉田町で3年ぶりに開催される。新型コロナウイルス禍を乗り越えて復活する同フェスは、主催者や制作に関わる人の多くが県民で、全国に広がる「ローカルフェス」のお手本とされる。裏方を担う関係者に、それぞれの役割や開催に向けた思いを聞いた。

「コロナ禍を経た今、新しい『頂』を作っていかなくては」と話す伊藤正裕さん=静岡市葵区
「コロナ禍を経た今、新しい『頂』を作っていかなくては」と話す伊藤正裕さん=静岡市葵区

 静岡市葵区のデザイン会社「サーモンデザイン」のアートディレクター。夕暮れ時の特別ステージ「キャンドルステージ」の制作に2016年から携わる。
     ◇
 舞台のデザインを、出演者に合わせて毎年変えています。この時間は会場の電気を全て切っていて、ステージの明かりは約500本のろうそくだけ。客席と演奏者の間に独特の一体感が生まれます。
 ろうそくの光は弱いし、会場の風が強い時もある。ステージの雰囲気に陶酔できる距離、“魔法がかかる”距離は明かりの強さに比例すると思っているので少しでもその領域を広げようと考えています。シャンデリアをつるしたり、舞台背後にあんどんをいくつも並べた“壁”を作ったり。毎年、工夫を凝らしています。
 2017年に高木正勝さんが出演した時は、はだしでピアノを演奏するだろう彼の心地よさを考えて、ステージ上に芝を張り、アロマキャンドルを置きました。ご本人の住まい周辺をイメージした「里山」がテーマ。お客さんだけでなく、音楽家にもこの時間を気持ち良く過ごしてもらいたいんです。
 18歳からいろいろな野外フェスに参加していますが、「頂」の雰囲気は特別。首都圏から来る友達も「他とは違う」と言ってくれます。手作り感があってリラックスできるから、誰もが「(地元に)帰ってきた」と感じるようです。お客さんだけでなく、もてなす側も心から場を楽しんでいるからでしょうね。
〈2022.05.18 あなたの静岡新聞 「フェスを支える 3年ぶり「頂」①」〉

「ローカルフェス」のお手本 2008年初開催、初期は静岡・日本平で

 今年で2回目となる「頂 日本平大音楽祭」(BOOMBOOM―BASH GROOVE PORTER主催、静岡新聞社・静岡放送共催)が6、7日、静岡市清水区の日本平ホテル野外庭園で開催された。青い空と緑輝く芝生というロケーションの中、ジャンルを超えたアーティストが集合し、最高のパフォーマンスを見せた。

「近所迷惑になるから静かにやりましょう」と言いながら、いつも以上に熱いパフォーマンスを見せた渋さ知らズオーケストラ
「近所迷惑になるから静かにやりましょう」と言いながら、いつも以上に熱いパフォーマンスを見せた渋さ知らズオーケストラ

 小雨がぱらつく中での開演。トップバッターはB:RIDGE style。 Saigenjiが続いた。
 雨がやみ、空が明るくなる。Rickie-Gが「No Peace No Life」など、野外フェスに合う曲を演奏した。
 スカバンドCOOL WISE MENは、PAPA U-Geeと共演。三宅洋平とKeycoを迎えたCRO-MAGNION、PJは実力を見せつけた。
 「静岡に来たかった」というCurly Giraffeが、優しくも頼もしい声で魅了。「気持ちいい」と何度も口にした。「もっと気持ちよくなる?」の声でスペシャルゲストChara登場。全身をシェイクさせ「Junior Sweet」や「やさしい気持ち」などを熱唱した。CDで聞くCharaとは違う、力強い声が印象的。「静岡、大好きです。なんで来なかったんでしょ」と話すと、観客も拍手と歓声で歓迎の気持ちを表現した。
 太陽光発電で稼働する特設ステージで奄美大島の民謡を朝崎郁恵が朗々と歌う。GOCOO+GoRoはキャンドルに火がともされた幻想的な会場で演奏した。
 自らを「デス・ジャズ(DEATH JAZZ)」と呼ぶSOIL&“PIMP”SESSIONSは、「月に届け」と観客をあおった。最後はLITTLE TEMPO。夜を包み込む心地よさを残した。

 2日目は快晴。Pすけ、Keisonに続き、曽我部恵一BANDが疾走感たっぷりのメロディーで心をつかんだ。
 サイケデリックなDachambo、都会的でスパイシーなJazztronic、ヒーリング効果抜群の千尋が、熱いステージを見せた。熱烈なファンを中心に、確立された“世界”を披露したTOKYONO.1 SOUL SET。カルカヤマコトはレゲエの本場ジャマイカの空気を送り込んだ。
 木管楽器ディジュリドゥの可能性を求め続けるGOMA。 JUNGLE RHYTHMSECTIONとともに、圧倒的なカリスマ力を誇示した。
 バルナギータとEARTH BEAT GATHERINGが大地に近い音で会場を満たすと、大トリを務めた渋さ知らズオーケストラのステージが静かに幕を開けた。
 全身を白く塗った男女4人が観客を引き込む。メンバーは何の脈絡もなく登場し、演奏を始めたように見える。ただ、目を離せない。クレーン車からつるされた巨大ミラーボールが妖[あや]しさを増長させた。

 さまざまなステージで頂ならではのセッションが見られ、出演者も頂を楽しんでいる様子が伝わってきた。
 何組かのアーティストが歌った「Everything’s gonna be alright」。すべて、うまくいく―。曲のように明るい気持ちを抱かせてくれるイベントだった。
〈2009.06.15 静岡新聞夕刊〉
地域再生大賞