社説(10月16日)衆院選公約 政策実現性の見極めを

 衆院解散で与野党ともに事実上の選挙戦に入った。政権選択となる衆院選へ、有権者は出そろった各党公約を吟味して政党や候補者を選ぶ手がかりとしたい。
 最優先課題となるのが新型コロナウイルス感染症対策だ。そしてコロナ禍で困窮する人たちへの生活支援と傷ついた経済の再生が求められている。発足間もない岸田文雄政権の信任を問うことにもなる。
 各党が訴える公約の方向性は妥当といえるのか、実現性はあるのか、有権者はしっかりと見極める必要がある。政策実現の裏付けとして、財源をどこに求めるかも重要だ。より具体的であればあるほど説得力も増す。
 岸田首相が経済政策として「新しい資本主義」を唱え、分配による「分厚い中間層の再構築」をうたったことから、与野党ともに中間層などを視野に「分配」政策を競う形になった。野党第1党の立憲民主党も「分配なくして成長なし」を説いて「『1億総中流社会』の復活」を訴える。
 自民党の公約には、非正規労働者や子育て世帯、学生などコロナで困った人たちへの経済的支援、賃上げに積極的な企業への税制支援などが盛り込まれた。立民は、年収1千万円程度まで所得税の一時的な実質免除や消費税5%へ時限的な減税などを訴える。
 他党も、10万~20万円給付、高校3年までの全ての子どもに10万円給付などを挙げる。困窮世帯への現金給付に異論はないはずだ。しかし、対象を絞らず一律とするには疑問が残る。それでは「ばらまき」と批判されないか。
 首相は代表質問の答弁などで、財源に成長の果実を充てるとしたが、成長の道筋は明確ではない。立民は企業や富裕層へ課税強化を説くが十分か。結局は借金頼みとなる懸念がある。
 また、総裁選で首相が掲げていた金融所得課税は自民公約から消えた。総裁選当時と比べ、全体的に「岸田カラー」が薄まった印象は否めない。
 一方、選択的夫婦別姓制度や原発の利用、安全保障などは、与野党の違いが明らかになっている。夫婦別姓に自民は慎重姿勢を示し、立民は「早期に実現」を目指す。ただし、与党でも公明党は導入推進を訴える。また、自民は原発依存度の低減をうたいながらも「安全が確認された原発」の再稼働や「小型モジュール炉」推進を図るとして、「依存しない社会を一日も早く実現」の立民とは立場を違える。
 解散から投開票まで17日という短期決戦だ。有権者が判断できるように各党は、政策について丁寧で分かりやすい説明を尽くしてもらいたい。

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