盛り土造成会社元幹部を追加告訴へ 殺人容疑、熱海土石流遺族ら

 熱海市伊豆山の大規模土石流の遺族らでつくる「熱海市盛り土流出事故被害者の会」は28日、遺族と行方不明者の親族計11人が10月中に、崩落の起点となった盛り土を造成した神奈川県小田原市の不動産管理会社(清算)の元幹部を殺人容疑で熱海署に告訴する方針を明らかにした。

盛り土部分の土地の現旧所有者を追加で刑事告訴する方針を明らかにする遺族ら=28日正午ごろ、熱海市伊豆山
盛り土部分の土地の現旧所有者を追加で刑事告訴する方針を明らかにする遺族ら=28日正午ごろ、熱海市伊豆山

 この元幹部と現所有者の2人を既に刑事告訴している同会会長の瀬下雄史さん(53)=千葉県=に続く告訴になる。現所有者の男性は重過失致死容疑での告訴になる見通し。
 被災現場付近で記者会見した弁護団共同代表の加藤博太郎弁護士は「極めて違法性の強い“殺人盛り土”を造成し、対策を取らず放置した結果、多くの人命が奪われた。未必の故意があったとして一丸で責任を追及していく」と理由を説明。一方で「殺人罪はハードルが高いと認識している」と述べ、業務上過失致死容疑での受理も想定しているとした。
 母親(77)を亡くした瀬下さんは「怒りを原動力に、全国にある違法な盛り土を無くすとの使命感も持つようになった」と現在の心境を説明。同じく母親(82)を亡くし、家も失った鈴木仁史さん(56)は「見舞いの言葉さえない」と現旧土地所有者側のこれまでの対応姿勢に憤った。
 同会に参加する70人はこの日、現旧所有者をはじめ、現所有者の男性が設立した会社、造成に関わった事業者らを相手取り、約32億6800万円の損害賠償を求め、静岡地裁沼津支部に提訴した。
 弁護団によると、裁判の迅速化を踏まえ、追加の提訴は考えていないという。県や熱海市を相手取った提訴について、加藤弁護士は「検討は続けるが、被害の救済と原因究明をしっかりしてくれれば協力関係にある」とし、瀬下さんは「誠意ある対応なしに何か隠すなどすれば当然(提訴は)考える」と話した。
 現土地所有者の代理人は取材に対し、「公明正大に対応する。土地は個人所有で、会社も訴えられたことは誠に遺憾だ」と述べた。旧所有者側は取材に応じなかった。

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