伊東市、飲食店向け商品券計画 消費喚起と業者支援両立を【湧水】

 新型コロナウイルスの「第5波」の影響を受ける飲食店の支援策として、伊東市が30%プレミアム付き商品券の発行を計画している。事業費5千万円で1億5千万円規模の経済効果を見込む。ただ、市内業者の7~8割が観光業に関連し、緊急事態宣言の影響は幅広い業種に及んでいる。事業継続と雇用維持のため、当面の運転資金を補助できるような施策を両立できないだろうか。
 8月19日までのまん延防止等重点措置期間、その後の宣言期間とも、時短営業や休業の要請に応じた飲食店には売り上げに応じて1日当たり最大10万円が支払われる。また、県は業種を問わず売り上げが減少した事業者に応援金を給付する。ただ、申請数や時期によって支給まで時間を要する可能性がある上、緊急事態宣言も今月末まで延長された。
 市内には食材の卸販売など、飲食店と同様の影響を受けながらも支援が十分に行き届かない事業者が少なくない。今回の商品券事業はこれらの業種への波及効果を見据えたものだが、実施は12月~来年2月。感染状況が一定程度に抑えられていることも前提になる。この間をしのぐために、支援が行き届かない事業者を独自に救済する道を探ってほしい。
 事業者への直接支援は国や県の枠組みに任せ、市の限られた財源は消費喚起に回す事業自体には、観光地の自治体の決意を感じる。緊急事態宣言下で「自粛」が求められるさなかに、行政が忘年会や新年会シーズンの飲食店利用を促すことには賛否が分かれるかもしれないが、どこかで誘客や消費拡大に踏み出さなければ地域経済が立ちゆかないのも事実だ。
 市内のワクチン接種は20日時点で高齢者88・2%(2万6104人)が完了した。12歳以上の対象者6万3499人の75%超は、少なくとも1回の接種を終えた。10月末には希望者の接種が完了し、重症化リスクは一定程度軽減される見通しだ。国はワクチン接種などを条件にした行動制限緩和の検討に入った。コロナ禍も1年半にわたり、業界関係者の多くが今秋から年末を「正念場」ととらえている。「観光のまち・伊東」の決断を見守りたい。
 (山本一真)

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