道路寸断想定 大半「訓練せず」 震災時、広域避難路開けるか 浜岡原発停止13年

 静岡新聞社が浜岡原発について実施した11市町の首長アンケートで、道路寸断を想定した訓練を実施しているかを聞いたところ、大半の市町が「実施したことはない」と回答した。建物倒壊や津波が発生し、要救助者がいる状況で広域避難は可能なのか―。北陸電力志賀原発が立地する石川県志賀町の担当者は、発災後の混乱期の代替ルート選定や周知の難しさを挙げ、ルートの多重化や訓練の重要性を強調する。専門家は、南海トラフ地震で発生しうる被害を現実的に考えた対策を求める。

Q道路寸断を想定した訓練を実施したことがあるか
Q道路寸断を想定した訓練を実施したことがあるか

 「実施したことがある」としたのは焼津と掛川の2市のみ。焼津市は「県原子力防災訓練の図上訓練で実施した」と説明する。県と11市町が毎年実施している図上訓練では、高速道路や国道など緊急輸送路が寸断した想定のみで、各市町道路の訓練は行っていない。掛川市は「総合防災訓練で道路啓開訓練を建設業者などと連携して行っている」と回答した。「実施したことはない」と答えたのは御前崎、牧之原、島田など9市町だった。
 能登半島地震で震度7を観測した志賀町では、一般道の損傷も多くあった。同町環境安全課の担当者は「主要道の状況はすぐに把握できたが、町内道路の被害全貌が分かったのは1日たってから。(もし原発事故が起きて)複合災害になっていたら、スムーズに情報を集約して避難ルートを導き出し、周知できたかは分からない」と振り返る。町内では建物倒壊や人的被害も発生した。人命救助が最優先という観点からも、「代替ルートは複数パターン考えておくべき」と強調する。
 一方で「被災状況によっては用意していた迂回路すら使えないこともある」として、主要道にたどり着くまでの間も含めて迅速に経路を選択する訓練や誘導体制の構築を課題に挙げた。
 静岡大防災総合センターの岩田孝仁特任教授は、「南海トラフ地震では橋梁の段差や液状化などが一部にとどまらず、面的に発生する可能性がある」と指摘する。災害時の道路啓開は地元の建設業者と連携して行うが、「通常の災害とは違い、放射線防護を講じた上で調査や復旧作業をする必要がある」と安全面の課題にも言及する。「詰めていかなければならない問題は多い。解決できていない点も含めて住民に情報提供しながら計画の具体化を図ってほしい」と話した。
 (社会部・中川琳)

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