牧之原・園児置き去り事件検証委が報告書「安全管理意識が欠落」 バス運転の前園長ら批判 

 2022年9月、牧之原市の認定こども園「川崎幼稚園」で園児が送迎バスに置き去りにされて亡くなった事件の検証委員会は29日、再発防止策などをまとめた検証報告書を市に提出した。報告書は事件当日にバスを運転し園児を車内に取り残した前園長(74)を「安全管理意識が欠落」、所在確認をしなかった元クラス担任(48)らを「園児の安全や成長に向き合う者としての責務を怠った」と批判。提言で、バスの運行に限らず、日常の教育、保育の取り組みから安全の質を高めていく必要性を訴えた。市は今後、報告書をホームページで公開する。 ⇒【検証委報告書・7項目の提言】

呉竹杉本基久雄市長(左)に報告書を提出する検証委員会の永倉みゆき委員長=29日午後、牧之原市役所
呉竹杉本基久雄市長(左)に報告書を提出する検証委員会の永倉みゆき委員長=29日午後、牧之原市役所
呉竹杉本基久雄市長(左)に報告書を提出する検証委員会の永倉みゆき委員長=29日午後、牧之原市役所

 報告書は「事件の概要」「問題点」「再発防止のための提言」の章立て。同園では実務的な運営者が副園長(事件当時)で、業務の見直しなどに対する前園長の意識は薄かった―と指摘した。21年7月に福岡県中間市で起きた同様の置き去り死を受けた国の事務連絡が園内で十分に周知されなかったのは、「前園長が連絡の重要性や緊急性を認識していなかったことが考えられる」とした。本来は園児の出欠確認に使う登園管理システムが、実際は給食数の見込みを把握する目的で運用され、職員が適切なタイミングで入力状況を見ていなかったことなど、安全管理上の問題も明らかにした。事件後の遺族への対応も「誠実とはいえない」と指摘した。
 その上で提言として「マニュアルの作成と実施に基づく安全管理体制の構築」「指導監査の強化」など7項目を挙げた。同園の運営や存続の是非に関する内容は盛り込まなかった。
 委員長の永倉みゆき県立大短期大学部教授から報告書を受け取った杉本基久雄市長は「再発防止策を講じる上で貴重な資産」と謝意を示した。永倉委員長は提出後の会見で「保育者が命を育てるということを真摯(しんし)に受け止めて保育に当たっていれば、命が失われることはなかった」と語った。
 検証委は教育、保育関係者や弁護士、医師ら5人で構成する。23年2月から計6回の会議を行った。県と市が事件後に実施した特別監査の聴取内容などを基に協議し、2回の現地調査、前園長や職員ら延べ12人に聞き取りも行った。

 <メモ>2022年9月5日、牧之原市静波の認定こども園「川崎幼稚園」で園児の河本千奈ちゃん=当時(3)=が送迎バスに約5時間置き去りにされ、重度の熱中症(熱射病)で亡くなった。県警は22年12月、園関係者4人を業務上過失致死容疑で書類送検し、うち当日バスを運転していた前園長(74)と千奈ちゃんの当時のクラス担任(48)が23年11月、同罪で在宅起訴された。静岡地裁での初公判が4月23日に予定されている。

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